探し人発見?
「もういいか? 日本人の女子は人を呼び止めておいて、理由すら言わないのか。恥知らずな女子だな。下品で恥知らず……身の程をわきまえろ」
「……? え? ん? なんて?」
「なんかよくわからないんだけどぉ、バカにはされてんじゃねぇ?」
「凄く怒ってる。お兄さん、ちょっと怖いです」
三者三様に反応を示す女性たち。電蔵はすぅと息を吸い込んで、英語で怒鳴った。
人差し指を突き出して、バッと素早く横に振った。『あっちへ行け!』と言っている。
「やばっ。怒ったぁ!」
「こっわ。やっぱ外人はやめにしよ」
「わわっ。ごめんなさい!」
三人の女性たちは逃げるようにして走り去った。それを見送った後、電蔵は息をつく。
「……まずは日本語を覚えないと、どうにもならんな」
日本人が英語を喋れないのがよくわかったので、日本語を頑張って覚えることにしたのだ。日本語はかなり難易度の高い言語だ。一朝一夕で身に付くわけがないのだが、そのことに気づくのは後になってからだ。
人通りが減って、電蔵は建物から離れた。行く宛もなく、途方に暮れつつ歩く。横断歩道を渡り、人とぶつからないように避けた。
「……どこにいるんだ……日本の幼い男子は……」
軍服のような赤黒い服をなびかせ、電蔵はぶつぶつと呟き、苛立ちを募らせる。周りを見渡しても幼い感じのする日本人はいなかった。小型の携帯電話を歩きながら触っている者はいた。人にぶつかったりして、危ない。
電蔵はそんなものを操作していないのに、何者かにぶつかった。余所見をしていたのではなく、電蔵の背が高すぎて、見えなかったのだ。電蔵が見下ろすと、鼻をさすっている小さな男子がいた。
髪は乱れていて、英語で『負け犬』と書かれたTシャツを着ていた。自虐的で可愛げがない。しかも無愛想な顔つきだ。王様が気に入るとは思えないが、幼い男子に違いない。
「……いってーな」
「……お前さん。まさか」
その時電蔵に電気が走った。物理的に電気が走ってしまった。ブラックスフィア外では大きな力は使えないと王様に言われていたが、微弱な電気くらいなら発せるらしい。
「……変な顔だな、オマエ」
「……何を言っているのか、わからん。どうするオレ」
「日本語通じねえの? つまんねえ」
「お前さんのような愛想のない男子を連れて帰っても……王様はきっと喜ばんだろうな。すまんが、お前さんは却下だ」




