庄時の力
「なんだよ。同情するのか?」
「いや……同情はしない。しないが……オレはもっと、王様に感謝すべきだったのかもしれん……と思ってな。らしくもなく、ちょっとばかり、後悔している」
「なんだ、そんなことか」
「ああ。そんなことだ」
電蔵は快活そうに笑い飛ばした。
庄時は長々と口上を言って、電蔵をワープさせるように力を行使した。
「俺の名は黒い時を司る黒金庄時。王様、ムューユ・パルヒャネラの名の下に、力を行使することを誓う。これはニューゲーム。新戦争とする。俺は王様の許可を得て、この力を行使する。王様の許可なくこれを使用することは禁じられている。よって、俺は許可を得た者である。これより、紫水電蔵を日本にワープさせる。これは絶対の安全を保障し、紫水電蔵が時に呑まれないよう、十分に保護するものとする。俺の力は王様のためにあり、紫水電蔵のためにある。では、カウントを開始する」
庄時の口上が終了すると、電蔵を光が包み込んでいく。
「カウント、1、2、3……」
「……庄時、ありがとう」
「4……5……6……」
カウントダウンを続けつつ、庄時は頷いた。
電蔵を包み込む光の度合いが強くなっていく。
電蔵は目を閉じて流れに身を任せることにした。この世界に思いを馳せつつ。
「7……8……9……」
「王様を頼む」
「10」
庄時のカウントダウンが終了した。電蔵は光に包まれ、消え入っていく。電蔵が完全に消える前に、庄時が笑顔で胸を叩いて言った。
「任せろ、電蔵。行ってこい!」
頼りになる一言だった。電蔵は自身の思いを声に出さず、口だけ動かして消えた。
庄時は目を丸くして、下を向いた。床に染みができる。
「……ははっ……お前らしいな、電蔵……」
庄時の声は弱弱しく、誰かの支えがないと生きていけないように震えていた。




