さよならは言わない
悲しい一言で王様は少し傷ついた顔をした。
「ゲームオーバーだ、王様。お前さんの勝ちだ」
「いや……わしをここまで惚れさせたんだ。お主の勝ちじゃ、電蔵」
足をトンと軽く鳴らして、術を発動させた。電蔵は王様を見つめたまま動かない。
王様は溢れてきた涙を引っ込めて、笑顔で電蔵を抱きしめた。
「大好き!!」
電蔵は泣きそうな顔で笑っていた。死ぬというのに、泣きもせず、ただ笑っていた。
王様の手から泡のようになって、電蔵が消え失せた。
電蔵が消えても、暫く王様は空気を抱いていた。
それをじっと見つめている友青。何も言わず、ずっと見つめるだけ。
王様はとぼとぼと歩いていって、友青に話しかけた。
「……お主、名は何と言う?」
「春川友青」
「ユウセイ、か……」
「なんだよ……」
「ユウセイ、電蔵はどうじゃった?」
「どうって……べつに何も」
「一緒にいて、楽しくなかったか?」
「まあ楽しかった……けどな」
「それはよかった……あやつは、他の者と関わるのが苦手でな、心配しておったんじゃ。でもよかった。人間とは仲良くなれたんだな……わしも、もう心配する必要はなくなった」
力なく笑う王様に、危機感を覚えた。
「おい、待てよ。オマエまさか……」
「ああ……。庄時を連れ戻した後、わしも死のうと思う」
「それじゃ他のやつらは……」
「大丈夫じゃ。わしの代わりは別にいる」
「俺とか言わないよな」
「電蔵の残していったメスじゃよ。電神」
「……そうかよ」
「やけに心配するな」
「関わった以上は考えてやらなきゃいけないんだろ。めんどくさいけど」
「うむ。よい心がけじゃ」
王様は友青の背中をポンと叩いた。
本当の家族にするように、優しく。




