口汚く罵ることもある
電蔵も目を逸らして、頭を押さえる。泣き顔を見ないようにしているのだ。
「このわしを馬鹿にするとは……なんという仕打ちじゃ! 酷い、酷いぞ、電蔵……。わしはもうショタしか信じられん……電蔵なんかショタになれ! ショタにならんと許さん」
泣きながら幼い男子への愛をぶちまけた。王様の我儘には付き合いきれんと電蔵が呟く。
「オレはお前さんの鏡だろ? オレを否定しちゃいけないな」
「お主もわしを否定するな」
「否定はしてない。オレを酷使しすぎだと言っているだけだ。他の息子にも酷使と言う名の愛情を注いでやれ。使ってもらいたがっている者はたくさんいるんだ。オレを使うより楽しめるぞ?」
「わしのような母が不満か?」
「おうとも。お前さんはもっとオレを尊重すべきだ」
電蔵は自身を指して、王様に苦言を呈する。王様はちょっとばかり考えたふりをする。
「やだな! お主はわしのものじゃ!」
「クソが……!」
額に青筋を走らせて、電蔵は汚い言葉を吐く。電蔵の口汚さに、王様は恐怖していた。
「で、電蔵……お主、怖いぞ」
「王様の所為だな」
電蔵は爽やかな笑みを浮かべた。汚い言葉を吐いて、すっきりしている。
電蔵が文句を言おうと、王様は変わらない。我儘でこどもっぽい性格を変えない。
「でもオレは……お前さんの息子なんだな」
電蔵は悟ったような顔をして、王様を見据えた。
「……そうじゃが?」
王様は首を傾げている。電蔵の突然の一言が意味不明だと言いたげだ。
電蔵は理由を話さなかった。王様に話せば調子に乗ると思ってのことだろう。
目を伏せて、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。
「……ま。お前さんにはわからんだろうが」
格好をつけて、電蔵は王室を出ていこうとした。が、王様に呼び止められる。
「何出ていこうとしとるんじゃ。話はまだ終わっとらん」
「あっ」
電蔵はハッと我に返った。電蔵を見て、王様がニヤリと嘲笑う。
「……むむ? まさかお主……格好良く立ち去ろうとしておったな?」
「ばれたか……」
電蔵は視線を斜め下にやった。恥ずかしさのあまり、視線を合わせられないのだ。
「お主のことは他の息子たちには言わないでおいてやろう」




