プロローグ 幼き日の追憶
他者からのアドバイスを基に、話を追加してみました。
本章の舞台は、パラレルワールドの地球です。
ここは日本。穴場の釣り堀。小さな男の子と老爺の二人きり。二人は横並びで釣りを楽しんでいた。ボーッと空を眺めつつ、釣り堀の魚が釣り竿にかかるのを待ち構えていた。
「じいちゃん、ボク、じいちゃんみたいな人になりたい! 毎日楽しそうで、見ていてあきないんだ。ボクは遠い世界から来たけど、この世界もボクにとっては、ふるさとみたいなものだよ! じいちゃんも、ボクにとっては、本物のじいちゃんみたいだ!」
「そうか。それは良かったなァ。オレも嬉しい」
老爺は隣で釣りをする小さな男の子の頭を撫でた。気持ち良さそうに、目を細める男の子。
「お前さんは良い子だ。きっと楽しくて明るい未来が待っているはずだ」
「そうかなあ。ボクもじいちゃんみたいに、楽しめる明るい未来があるかなあ」
不安そうな顔で、男の子は口をすぼめる。
「電蔵、お前さんは自分の人生を生きな」
「自分の……人生……?」
「ああ、そうだ。他の誰でもない、お前さんだけの人生だ」
「うん。じいちゃんが言うなら、そうするよ」
何度か日本へ行った。
だが、あの爺さんは、電蔵が二十歳を過ぎる前、とっくの昔に亡くなっていた。
もっと話したいことがあったのに、と電蔵は別れを惜しんだ。
代わりに、電蔵は彼の喋り方を真似た。
彼が生きていた証だ。
自分の人生と彼の人生、両方を生きるように。
忘れないように、胸に刻みつけた。