尾行
久しぶりの投稿となってしまいました。申し訳ありません。言い訳をしますと、年末に体調を崩して、2日程で全快し、正月休みを謳歌していました。怠惰に怠惰を重ね、惰眠を貪っていました。続きを楽しみにしてくださっている数少ない読者の皆様、ご容赦ください。
ピピピピピピ
スマートフォンのアラームが鳴る。昨晩の裏アリーナでの戦いから明けて朝6時。俺はのそのそと布団を這い出て、登校の準備を始めた。
「あー、まだ眠い。牧のせいだ」
実は、荊との戦いが終わった後、帰宅するのに手こずった。DJ牧が勝利祝いをしようと誘ってきたのだ。DJ牧はぽっちゃりした見た目で所謂オタクのような外見だが、トークが非常に上手く気配りもできる人間だ。そのせいか女性人気もある。DJ牧を楽しみに裏アリーナ観戦に来る人間がいるほどだ。そして、牧が言うには裏アリーナでヒールを担う般若にも徐々にファンができているらしい。そんな般若のファンを引き連れて勝利祝いをしたいとのことだった。しかしながら、俺としては正体を明かすわけにもいかず、かと言って般若面を付けたままお祝いの場に出るわけにもいかない。1時間ほどの牧の粘着勧誘をそれはそれは丁重にお断りしてなんとか帰路についた。家に着いたのは24時過ぎになったのであった。
眠い目を擦りながら歩く。すると、聞き慣れた声がした。
「おーい、零〜。ちょっと待ってよ〜」
呼び止めるように小走りで来たのは司だった。
「なんだ。司か」
「なんだって何さ!僕は零が来るのを待ってたんだよ?!」
「悪い、悪い。昨日は帰りが遅かったんだ。ぼーっとしてた」
「また裏アリーナ?ほどほどにしておかないといつか逮捕されちゃうぞ」
「そこらへんは抜かりない」
裏アリーナは違法な賭博場だ。警察に見つかれば関係者は全員逮捕案件だろう。とは言え、俺は単に選手として出場していただけだからそこまでのお咎めはないだろつし、何より般若の正体を知っている関係者は牧だけだ。いくら警察が優秀であってもそもそも俺にたどり着くことが難しいだろう。
「ふーん。まぁ零がそう言うならいいんだけどさ。それにしても…零、気付いてる?」
「あぁ」
誰かに尾行、いや、ここは通学路だから正しくは監視されている、か。登校中の生徒がちらほらいる中、明らかにこちらをジッと見ている気配がする。
「どうする?」
「正体は確かめておきたいよな」
「そうだね。それじゃ、アレでいこう」
「了解だ」
目の前の曲がり角を左に曲がり、直線上に俺たちの高校の校門が見える。そして、校門を抜けると俺と司は左右に分かれた。
監視の目は俺を追い続けている。どうやらターゲットは俺のようだ。すると、スマートフォンの通知が鳴る。送り主は司だ。
『零のほうに行ったよ。僕は先に教室に行ってるね」
『おけ』
司に簡単な返信をして、監視者の正体を暴くべく、一計を案じる。
「久々にやってみるか。魔道-暗歩-」
魔道-暗歩-は王真家に伝わる武闘術の一種だ。特殊な足運びと重心移動を駆使することで一般的な走法よりも遥かに速く、かつ、対象者の視線から逃れることができる。魔道は諜報活動や暗殺に関する技術が集約された武闘術。誰かに尾けられている時にはもってこいの技というわけだ。
俺は暗歩で監視者との距離を離し、視線が途切れた瞬間、空き教室に飛び込んだ。すると、俺を追いかけるように誰かが走る音が聞こえてきた。
「くっ、見失ったでござる」
監視者は俺を見失ったらしい。服装からするに、どうやら俺らと同じくこの学校の生徒のようだ。それなら…
「何で俺のことを尾行してるんだ?」
「?!な、なんのことでござるか?!」
監視者は甲高い声で驚く。身長は150センチ程、華奢な体型で、いかにも優男といった顔つきの生徒だった。
「登校中ずっと尾行してたろ?」
と言うより、今時「ござる」って語尾使うやつ本当にいるのかよ。何かのアニメの影響か?
「気付いてたでござるか…。鋭い危機察知能力、華麗な走法、拙者の尾行をまく技術…。この際、仕方ないでござる…」
ん?なんだ?決闘でも申し込まれるのか?
「王真零…。せ、拙者を…」
俺は、監視者の鬼気迫る表情に身構えた。
「拙者を…舎弟にしてください!!」
「…え?」
え?
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