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生徒会長

体育の授業を終え、時は放課後。生徒のほとんどは下校、はたまた部活に向かっていた。



「零?帰らないの?」



 司が下校の準備を終えて、問いかけてくる。普段であれば司と下校するはずだが、今日は生徒会長の呼び出しを喰らっている。



「帰りたいのは山々なんだけどな。実は生徒会長様に呼ばれている。」



 この新東京第一高等学校にも一般の高校と同じく生徒会のシステムが存在する。が、民主的な投票により生徒会メンバーが選抜されるわけではない。第二学年以上の生徒は異能力・知力・体力の3項目によって評価され、学内ランキングという順位付けがなされる。その内の上位10名が生徒会に選抜されるというシステムだ。当然、ランキング1位の生徒が生徒会長に任命される。



「あら、零は本当にお姉さんに好かれてるねぇ。零に彼女でもできた日には大変なことになりそうだ。」


「全くもって同感だ。弟離れができていない姉で困る。」



 そして、その生徒会長には何を隠そう俺の実の姉、王真九都(おうまここのつ)が就任している。俺よりも2歳上で第三学年の生徒だが、その圧倒的な実力のせいか第二学年の時点では既に学内ランキング1位に君臨していた。つまり、今年度の生徒会長は2期目ということになる。位階は9、容姿端麗、運動神経抜群、座学も完璧、生徒会長という肩書きに恥じぬカリスマ性、男女問わず憧れの存在だ。噂だが、九都親衛隊なるファンクラブが存在するらしい。異能力持ちの生徒が集まったファンクラブだ。それは最早、私設の軍隊なのではなかろうか。我が姉ながら恐ろしい。



「ま、それなら仕方ないね。無理に零を引き留める訳にはいかないし、"あの"お姉さんに目を付けられるのはごめんだよ。」


「無理に引き留めてくれてもいいんだぞ。弟離れの良い練習になる。ただ、そうなると…司のための葬儀屋を手配しないとだな。」


「勘弁して、現実味のある冗談は笑えないよ。」



 と、そんな軽口を叩き合っていると、



ピーン ポーン パーン ポーン


「生徒の呼び出しをします。1年A組王真零、王真零。至急、生徒会室に来なさい。5分以内に来なければお前ための葬儀屋を私が手配しておこう。以上だ。」



「…。何で会話が聞こえてんだよ。」


「…相変わらずお姉さんの異能力は常軌を逸してるね。」


「俺が無能力者なのは姉に全部持っていかれたからなんじゃねえかな。」



ピーン ポーン パーン ポーン


「王真零、残り4分だ。ちなみに廊下を走ろうものならチベット行きの貨物船を手配する。以上だ。」



「零、鳥葬の可能性が出てきたね…。」



 俺は無言で教室を出た。時間内にたどり着くことを祈りながら俺は競歩で生徒会室に向かった。



 新東京第一高等学校は国が莫大な予算を注ぎ込み、異能力者の育成を行うために設立した高校だ。敷地や校舎は広く、模擬戦を行うためのアリーナ、トレーニングルーム等、設備の豪華さには驚くものがある。しかし、今はその豪華さが仇となっている。第一学年の教室棟と生徒会室のある第三学年棟とは第二学年のある棟を挟んで真逆に位置している。



「普通に向かっても5分では間に合わないだろ、これ。」



 思わず愚痴を漏らす。



ピーン ポーン パーン ポーン


「王真零、文句は受け付けてない。ちなみに残り1分だ。」


「だから、何で聞こえてんだって。」



 この際仕方ない。裏道を使うしかない。俺は三階の窓を開けて二階同士を繋ぐ渡り廊下の屋根へと飛び移った。これは廊下ではない。屋根だ。屋根を走るのは禁止されていない。俺は渡り廊下(の屋根)を全力疾走した。

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