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牛と馬







「薙月先輩!」


「零さん、おかえりなさい」



 薙月先輩は先刻と同じ位置で周囲を警戒していた。



「少し相談したいことがあって戻ってきました」


「相談?」


「はい。ここから川を探しに5kmほど進んだんですが、そこに拠点を設けていると思われるチームの待機生徒1名を発見し、制圧しました」


「それはお疲れ様でした」


「ありがとうございます。一応、金貨を所持しているかの確認をしたのですが、どうやら持っていないようで…」


「なるほど。でしたら、偵察に出た生徒が2枚以上持っていますね」


「はい、そう言うことです。ただそうなると…」


「2枚以上を所持している生徒は相当な実力があるはず」


「まさにその通りです。俺も最初は夜が明けるまで様子見をしようかと考えていました。ですが、拠点に戻ってくる偵察組を2人で奇襲できれば早々に金貨を2枚以上獲得できるかもしれません。万が一、敗戦したとしても楓は偵察に出ているから取られる金貨は俺と薙月先輩ので計2枚。試験終了間際に金貨1枚の状態よりも試験開始時点に金貨1枚のほうが挽回できる時間的余裕があります」


「確かにその通りですね…。分かりました、向かいましょう。この場所には私の鬼を置いていきます。そうすれば楓さんが戻ってきたとしても問題ないはずですから」


「そんなこともできるんですか?」


「ふふ、一応私は生徒会役員ですよ?任せてください」



 薙月先輩は悪戯っぽく微笑むと詠唱した。



「異能力-召喚の儀 地獄門-出よ、馬頭!牛頭!」



 薙月先輩の詠唱と共に、影鬼を呼び出した門が出現する。そして、その門が重々しく開かれると、馬の頭をした鬼と牛の頭をした鬼が現れた。馬の頭をした鬼は細身でスーツを着ているスタイリッシュな姿だ。他方、牛の頭をした鬼は筋肉隆々でいかにもパワータイプというような体格をしている。



「呼びましたか?お嬢」


「久しぶりの下界だぜぇ、もっと頻繁に呼び出してくれねぇかい?嬢ちゃん」


「お、お嬢呼びはやめなさいとあれほど!ま、まぁいいです。あなたたちはココで待機していてください。そのうち、影鬼を連れた少年が現れます。私たちが戻るまでその子を保護してあげてください」


「あいよ、嬢ちゃん」


「お嬢の仰せのままに」


「人語を…話せるのか?」



 薙月先輩と出会うまで、動物を召喚する異能力者らと出会ったことはある。しかし、召喚した動物が人語を話すといった現象は見たことがなかった。



「んあ?誰だこのボウズ」


「は、はじめまして?」


「おう、挨拶ができるじゃねぇか、このボウズ。おい、馬頭、こいつは賢いぞ!俺は牛頭って言うんだ。よろしくな」


「王真零です、よろしくお願いします」


「こら、牛頭。口が悪いですよ。お嬢と一緒にいらっしゃるんだ。お嬢のボーイフレンドに決まっておろう。牛頭が失礼いたしました。私は馬頭と申します。以後お見知りおきを。」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


「ボーイフレンド?!ち、違います!!彼はただの生徒会の会長の弟さんで、試験のチームが単に同」


「そんな焦って否定しなくてもいいだろ?『彼』とか言っちゃって。嬢ちゃんもマセたなぁ」


「うるさいですよ!牛頭!」



 薙月先輩が顔を真っ赤にして反論する。普段クールな薙月先輩が必死になっている様子に少し笑ってしまった。



「ちょっと?零さん、何を笑ってるんです?」



 薙月先輩は拗ねたように言う。



「いや、薙月先輩のそんな焦ってる姿珍しくって、つい」


「そ、そうですか?」


「はい。なんて言うか兄弟みたいだなって」


「ま、まぁ幼い頃から私の面倒を見てくれていますからあながち間違いではありませんが…。って、そんなことはどうでもいいです!早く零さんの言っていた地点に戻らないと!」


「そうですね、では俺が薙月先輩を抱っこしていきます」


「抱っこ?!」



 薙月先輩は大声で驚いた。薙月先輩の大声、初めて聞いたな。



「はい。薙月先輩が機動力のある召喚獣を呼び出せるならそれでもいいですが、既に影鬼を召喚し、加えて馬頭さんと牛頭さんも召喚しました。俺の目に狂いがなければ馬頭さんと牛頭さんは影鬼を遥かに上回る力がある。その分、薙月先輩の体力消費も大きいはずです。ですので、この移動は俺に任せたほうがいいと思います」


「仰っていることは正しいのですが…」



 薙月先輩がゴニョゴニョと語尾を濁す。



「お嬢、ここは零さんに頼るのが得策かと。体力消費も抑えられる上に…みなまで言いませんが距離を詰められるのでは?一石二鳥です」


「ちょっと、馬頭?!」


「そうだぜ、嬢ちゃん。ここぞと言う時のチャンスを逃したら負け犬になっちまうってもんだ」


「牛頭まで…」


「抱っこが嫌であればおんぶでも俺は構わないですよ」


「ほぉら、零坊もそう言ってんだろ?」


「零様に頼るべきです」



 零坊…?零様…?俺のことか。初めての呼び方でどこかくすぐったい気持ちだ。だけど、嫌な感じは不思議としない。牛頭さんや馬頭さんはおそらく単体で位階8以上の能力者に匹敵する強さを持っているはず。それにもかかわらず、俺にも分け隔てなくフランクに接してくる。その器の大きさを感じざるを得ないな。



「うーん…」



 薙月先輩は唸っている。もしかして男子と体が接触するのが嫌とか…?だとしたらデリカシーに欠ける提案だったな。ここはむしろ馬頭さんと牛頭さんに同行をお願いするほうがいいかもしれない。



「あの、もし嫌であれば馬頭さんと牛頭さんについてきてもらう方向でも…」


「!」



 薙月先輩が慌てた表情をする。



「俺らはそれでも構わないぜぇ?なぁ、馬頭」


「はい。お嬢がそれで良いのでしたら」



 ありがたいことに馬頭さんと牛頭さんは了承してくれた。早速御二方と向かうことにしよう。そう考えていた矢先、今まで黙っていた薙月先輩が声をあげる。



「おんぶ!!…抱っこは恥ずかしいので、おんぶでお願いします」



 薙月先輩がおんぶを所望してきた。確かに抱っこはお姫様抱っこで行こうと考えていたが、お姫様抱っこは必然的に顔の位置が近くなる。薙月先輩ほどの美女をお姫様抱っこするのは俺の心臓が保たないだろうな。



「嬢ちゃんがそう言うなら仕方ねぇな、俺らはお留守番をしてるさ。嬢ちゃんを頼んだぞ、零坊」


「お嬢、お気をつけて。零様もお気をつけて」


「はい。ありがとうございます、牛頭さん、馬頭さん」



 そうして俺は薙月先輩をおんぶして先程の敵陣へと向かっていった。






今回のお話はいかがでしたか。よろしければイイネ・感想・ブックマークをよろしくお願いします。

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