王の凱旋
「姉貴…?」
そこに現れたのは紛れもなく、俺の姉、そして新東京第一高校の生徒会長こと王真九都であった。
「テメェどこから入ってきやがった?!俺の壁が張ってあったはず…」
「どこ…と言うと、正々堂々と正面玄関を通ってきた。少し邪魔な壁には退いてもらったがね」
「チッ、コイツも上位階者か」
「私の可愛い弟をずいぶんと可愛がってくれたようだな。礼を言おう。お前は確か指名手配中の八咫アギラか。まさか白昼の月のメンバーだったとはな」
「ハッ、姉貴の登場か?いいぜ、2人まとめてかかってこいよ。異能力-障壁顎牙-‼︎」
地面から生成された壁が鋭く先端を尖らせて姉貴に襲いかかる…が、その牙は姉貴に届くことなく、姉貴の眼前で塵となって消えた。
「テメェも面白い異能力じゃねぇか、防御系か?」
「答える義務はないな。それでは次は私の番か」
姉貴が言葉を終えた瞬間、八咫アギラが右方向へ激しく吹き飛んだ。
「ぐはっ、て、てめぇ。何しやがった」
「私の異能力だ。細かい説明は省略させてもらおう。どうせお前は統治局に引き渡すのだからな」
姉貴はそう言うと高らかに笑った。
「ちっ。流石に遊んではいられねぇな。この借りは忘れねぇぜ。あばよ」
八咫アギラの足元から無数の壁が生成され、八咫アギラを飲み込んだ。壁が地中へと戻ると既にそこには八咫アギラの姿はなかった。
「ふっ、逃げたか。まぁ良しとしよう。こちらには人質の安全という優先事項があったからな。大丈夫か?零」
姉貴が俺の方を向く。
「あぁ、大丈夫…というか何でここに?アウトレット全体に張ってあった壁で電波や通信手段は遮断されてたのに」
「獄之宮からの緊急連絡があったんだ。生徒会支給のスマートフォンは特別製でね。異能力者作成の通信機器ってやつだ」
なるほど。意思疎通の異能力としてはテレパシーなどの異能力が存在するときく。その類の異能力の応用技術だろうか。
「それじゃあ姉貴1人で来たのか?」
「そうだ。だが、後から統治局の調査員が到着するだろう。人質保護のため応援を要請したからな」
攻めは単身、後片付けは統治局を利用とは…我が姉ながら恐ろしい王様加減だ。
「零、お前は獄之宮や不忍の元に戻れ。ここの人質の保護は私に任せろ」
「あぁ、分かった」
俺は言われた通りに薙月先輩と不忍楓の元へと戻る。それにしても白昼の月の目的は一体なんだろうか。人質の中に特段強い異能力を持っていそうな人間はいなかった。八咫アギラほどの異能力者が既に組織内に存在しているのならば敢えて下位階の異能力者や無能力者を集める必要もないはず…。
「アニキ!」
「零さん、無事でしたか」
そんなことを考えているといつの間にか不忍楓と薙月先輩の居場所まで辿り着いていた。
「2人ともお疲れ様。力を貸してくれてありがとう」
「アニキのためならなんのその!拙者火の中水の中もお任せあれでござる!」
「本当か?それなら今度は炎の中に飛び込んでもらおうかな」
「ほっ?!炎の中でござるか…?」
「冗談だ」
「酷いでござるぅ」
「薙月先輩もありがとうございました。影鬼に助けられました」
「零さんのしたことに比べれば大したことはしていません。影鬼も役に立ったようで良かったです。戻って、影鬼」
薙月先輩の呼び掛けとともに俺の影から薙月先輩の影へと影鬼が戻って行く。夕焼けに照らされた俺たちの影は長く伸びていた。
「それにしても、お陰様で擬似戦地試験の作戦会議はできなかったな」
「ハッ!すっかり忘れてたでござる…」
「非常事態でしたから…仕方ありませんね」
「だけど1つ、収穫もあった」
「なんでござる?」
「俺たちは即興でもそれなりにやれる、ってことだ」
「確かに。とは言え、ほとんど零さんの活躍でしたけどね」
「今回は相手が異能力減殺弾を持っている疑いがあったから俺がメインで動くことになったってだけですよ。本番はお二人にも十二分に働いて貰います」
「ふふっ、楽しみにしてますね、本番での零さんの作戦を」
薙月先輩がイタズラっぽく微笑んだ。
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