障壁
「人質はこれで全員か?」
「いえ、まだ各エリアに残っているはずですが…」
「ったく、遅いな。何やってんだ?」
「それが…通信状態が悪いのか応答がありません」
「チッ」
異能力者と思しき人物と武装兵が会話をする。
「低級異能力者と無能力者を集めればいいだけの仕事にわざわざ俺を遣しやがって。腹が立つぜ」
ほう?奴らの目的は人を集めることか…!そうなれば話は簡単だ。人を集めることが目的である以上、そう簡単に人質を殺すこともないはず。少しばかり賭けに出るとするか。俺は背後にあった空き缶空き瓶回収ボックスをあさり、空き瓶を3つ取り出した。
今現在、4人の武装兵は人質らを左右から各方向2人ずつ挟むようにして長方形型に位置している。人質に標的が向かないよう一瞬で武装兵を制圧する必要があるが、俺が暗歩や鏡面ノ理を使ったとしても、位置的に2人が限界だろう。
「影鬼。お前には俺が制圧できない人質を挟んで反対側に位置する2人の武装兵を制圧してもらいたい。道は作る。頼んだ」
影は頷くかのように微かに揺れた。俺はそれを確認すると一階部分へ移動する。
「3…2…1…。行こうッ」
俺は物陰から鏡面ノ理-流-を使い飛び出す。それと同時に俺は携えていた空き瓶を天井側面部分に設置された大照明灯に投げつけた。
パリーンッ
いくつかの照明灯が割れた結果、残された照明灯から放たれる光によって俺の影は形を変える。長く、細く、伸びるように、人質らの影に達する。そして、影の中を何かが蠢き、反対側の武装兵の眼前に黒い鬼が現れた。
「なっ、何者だッ、ガハッ」
影鬼は1人の武装兵を殴り倒し、他方の武装兵に対しては振り向きざまにハイキックを繰り出した。無事、反対側の武装兵2名は制圧された。流石、薙月先輩の異能力の一部だ。影鬼自体の近接戦闘能力が非常に高い。
影鬼が武装兵の制圧に成功する一方、俺も時を同じくして、抜塞山を使って武装兵2名を制圧した。そしてすぐさま異能力と思しき人物のほうへ意識を向ける。
「カッカッカ」
その男は笑っていた。
「お前、なかなかやるなぁ。丁度退屈していたんだよ。こんな任務なんて雑魚だけでどうにでもなると思っていたが、お前みたいなのが潜んでいたんなら俺が来た甲斐があるってもんだぜ」
「そうかい。でもこっちはできたら戦いたくないんだけどな」
「そりゃ無理だぜ。面白いモノを見せてもらったからな。あの独特な歩法は何だ?初めて見るぜ」
俺の鏡面ノ理-流-を目で捉えたとなると相当の実力の持ち主だ。俺は一層警戒を高めた。
「それにその黒い鬼…。それがお前の異能力か?」
「残念ながら俺の異能力じゃない。これは…謂わば借り物だ」
「異能力の貸し借りだぁ?聞いたことねぇ。お前、本当に面白いやつだな。お前自身の異能力も見せてくれよ…なぁっ!」
相手は一瞬にして俺の間合いへと飛び込んできた。俺は、相手が放った右ストレートを寸前で避けて大きく後ろへ距離を取った。
「ほう。反射神経も良いとはなぁ、そそるぜ。面白いモノを見せてくれたお礼に俺の異能力を教えてやろう。俺の異能力-万物障壁-はあらゆる物質を使って壁を生成できる。土や岩、コンクリートは当然、水や氷で生成することも可能というわけだ。位階は8。お前の借りている黒い鬼も位階8以上の異能力と見た。そいつも近くにいるんだろ?連れてこいよ。一度に相手してやるぜ」
なるほど、万物を壁に…か。このアウトレットパークを覆う壁はこいつの仕業だったってわけか。異能力自体はいたってシンプル。だが、レジャー施設一帯を覆うだけの規模、そしてそれを維持し続ける出力、そしてそれと同時並行して俺を対処するための余力を残していると考えれば位階8も納得と言える。
「残念だったな。他の任務中でここには来ない。それに…あんた程度なら俺で十分だろ?」
「いいねぇ強気な態度。それじゃこんなのはどうだ?-障壁之掌-」
相手の詠唱と共に地面からコンクリートの一対の手が生成され、俺を押し潰そうとする。俺は片方の手に対して構えて特殊な正拳突きを放つ。鏡面ノ理-貫-。体重移動と腕の運びを駆使して絶大な威力の正拳突きを放つ技だ。
鏡面ノ理-貫-により、コンクリートの手のひらにはポッカリと穴が空いた。
「いいぜ、お前。簡単に死んでくれるなよッ!」
地面からは次々と掌が生成される。その掌はこちらに向かって覆い囲むように迫ってくる。俺はその一つ一つに鏡面ノ理-貫-を放ち、圧死することを免れていた。
「おいおい…逃げるだけか?退屈させてくれるなよ…」
「そこまでだ」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
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