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スクールカーストなんてクソ喰らえ

 

 恐ろしく背の高いビルが一棟中央に鎮座する摩天楼。ここは位階都市(いかいとし)・新東京。かつて東京と呼ばれたこの都市はより一層の発展が進み、今では空が見えないほどに高層ビルが立ち並んでいる。ここまで開発が進んだ理由(わけ)は200年前のこと、突如として現れたAウイルスが東京を中心として伝染していったことが発端(ほったん)だ。ウイルスというと聞こえは悪いが、それは人間の可能性を格段に押し広げたーーー異能を開花させることで。Aウイルスは人間に異能をもたらした。水や火を操るといった異能、銅を純金へと変える異能、生物を生み出す異能など…その内容は様々だ。扱い方によっては兵器にも金のなる木にもなり得る。そんなウイルスが東京で広まったとなれば世界各国の人間はウイルスを求めて東京に集中する。そうして東京は経済的大発展を遂げたのであった。これが今の日本史の授業で習う内容である。



「それでは今日の授業はここまで。次は位階制度構築の歴史について扱う。日直、号令」


「起立、礼」



 異能には位階が存在する。規模、持久力、希少性の3項目からなる評価基準により、0から9の十段階に分類される。中でも最高位である位階9は日本国内に現在10人しかいない。それほどの少なさなのだから当然、異能の内容も絶大だ。聞くところによると一国を実力で制圧できるらしい。



「日本史の授業ってさぁ、眠くなるよね。もう僕はおねむだよ、(れい)


「もう一コマで今日の授業は終わりなんだから頑張れよ」



 ひたすら眠そうにしているこの男は覇真司(はま つかさ)。異能発生後に台頭した名家・覇真家の一人息子であり、幼いルックスに178センチとそこそこの高身長、成績も優秀で女子からは大人気だ。加えて位階は8。完璧超人とはこの男のことを指すのだろう。



「そんなこと言っても退屈なものは退屈だよぉ。僕らは中等部までに大学卒業レベルまでは一通り学んでるんだからさ。零だってそうでしょ?」


「それはそうだけどな」



 覇真家は王真家と並び、国家異能統治局こっかいのうとうちきょくの中枢部を(にな)っている。国家異能統治局とは、異能犯罪の取り締まりや異能の査定、位階評価を行う特殊機関であり、その局長は代々覇真家と王真家の当主が就任している。所謂(いわゆる)、エリート家系なのだ。そんなお家柄か、その家で生まれた子供は幼い頃から徹底的な詰め込み教育が施される。(つかさ)の言った通り、大学卒業レベルまでならある程度は抑えている。



「まぁ、次は体育だから眠くはならずに済むぞ」


「それ嫌味にしか聞こえないんだけど?僕が体動かすの嫌いなこと知ってるじゃん」


「そりゃ嫌味だからな」


「うへぇ、いじわる〜い」



 ここ|国立新東京第一高等学校《こくりつしんとうきょうだいいちこうとうがっこう》では実学の理念を重んじており、体育では異能を用いた模擬戦を行なっている。模擬戦では同じ位階の相手と1対1で戦うのが通常であり、第一高等学校には ー1人の例外を除きー 位階6未満の生徒は存在しないため模擬戦といえど本物の戦争と見紛(みまが)うほどの激しさだ。



「いつも通り同じ位階同士ペアになって模擬戦を行う。クリティカルヒットを与えたらそこで試合終了だ。ただし、王真零、お前は覇真司とペアだ。それじゃ、解散!」



 体育教師が指示を飛ばす。



「はは、また僕らぺアだね」


「仕方ないだろ。俺もお前も丁度いい相手がいないんだ。とは言え、司にとって俺程度じゃ役不足なのは否めないけどな」


「ふふふ、そんなことないよ。23戦中10勝10敗3分。拮抗(きっこう)してるじゃないか」


「それは司が異能を抑えているからだろ?本気を出されちゃ1分けすら取れないだろうな」


「僕が零との勝負で手を抜いたことは一度たりともないって。今日の一戦は…貰うよ」



 そう言うと零の雰囲気が変わる。周囲の生徒は自分の模擬戦そっちのけでこちらの試合を観戦しているようだった。模擬戦は他人の試合を観戦することも許されている。その場合、レポートを提出するのが規則だ。これまでの俺の試合はどのように書かれているのか。おそらく俺に肯定的な意見は書かれていないだろうな。今度、閲覧して見るのもいいかもしれない。



「それでは試合開始」



 開始の合図と共に司は強く地を踏み締める。すると、司の周りの大気が歪み、みるみるうちに漆黒の球体が形成されていった。球体は2つ、司の両肩あたりに浮遊している。



「初っ端から新技か?俺で試行錯誤してるだろ」


「バレた?試行錯誤に付き合ってくれているお礼に一つ教えてあげるけど、この球体には触れないほうがいいよ」


「ご忠告どうも」



 司は重力を操る異能を有している。位階8の中でも最高クラスだろう。実際、司の異能を査定する時には国家異能統治局内でも位階9か8かで意見の対立が激しかったようだ。それほどまでに司の異能はずば抜けている。

 司の異能を考慮すると、あの球体は差し詰め小惑星と言ったところだろう。おそらく球体の周りには引力が生じており、一定距離に近づくと吸い寄せられ動きが制限されると言ったところか。と、原理が分かったとて簡単に攻略できるわけではない。様子を伺っていると、司は一歩踏み込みこちらに殴りかかってきた。俺はそれを余裕を持って(かわ)す。司の手拳は殴る際に引力を生じさせて加速しており、インパクトの際に反重力を生じさせることで威力を何倍にも増大させている。司の拳は闘技場の壁に直撃し、その壁を粉々に砕いた。



「おいおい、硬化コーティングの壁を…?当たってたら上半身が下半身とさよならしてたぞ」


「ふふふ、避けてくれると信じてたよ」


「目が笑ってねぇ…」



 粉砕された壁の破片や塊が黒い球体に引っ張られていく。



「弾けろ」



 司の号令と共に球体に引っ張られた壁の破片が一気に弾け飛んできた。おそらく司の拳と同じ原理があの球体で行われているのだろう。俺は素早く地面に伏せて飛んでくる破片を避ける。それと同時に破片の一つを司の目を盗み、手に持った。

 司は再び球体に破片を集める。俺は司の(ふところ)へと走り出す。球体が発する引力も相俟(あいま)って司の反応できない速度で良いポジションへと潜り込めた。俺は司の横顔目掛けてパンチを繰り出す。



「クッ」



 司は俺のパンチを避ける。そして、懐に入られて焦った司は拳を握りこちらを殴る。しかし、俺と司との距離が近いからか先程とは異なり、重力を発生させないただのパンチであった。俺はこれを躱して距離を取った。そこで、またしても司は号令をかける。



「弾けろ!!」



 バチンッ


 

 誰もが目を疑った。弾けた破片はなんと司の側頭部に直撃していた。司は何が起きたのか分かっていない様子だ。



「そこまで!覇真・王真ペア試合終了!王真零の勝利!」



 教師の号令がかかる。



「な、何が…起きたの?」


「なんとか上手くいったな」


「零!一体何をやったのさ!」


「球体の内側さ」


「ッ!!」



 あの黒い球体は常に司の両肩あたりを浮遊していた。そして、司の「弾けろ」という言葉と同時に吸収した破片を弾き飛ばす。普通であれば破片は真っ先に司に当たってもおかしくない距離だ。それにもかかわらず司には一欠片も当たらない。となれば、考えられる線は一つ。球体の司に面している側には破片を集中させていないということだ。そう推測を立てた俺は試合中に破片を球体の司側に配置することを目指した。俺が一発司に殴りかかった際、パンチは避けられてしまったが、そもそも拳を命中させようとは考えていなかった。そう、そのパンチの瞬間に隠し持った破片を球体に配置してきたのだ。次の「弾けろ」の号令と共に、司の側頭部に当たる角度を計算して。



「強力な技だけどまだまだ改良の余地はありそうだな」


「やられたよ。これで零が一勝リードだね」


「よしっ、明日の昼飯は司の奢りだ」


「ちぇーっ、高いのはダメだかんね」


「寿寿苑の焼肉弁当にしようかな」


「ちょっと零聞いてる?!」



 負けたほうが翌日の昼飯を奢る。俺と司とのお決まりのやりとりだ。



カラーンッ



 観客席から空き缶が俺目掛けて投げ入れられる。



「またか」


「零、控え室に早くいこう」



 これも毎度のこと。第一高等学校では位階が高いほうが崇拝されるというスクールカーストが存在する。司は位階8であり、他の生徒からの人気も高い。そんな生徒に俺が勝つのはタブーというわけだ。

 俺の位階は0。本来であれば、第一高等学校に在籍していることすら許されない、無能力者なのだから。



「みんな、僕と零は正々堂々と戦ったんだ!そういうのやめろよ!」


「いいんだ、司。俺が無能力者なのは事実なわけだし。それに…」


「ん?」


「いや、なんでもない。ほら、行こう。」



 

 それに、位階0の無能力者がこの学校のトップになったほうが面白いだろ?




妄想をつらつらと書いてみました。この妄想が尽きるまではひとまず書き続けようと思います。

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