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第50話

綺堂 薊(きどう あざみ) side








「アアアァァァァッ!」



「……最悪だ」




 『お菓子な魔女』で出現する敵の中で最強なのはヘンゼルでもグレーテルでも魔女でもない。


 たった今、グレーテルに喚ばれた双子の父である。


 彼は双子が追い詰められた際、確率で出現するボスでその強さは並のラスボスをモノともしない強さを誇り、愛しの子供を苦しめた敵を虐殺するのだ。


 グレーテルの死亡確認をしなかった事が心底悔やまれる。




「すごい強そう」



「あれが、お父様って訳かい。随分と厄介そうなヤツだね」




 魔女師弟も彼の強さを感じ取ったようで及び腰だ。


 どうやら俺は気が抜けていたらしい。


 この病みゲー世界はプレイヤーを病み(・・)の底に堕とす努力を怠らない最悪の制作陣が作った世界(ゲーム)だと言うのに、だ。


 狂人(ゲーマー)として、あるまじき失態である。




「ド、ゲェェェェッ!」




 叫ぶ双子の父が、いつの間にか眼前に現れ蹴り飛ばされる。


 彼が現れてから一瞬たりとも気を抜かなかったというのに、動きが見えなかった。




「薊くん!?」



「ちっ、コイツこそ本当の化け物じゃないか」




 血反吐を撒き散らし壁にめり込んだ俺を見た二人は双子の父へ攻撃を仕掛ける。


 煌めく無数の魔力光が降り注ぐも、効いた様子は一切ない。まるで何もないかのように二人へ視線も送らず、無言で部屋を破壊し始めた。


 俺なら吸い殺せるか?


 無防備に背中を見せる双子の父に一瞬そんな考えが過ぎるも、すぐに却下する。途中でミンチにされるか、文字通りの意味で歯が立たないかの二択だからだ。




「こりゃぁダメだね」




 それが、双子の父へ魔法を放ちダメージが無いことを確認した魔女の言葉だった。


 魔女の敗北宣言とも取れる言葉に来紅はとても驚いていた。


 ゲーム知識で魔女より強いことを知っていた俺は冷静でいられたが、これまで頼りにしていた魔女のセリフが信じられなかったのだろう。


 元々、ゲームでヘンゼルとグレーテルが父親召喚(切り札)を切った際は、ほぼ負けイベントだった。


 それこそ、今の戦力では勝ち目が無に等しいほどに。


 しかし、魔女の攻撃力が高いのも事実だ。『応報(おうほう)の剣』が石となり砕け散った今の俺は言うに及ばず、もしかしたら剣があっても俺より高かったかもしれない。


 どこからか強力な杖を入手してきた来紅よりも、おそらくは魔女の方が強いのだろう。隣で酷く狼狽している来紅の様子から、そう思えた。


 そもそも魔女の得意属性たる瘴気は単純火力よりも耐性がなければ百%に近い確率で付与される状態異常の『瘴気』が最も恐ろしい。


 付与されればグレーテルのように体が紫色になるのだが双子の父には、そんな様子は見られない。数発与えてダメならば高い耐性を持っていることが伺えた。


 ダメージはおろか、状態異常も通らなければ舌打ちの一つでもしたくなるだろう。




「しかし、アイツは何をしてるんだい?」




 彼は部屋の中をウロウロしたり、瓦礫をどかしたりと、何かを探している様子だった。


 大してダメージにならないと言っても、攻撃されながら何もしてこないと言うのは不自然すぎる。


 ゲームでは瀕死の双子の盾となりプレイヤーを苦しめたものだが、今の彼に護るべき者(ソレら)はもういない。そんな彼を他の何が、そうまでさせるのか。


 そう考えたとき、やっと分かった気がした。




「多分、ヘンゼルを探してるんだと思います」




 回復を終え、壁から抜け出した俺は答える。


 来紅とメリッサには危害を加えず、俺を攻撃する時は斧で叩き切らずに蹴り飛ばした。ほぼ間違いないだろう。




「ヘンゼル? でも、もう死んでるよね?」



「……あー、そういうことかい」




 どうやら、魔女には伝わったようだ。


 恐らく双子の父はヘンゼルが死んだことに気づいていないのだろう。だから、部屋を探し回っているのだ。いつも双子は一緒にいたから、同じ部屋に居るはずだと信じて。


 そう考えると不憫に思えるが、俺達は敵に同情してる暇があるなら逃げるのが賢明だろう。


 この館に強い思い入れがある魔女には悪いが、諦めて逃走に手を貸してもらおう。魔女が館に掛けた退場禁止の魔法はボスである双子を倒したので解除されている筈だ。


 そう二人に提案し、渋る魔女には後で強くなってから一緒に取り戻そうと言えば、なんとか納得してもらえた。


 そして俺達は、彼の注意が向かないうちに『魔女の工房』を後にした。

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