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第17話

雁野 来紅(かりの らいく) side








(あざみ)くんはどこかな~」




 今まで彼と行動した範囲を歩くこと五時間。未だに出会えていない。


 でも不安はない。何故なら自分達は友達なのだから。きっと運命が導いてくれることだろう。




「ふふっ。だって、薊くんの友達は私だけで、私の友達は薊くんだけなんだもん。当然だよね」




 それに、彼の為だけの特性ポーションも作ってきたのだ。傷が治るだけでなく、栄誉満点で健康にいいので是非とも飲んでもらいたい。


 そうして、彼と昨日友達になった思い出の公園内を十周すると、次は道具屋へ向かった。優しい彼が困っていた自分を助けてくれた道具屋へと。


 今日行くのは十回目なので休業日なのは知っているが、別に買い物をするわけではないので問題ない。


 むしろ、店員に不審がられないため好都合とすら言えよう。




「あれ、お店やってる?」




 戸締まりのため閉じられていた窓は開かれ、人気のなかった店内は話し声が聞こえる。


 最初は店を開けたのかと思ったが、休業日の札は扉に掛かったままであり、そもそも店の扉は閉じたままだ。営業はしてないのだろう。


 まぁ、いっか。


 と、本来ならそう思うところだろう。しかし、今回だけは別だった。


 女としての……否、友人としての勘が囁くのだ。


 ここを調べろと。




「これで浮気は許してあげる~もうやっちゃダメよ~」



「たっく。酷い目にあったな」




 窓から漏れるのは男女の会話。その内、男は間違いなく自身の友人である綺堂 薊(きどう あざみ)だ。


 有り得ない筈の声で、有り得ない筈の会話が聞こえた。


 ねぇ、どうして? 私以外に増やさないでって言ったよね? 友達がダメなら彼女もダメに決まってるでしょ?


 それと浮気って何? 他にも仲いい人がいるの?


 どうして、あの時に教えてくれなかったの?


 どうして私一人じゃダメなの?


 どうして? ねぇ、どうしてなの? どうして? どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして……






 ネェ、ドウシテ








◆(少し遡った)綺堂 薊(きどう あざみ) side








 露店市場に到着した俺は適当な店を見回りながら来紅(らいく)を探す。


 彼女の売り方は少し特殊で、固定の場所で売っているのではなく商品を持ち歩きながら通行人に買ってもらう売り方である。


 ようは『マッチ売りの少女』スタイルだ。


 そんな血液(ポーション)売りの少女は、普段ならいる筈の範囲で見かける事はなく、俺は手持ち無沙汰に歩き回っていた。




「やっぱりゲーム知識は信用ならないな」




 当初はゲーム知識で荒稼ぎも出来ると考えていたが、この様では確実に失敗していただろう。レベル上げ万歳である。


 それ後、ゲーム知識の範囲外を探すもやはり見付からない。恐らく今日はいないのだろう。




「帰るか」




 掘り出し物もいくつか買えた。風が強く、うっとおしくた事だし、もうここにいる意味もないだろう。


 買った物の中には『血封の迷宮』の必需品である『清めの塩・下』もある。あんな夢を見た後で、流石に道具屋へは顔を出しづらいので、ここで買った。




「あ~、お客さんが浮気した~」



「っ!?」




 来紅と会えなくて良かったような、残念なような複雑な気持ちで歩いていると、同じく買い物していたであろう道具屋の店員さんに声を掛けられた。


 彼女は俺が他の店で買い物をした事を言ったのだろうが、今はその手の話に敏感な時なのだ。勘弁してほしい。




「……脅かさないでくれ」




 浮気の部分には、あえて触れないようにしながら質問する。


 悪戯っぽく笑う彼女はとても楽しそうだった。




「ごめんね~あんなに驚くと思わなかったから~」



謝罪(それ)はせめてニヤケ面を止めてから言ってくれ。つーか、ごめんなんて思ってないだろ」



「勿論だよ~」




 オイ。


 そうツッコミたいが、終わらないからかわれ地獄に陥りそうな気がしたので諦めた。けれど現状を維持しても、からかわれる事に変わりはないだろう。


 故に、話題を逸らす事にした。




「今日は仕入れか?」



「強引ね~、でも可愛いから許してあげるわ~」



「それはどうも」




 誤解を招くような言い回しだが、話を変えてくれるようだ。まぁ、ニヤニヤは止めてもらえなかったが。




「そんなに興味あるの~?」



「あるある」




 正直、何を仕入れたかは大して興味はない。だが、思い付いた話題がこれだけだったので押し通す事にする。


 と、言うか彼女といると今朝の夢がフラッシュバックして、病み来紅と出会う気がしてならない。早いとこ終わらせよう。




「そんなに気になるなら~お店に寄って行ってよ~」




 しかし、そんな時ほど上手く行かないのが『病みラビ』だ。ニヤニヤの店員さん(悪魔)は愉しげに告げた。




「口止め料、期待してるね~」




 そして話も変えてくれなかった。

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