表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

2章

二人三脚で仕事は順調に進んだ。


そんなある日、あおばは自宅でくつろいでいた。アパートの一室だ。あおばはもちろん稼ぎに稼ぎまくっていたが、豪華な生活は好きではなく、質素な生活をいとなんでいたのだ。


あおばのスマホに、みなみから電話が来る。

「あおば? 実はね。また凄い仕事取って来ちゃった」

「何?」

「もう一個、ラジオパーソナリティの仕事取って来たの!」

「本当!?」

「しかも、それもあおばの名前の付いた冠番組になるんだって!」

「凄い!」

「やったね! もう売れっ子声優だね!」

「ありがとう。みなみ」

「大変だけど頑張ってね」

「うん」

そう言ってあおばは電話を切った。


そしていよいよその新ラジオ番組収録の初日がやって来た。時間帯は夜、生放送だ。


だがあおばは、その前に入っていたアフレコの仕事が長引いていたため、なかなか抜け出れずにいた。

ギリギリになりそうだったこともあり、みなみは一足先にその収録現場であるスタジオに向かい、諸々の調整をすることになった。


やっとアフレコが終わり、あおばは急いでスタジオに向かう。


現場に到着したあおばは、怪訝そうな表情になる。

そのスタジオには、ひとっこひとりいなかったのだ。


「どういうこと?」

あおばは不安になり、スマホでラジオを付ける。


「は〜い! 私、二ツ沢あおば! バリバリ売れっ子声優DEATH!」

それは紛れもなくあおばの声だった。


あおばは足の爪先から髪の毛の先まで、一瞬にして凍り付いた。


「誰・・・?」

あおばは頭がくらくらし、呆然とする。


「私が世界で一番の声優よ! ファンの皆もそう思うでしょ!?」

「違う・・・私・・・絶対こんなこと言わない・・・」

あおばはあまりの恐怖にガタガタ震えていた。歯もガチガチさせ、立っていられなくなり、座り込んだ。

まだブルブル震えている。


声は紛れもなくあおばであったが、普段あおばがラジオパーソナリティーとして演じている明るいあおばより、更に数段明るいあおばだった。


あおばはそのまま気を失った。


気が付くと、自分のアパートの部屋で、布団の上に寝ていた。

近くにみなみが座っていた。

みなみがあおばを探し出し、アパートに連れて来たのである。


目を覚ましたあおばは呟いた。

「みなみ・・・」

「ごめん。あおば・・・」

「どういう・・・こと?」

「私にもわからない」

「えっ?」

「現場に行ったらディレクターさんに、もう放送入ってるから行っていいよって言われて、半ば強引に追い出されたの」

「ディレクター?」

「うん。それでおかしいと思って出口で待っていたら、待てど暮らせどあおばは出て来ない。それでそのディレクターに聞いたら、もう帰ったっていうの」

「ちょっと待って。私が行った時は、ディレクターどころか、誰もいなかった・・・」

「えっ? どういうこと? Cスタジオだよね?」

あおばは固まって押し黙った。

みなみは、あおばから発せられる、不穏な空気を感じた。

「私、Dスタジオって聞いたよ」

みなみは必死に言い返した。

「私ちゃんとCスタジオって言ったよ」

だが二人はそんなことより、その時ブース内にいたのは誰なのか?という問題の方が重要だと気付き、冷静になった。


「ごめんね。場所を伝える時、もっと正確にするよう気を付ける」

「ううん。私もしっかり確認しないと」

「一体誰だったんだろう・・・」


二人はどうしようもなく、みなみはそのままあおばの部屋に泊まることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ