3話
これにておねショタ短編集は終わりです、次回から長編準備のため少し時間を頂きます
01
―――――白銀姫は自らの手で大事な人を殺してしまったのよ。
僕は緋依さんが自ら言っていた大事な人を殺したと言うのは恐らく……弟さんのことだろう。そして何で弟と似た僕を専属メイドにしたのか、疑問でしかなかった。緋依さんに追い出されてから彼女の部屋に戻ることは出来なかった。他のメイドさんや執事の人に聞いてみると、いつも以上に部下に当たりが強くなっていると言っていた。
「どうしたものかな……」
庭園に生えている雑草を抜きながら僕はずっと緋依さんのことばかり考えていた。緋依さんは僕をまるで本当の弟のように可愛がり、僕が性別を誤魔化して入ったことが分かっても特に何も言及してこなかった。自分の意志を持ち、部下や使用人に対してハッキリ物を言うのに僕には甘やかすだけだった。どうしてだ……
「よ、少年。随分悩んでいるわね」
ふと声がした方をみると、彼方さんがいつの間にか僕の隣で立っていた。……人の気配に気づけないほど僕は緋依さんのことを考えていたのか。僕は彼方さんに今の状態を話してみることにした。
「あの子は昔、自分の弟を事故で亡くしたのよ。だから弟に似てる利音くんが来たときには彼女自身も驚いたはず」
彼方さんは緋依さんが幼い頃に弟と喧嘩した直後に事故で亡くしたことからずっと自分を責めていると言った。
「……人と必要以上に関わろうとしなければ、また誰かを失う悲しみを味合わなくていいと思っているの、緋依は。だから利音くん、君ならあの子になんて言葉をかける?」
僕は彼方さんの言葉を聞き、急いで屋敷へと戻る。弟と顔が似ているだけの僕が何を言っているんだと思うかもしれない、でもずっと自分を苦しめ続けるのはおかしいと言わなければ。
02
「……緋依さん!」
僕は勢いよく緋依さんの部屋の扉を開けると、彼女はいつものように机で書類とにらめっこをしていた。
「利音くん、君はもういらないって言ったはずだけど」
人を凍らせてしまうような目線で僕を睨み、そのまま書類の方へ顔を戻す。僕はそのまま彼女がいる机まで行き、顔と顔がくっついてしまいそうな距離まで近づいていく。
「もう無理はしないでください、緋依さん。それに強い言葉に言い慣れてないでしょ」
図星だったのか、緋依さんの眉が少しだけ動いたような気がした。
「僕、別にいいですよ。……僕は緋依さんのメイドですからどんなわがままでも聞いてあげます。でもこれだけは言わせてください、もう自分を責めるのは辞めてください」
「……弟と同じ顔でそんなことを言わないで。誰に聞いたか知らないけど私が……酷い言葉を投げかけなければあの子は死ななかった、きっと私を恨んでいるはず」
白銀姫と呼ばれた女王に取り憑いていた氷が少しづつ溶けていく音が聞こえてきた。僕は緋依さんの言葉が詰まる姿をみてこれ以上は喋ることは辞めた。僕ができることがあればただ一つ、専属メイドとして黙って傍にいてあげることだ。
「肝心なところで喋らないのは弟にソックリね……」
緋依さんは僕の傍へ近寄り、まるで本当の姉のような優しい口調で僕に喋りかける。
「利音くん、私はもしかしたらまた弟にしてあげられなかったことを君にするかもしれない。それでもいい?」
僕は自分以上に孤独を恐れている緋依さんを支えなくてはいけないと決意をする。それが僕の使命だ。