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(2)

 風呂からあがった雨乃さんはショートパンツにTシャツ姿で料理を摘み、ビールを飲む。

 この女と一緒にいるとボロを出しそうなので、俺はとっとと夕飯を食べて自室へ戦略的撤退を決め込む積りでいた。今日の出来事がバレたらいじり倒されるからだ。


 しかし、食べ終わるタイミグでビール缶を持った雨乃さんが徐に口を開く。

「それで涼川姉妹の妹と付き合うことになったのですよね?」

「バ、バレてるッ!」

 取り乱す俺を見て雨乃さんは「ふっ」っと鼻で笑った。

「ハッ!まさかこれも、……誘導尋問ッ!?」

 しまった。さっそくボロを出してしまった……。


「あの事件以降のあの子を見ていたら、こうなるような気がしていただけですよ」

「……」

 それは一学期に起きた事件のことだ。58針を縫う大怪我を負った俺は3週間も入院した。その時、茜は毎日のようにお見舞いに来て、それで雨乃さんとも面識があった。


「空人さんは姉の蒼さんが好きだから、どうなることかと心配していましたが……」

「あんた、どこまで知ってるんだよッ!?」


 俺の恋心を雨乃さんに打ち明けたことはない。

 唾液をまき散らし、のたうつ俺にCOOLな雨乃さんは当然の様に答える。

「ラブレターを書いていたところまでは知っています」

「俺の部屋に監視カメラと盗聴器が仕掛けられているんだな!?」

「普通に空人さんの部屋へ入ったら机の上に置いてありましたよ」

「普通に入らないでくださいッ!!」


 雨乃さんはまるでキチガイを相手にしているかの様な顔で「はー」と溜め息を吐く。おかしいのはそっちですよね??


「私は付き合うことには反対です」

「な、何故ですか?」

「空人さんが女遊びに耽って夜帰ってこなくなったら、ご飯は誰が作るんですか?」

「いや、真顔で言われても……」


「それにエロ動画マイスターの称号を持つ空人さんと付き合ったら茜さんが妊娠します」

「するかッ!しかもなにその称号!?」

「ほう?それは避妊なら任せとけってことですか?被ってても被せるのですよ?ん?」

「そんなに被ってねーよッ!」

「そんなにとは?」

 ほろ酔いで楽しそうにしている雨乃さんとは反対に俺は錯乱状態に陥ろうとしていた。

 ダメだ。早く自室へ退避しなければ、このペースだと俺は堕ちるところまで堕ちていく。


「もういいです。……俺は茜みたいな性格がきつくてギャルっぽい子は好きじゃないんです。色々な間違いがあって付き合うことになっちゃったけど……。俺のこと好きじゃないみたいですし、謝ってリセットします」


「空人さん、貴方は本当にバカ……、失礼しました、どうしようもないクズですね。彼女は臆病で本心を伝えるのが苦手なだけなのですよ。茜さんの気持ちをしっかりと考えてあげてください。根のは誰よりも優しい空人さんならできるはずです」

 貶しているのか褒めているのか、どっちなんだよ。

「けど、女の子の気持ちなんて俺には……」


「そうだ。なら良い物を差し上げましょう」

 そう言うと雨乃さんは通勤バッグから何かを取り出した。それは赤と青のカプセル錠の薬。

「これは?」

「通称SecretLAN。私が開発している薬です」

「シークレットラン?」

「まだ開発段階ですが簡単に説明すると、この薬を飲むことで近くにいる人の脳波と自分の脳波がネットワークの様に繋がり、相手の考えていることがわかるのです」

「ちょ、ちょっと待って下さい。今、開発段階って言いましたよね?副作用とかは大丈夫なんですか?」

「ん?大丈夫ですよ?(たぶん)。男の子がそんな細かい事を気にしていたらダメですよ。本当に小さい人ですね」

「一言余計なんだよッ!しかも小声でたぶんって聞こえたぞッ!」


「効果時間は短いです。適切なタイミグで使ってください。それから薬の作用を確かめたいので、服用したら結果を教えてくださいね」

 そう言うと、雨乃さんはシークレットランを俺に手渡した。


「本当なら凄い薬ですね。……もらっていいんですか?」

「ええ、構いませんよ。都合のいいモルモット、失礼しました、今困っている空人さんに使ってもらいたいですから」

「誰がモルモットですか!」

「ん?失礼しました、ハツカネズミの方が良かったですね」


 COOLな雨乃さんは相変わらず表情を崩さないが、今日はいつもより楽しそうにしていた。






 自室のベッドで仰向けに寝転がり、シークレットランを眺めていた。

 よく見たら小さな印字が刻まれてることに気が付く。そこには「ビタミンC」と書かれていた。


「だ、騙しやがったなッ!」








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