9.国境警備隊
拠点での生活を初めて数日が過ぎた。
食料庫と思しき部屋から何かのデンプン粉を見つけたため
沸かした水で練ったウガリもどきを食べていると外が騒がしいことに気づいた。
盗賊の仲間だと困るので息を潜め、様子を伺ってみるとどうも違うらしい。
「本当にここが例の盗掘団の棲み家か?見張り台にも人影ないぞ?」
「っかしーな。ケフ高地東部って通報では言ってたんだけどな。」
「でもそれらしい建物はここしか無いじゃん。」
どうやら3人組で警察か警備のようだ。
下手に隠れてるとまずそうなのでこちらから声をかけてみる。
「すいませーん。ここにいた盗掘団ならやっつけましたー。」
驚いたようにこちらをみる3人組。
「何者だ!」
「やっつけたとはどういう意味だ?」
言葉は一応通じてたようだ。
「言葉通りの意味ですけど。遺体は全員分あるんで検分とかします?」
「…見せてみろ。」
"不可視の商品棚"はうかつに人前で出せないので
使っていない部屋に"倉庫"から盗賊の死体を出し、
3人組を小屋に招き入れる。
「こっちです。防腐処理してるので検分はしやすいかと思います。」
そう言って部屋の扉を開け、確認を促すと
こちらを見張るためかちっこい男一人を残し部屋に入っていく。
◇◇◇◇
リビングで待っていると3人組が向かい合わせに座った。
「我々が把握している分は確認できた、協力に感謝する。ええと…」
「ハサマです。」
本名だと面倒そうなので元の世界で呼ばれていたあだ名の方を名乗る。
「俺は国境警備隊のフィリップス、お前さんを見張らせてたチビがフューリ、
んで色気のないのがモリンだ。」
モリンから「どういう紹介の仕方よ」とツッコミが入り、漫才が始まりそうになったのを
フューリが止めて話し合いに入る。
「で、ハサマ。お前さんどこの者だ?
棲み家の確認で偵察だけとはいえそれなりに装備固める必要がある程の相手だ。
そう簡単に片付けられる奴らじゃないぞ、盗掘団は。」
まさか眠気のハイテンションのもとチート全開で殺りましたとは言えず黙っていると
「いずれにせよ俺の手に負えん。俺たちの街まで同行してもらいたいな。」
と、人里への案内を提示してくれた。
そのハードなぼっち生活から解放できそうな提案に
一も二もなく飛びついたのは仕方ないことだと思う。
最序盤で都合よく見つけられたり、親切な馬車に相乗りさせてもらったり、
襲撃イベントで連れてってもらえないとこんなにも街に入る手順がかかるんだねぇ