8.平穏な朝 〜血の匂いを添えて〜
睡眠導入薬を飲まずに寝たのなんて何ヶ月ぶりだろうか。
あまりにも疲れていたために半日以上も眠っていたらしい。
現在は昼前といったところ。
ともかく盗賊の討伐などという突発イベントを越えた。
寝る前に後片付けをやってなかったので血の匂いが漂う小屋だが、
当面の拠点として利用させて頂くとしよう。
「じゃ、まずは朝飯からかな」
言いつつ倉庫に入れてある火を通せば食べれる食材を引っ張り出す。
この小屋にちゃんとキッチンがあって助かった。
持ってた食材が草を中心とした植物ばかりで菜食主義者の真似事をするとこだった。
ありがたいことに塩をはじめとした調味料も常備してあったよ。
保存食であったであろう干し肉と鑑定上食えるらしい草の炒め物を腹に入れ一息。
窓を全開にしているはずなのに漂う血の匂いが眠気を覚ます。
今日で異世界に来て3日目。
異世界もののテンプレならどこかの貴族領で礼を受けている頃合いだろう。
貴族などという面倒なモノに目をつけられるのはたまったもんじゃないが
血痕のついた小屋で一人寂しく草を食うのとどちらがマシなのかなと少しだけ現実逃避。
食事の後はいい加減我慢できなくなった血生臭くなってしまった小屋の掃除。
川の水を倉庫から放水し、備え付けてあった掃除用具でこすっていく。
ある程度綺麗になったら汚水を倉庫に一旦移し外に出す。
一番厄介な死体処理を倉庫に入れてることもあって
壁や床の洗浄だけで済ませそうだ。
…刃物が刺さった跡については見ないことにする。
"不可視の商品棚"の能力はまだ使いこなせてないけれど、
当面の衣食住は確保できたわけだから
あとは人里を見つけるまで頑張って食いつないでいくだけだな。
脳内BGM:ペールギュント組曲 朝