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0・学寮というところ


 むかしむかしーーこれは永く続いた乱世の末に江戸に幕府がようやく出来上がった頃のことである。


 いろいろあって全国津々浦々の領国へと国替えになった各地の戦国大名達は、江戸に幕府を開いた天下人ーー徳川家康に誓詞を差し出し、忠節を誓った。

 関東や奥州の諸大名にまでこれが行き渡ったのが、慶長十七年のことである。

 

 この忠節の証として、大名達は妻子を江戸屋敷に住まわせる事になった。


 ーーのみならず、


 各地の大名達は跡継ぎとなる男児を江戸城へ差し出すことを義務付けられた。


 戦国の世が終わった江戸の時代の黎明期、各地の藩主子息達は江戸城・西の丸内で寝食を共にする生活を送っていたのである。 

 

 そこは世間では《学寮》と呼ばれる学び舎であった。

 

 学寮へ出仕した諸大名の御曹司らは生徒である。

 

 論語に始まる漢学の学問は言うに及ばず、

 剣術や弓術、馬術などの武芸全般、

 詩文や書画に遊芸に、果ては天文学に至るまでーーありとあらゆる授業がどの生徒にも平等に毎日のように行われている。


 生まれや実家の家柄、国力や格式にとらわれることなく、誰も彼もが将来の良き藩主となれるように。


 乱世も鎮まり、江戸に幕府が開かれて既に十三年あまり。

 学寮に出仕する生徒たちの本分は将来のための勉学であり、その日常に命が脅かされるような気配は皆無に等しかった。


 ただし、それはもちろんーーあくまで彼らの実家が、親が、徳川へ忠実であるということが前提の上で約束されているものであったけれども。


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