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異世界転生(仮タイトル)  作者: キコリ
9/22

第09話「帰宅」

すっかり日も暮れ夕食の準備が整った頃、パパが帰って来た


「ただいま」


「「おかえりー」」


俺と姉ちゃんはパパに飛びつく


前世の幸せな頃を思い出しながら、この関係が永遠に続いて欲しいと願った。



「お土産もあるぞー。その前にエルザだな」


パパは俺と姉ちゃんを抱きかかえリビングに入って行く。


「エディットおかえり」


「ただいま。先に報酬を渡しておくよ」


そう言ってドカっと硬貨の入った袋を置く。


「多くない?」


「ダブルヘッドロックベアが居てな、ロランが無傷で手に入れてくれた」


「さすがね。ロランには多く渡してあげたの?」


「6割な。残りを1割ずつ分けた」


「それでもこの量・・」


搾乳の報酬が1人3銀60銅(馬、馬車、食費は商会持ちである)

ベアの分配金が1割で28銀(変異種は希少で無傷だったので2金80銀)

障害排除の報酬は平等に分けて2銀60銅(ウルフやベアは一律3銀。変異種は10銀)

ウルフの素材は1匹分で8銅程なので、孤児院へ寄付。


※ノルマに達しないとペナルティがある。一般的な日給は、職種にもよるが50銅~。アルバイトは30銅~。


「パパ、だぶるへっどろくべあってつよいの?」


「強いぞ。魔獣と言っても良いぐらいだ」


「パパよりつよいの?」


「どうだろうな。倒せたとしても俺も無傷では済まないな」


それを無傷で手に入れたって、チートだなあのショタコン


「ほかにも何かいたの?」


「ロックウルフの群れが居たな」


パパに質問攻めしてるとママが割って入る。


「質問は後々。まずは食事にしましょう」


「「はーい」」


そう返事し、俺と姉ちゃんは席に着く。5日ぶりに4人そろっての食事だ。


「「「「いただきます」」」」


普段の食事にも文句は無かったが、やはり調味料の威力は絶大だった。たらふく食べた後、姉ちゃんと2人でパパに甘える。


「ねえパパ。フェルヴさんお家に来ないかな?」


姉ちゃんが聞いてみる


「うん?どうした?」


「アオキ・セイジ・ロバルデューをエディと読んでるんだけど、お話してみたくって」


「ああ。相変わらず引っ張りだこだな」


「相変わらず?」


「パパも子供の頃はそうだったけど、フェルヴが生きてると知って会いたがる子供が多いんだよ」


ママも苦笑いしながら話す


「フェルヴは冒険者が本業だけど、語り部みたいな事をしていて他の仕事をする暇が無いのよ」


「国中から呼ばれるからね」


姉ちゃんがガッカリする


(気の毒だなフェルヴさん・・)


「ま、一度頼んでみるよ。しばらくはこの街に居るはずだから来てくれるよ」


喜ぶ姉ちゃん。ママが思い出したように話す


「そう言えばエディはロランに会いたがってたわね?」


(会いたいのではありません)


「きんだいまほう見てみたい」


「マジックバックも近代魔法で出来てるぞ?」


「うーん。まほうっぽいのが見たい」


パパが思案する


「良いんじゃないのかしら?」


ママが援護してくれるが・・


「問題は何処で見せるかだよな」


(何処でとはどういう事だ?)


「おうちで見れないの?」


「下手にファイアーボールなんか撃たれたら、家どころか周りの森ごと消滅するからな」


(あかん奴だ・・)


ママが思いついたように話す


「あそこはどうかしら?一昨年の魔獣騒ぎがあった所」


「植林も済んで、やっと復活の兆しが見えてきたとこだぞ。今度こそジャンが倒れる事になる」


ママも困った顔をする


「魔獣騒ぎって?」


姉ちゃんも知らない様でママに聞く


「一昨年の年末に第3森林で魔獣が出たかも知れないって街中で騒ぎになって冒険者が集められたの」


「ママも行ったの?」


「ええ。エディットは仕事中だったし街に残ってた冒険者でね。それで確かに魔獣らしき物は居たんだけど・・」


間を置いて


「ロランが上空に作った魔法陣からファイアーボールを打ち込んだら、山一つ分の森が消滅しちゃって・・

獲物は塵も残ってないし森は消えてるし、遠目だったから魔獣が何だったのか分からなくて、討伐した証明も出来なかったのよ。

それで皆タダ働きよ。その時にロランが近代魔法を使えるって知ったのだけどね」


パパが続ける


「その惨状を見たジャンが3日寝込んだんだ」


※ロランが鉄板のままな理由である


「・・・・・」


(それって隕石レベルじゃね?)


「さてどうするか。一応ロランには聞いてみるが?」


頷いておく。危ないが逆に興味を惹かれる



ーーーーー



パパが来て普段通りの生活に戻り10日程経つ。フェルヴさんは月末に来てくれる事になった。あと一週間ぐらいだ。


ロランは明日来る事になった。すぐに来たいと言ったそうだが、冒険者の仕事が出てからになり、それが昨日だった様だ。

緊急では無いので明日にパパも休みを取り、一緒に行く事になったのである。


今は姉ちゃんと魔法陣の練習をしている。もう覚えたが油断はしない。


「ねえちゃんのまほうじん光ってる?」


「魔力で書いてみたの」


まじ?まだママに教えてもらってないはず


2人して魔法陣をじっと見つめる。詠唱は無いので何も発動しない


「ねえちゃんてんさい?」


「エディも出来ると思うよ」


魔力の使い方自体がよく分からない。これは前世の記憶がある事が弊害になってるかも?


「わかんない・・」


姉ちゃんが指を動かしながら考える


「こうしてみたらどうかな?」


そう言いながら指示する。いつもの練習の様にしゃがんで人差し指を地面に向ける。


「これぐらい浮かしてみて」


指先を地面から10cmぐらい離す。


「これで地面に指が届いてると思って書いてみて」


なかなか出来ない。出来無さ過ぎて集中も出来なくなる。

そしたら姉ちゃんが後ろから俺を抱き寄せる様に包んで、人差し指を向けているグーの部分を握ってくれる。


「これで指が届いているって考えて」


なんかどうでも良くなった。姉ちゃんの体温を全身で感じている・・それだけで幸せな気持ちだった。

ほんとに何も考えられなくなり、指だけを見ていた。そうしたら姉ちゃんが俺の手をゆっくりと動かす。



指がなぞった跡がキラキラ光っている。魔力だ



ゆっくり時間をかけて魔法陣を書いて行く。姉ちゃんの手の動きを感じながら指先を見つめ続ける。

時間をたっぷり使って書き終えようとしていた頃、いつの間にか姉ちゃんの手が離れてて俺一人で書いていた。


ああ・・ママが言っていた『どこにでも魔法陣は出せる』とはこの事だ。


今は指先にある地面だけど、地面である必要は無いんだ。

自分の魔力で書く魔法陣は、その事を理解させてくれた。


「「できたー!!」」


姉ちゃんに思いっきり抱きついて喜んだ。滅茶苦茶嬉しい


「これで一歩アオキ・セイジの物語に近づいたね!」


姉ちゃんがそう言う。なるほど、姉ちゃんのモチベーションはそこにあるのか。

俺?姉ちゃん1択だ。


忘れないうちに二人で復習を始める。3回程書いて洗濯物を入れに行く。まだ急いで書くと魔力の線が途切れるのだ。



ーーーーー

第3章、アンガス(要約)


アオキ・セイジは次々と新たな工場を建てて行く。多くの職人と強力な魔法のおかげで尋常ではない早さだ。


※現在、工場はアオキや国王に協力した貴族達の領地に移転されています。


アオキの元に集まったこの国の冒険者達も、彼の指導で現代魔法と呼ばれる事になる新たな魔法を覚える。

近代魔法とは違い、現代魔法は殆どの魔法使いにも覚える事が出来た。魔族の古代魔法には劣るが、これまでとは比べ物にならない。


そうして作られて行く街には使節団が沢山来ている。国内から海外まで数百人規模で訪れるのだ。


しかし友好的な者ばかりでは無い。砦が存在しない為、頻繁に妨害される事になる。

だが熊獣人で銀板の冒険者アンガスは、地道に活動を続ける。自国の難題をアオキが解決した事で、彼に恩を感じていた。


アオキが表の活動なら、アンガスは裏だ。アオキを排除しようとする者を単身で突きとめ、自ら国外まで出向いて行く。


常に危険を感じながらアオキの為に必要な情報を集めて行く。

彼を排除しようとする理由は、殆どが経済だった。一言で言えば仕事が奪われるのだ。


「必ず悪い様にはしない」こう断言し、逆に協力を求めてきたが、この問題は国内でも起こりえる。

アンガスはシルヴェールの父、ジェラルド・ロバルデューに国王との協議を申し込めないか相談した。


発言力を失っていた王族は、ラフィッド・ウォルゾン公爵が中心になり立て直しを進めている最中。

そしてウォルゾン公爵も後ろ盾にアオキが必要だと感じていた。両者の思惑が一致し、裏で事前交渉を始める。


※ウォルゾン家はレリーナの実家です


アンガスはこの交渉に技術の選別も入れ、近代化技術の公開を一旦止める様にアオキに進言する。

あっさり受け入れるアオキ。自主的に動いてくれる仲間達に口を挟むつもりは全く無かった。


そして事前交渉を知り、これまで権力を振りかざしてきた貴族達が憤慨する。

アンガスに手を貸したアオキに友好な国の策略に嵌り、私財も権力も削がれてしまった所に王権の復活である。


アンガスは交渉の邪魔をさせない為に動き出す。だが殺してしまうだけでは意味が無い。

冒険者ギルドの改革に乗り出していたフェルヴが協力して、貴族達の不正や犯罪を暴いていく。その内容は事前交渉に持ち込まれた。


そしてアンガスが暗殺されるその日、ブリジッド・ディエ・ラ・レヴィネール国王とアオキ・セイジの会談が実現した。



アオキは世界を渡り歩いて理想に描いた国の実現に1歩近づき、国王は傍若無人な貴族に対抗する武器と技術だけでなく、強力な外交手段も得る。

ーーーーー



翌朝。パパがロランを迎えにギルドへ行っている。

初めて見る冒険者活動。姉ちゃんと今か?今かと待ち続ける。


「まだかなー?」


「エディ、さっき出たばかりだよ」


待ち時間って妙に長いよね。そう思ってると姉ちゃんが魔法陣を書きだした。俺も練習する。


今回、パパは鉄板冒険者の指南役として向かう事になる。フェルヴさんやガルべスさんもよくやっているらしい。


2つ目の魔法陣を書きだした時、馬の速足が聞こえてきた。


「パパかな?」


「すごい急いでる?」


真っ黒なローブを来たロランが、濃い灰色の馬に乗り庭の中まで走らせてきた。


そして飛び降りる


ヤバいと思った



いきなり抱きかかえられ、ファーストキスを奪われた

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