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異世界転生(仮タイトル)  作者: キコリ
8/22

第08話「ロラン・リンドレイ」

今日は図書館から本を借りて来て5日目。パパが帰ってくる日だ。


アオキ・セイジ・ロバルデューを読んでると他の事をする時間が無くなるので、寝る前に姉ちゃんに読んでもらっている。

国語辞典や歴史書にも夢中になってしまうので、まだ2章の途中までしか読んでない。だが日常の会話が弾む事になった。


「フェルヴさんってすごい冒険者だったんだね」


姉ちゃんはこの本を、とても気に入っていた


ーーーーー

2章、冒険者(要約)


アオキが他の冒険者に魔法を教え、シルヴェールのパパが後見人になって国内で鉄板の冒険者になっていた。

しかしシルヴェールが彼を意識してる事を知ったレイモンド子爵が怒り、ロバルデュー一家が追いつめられる事になる。

アオキが手引きし、まだ魔獣が溢れていた現在のシルヴェール街の所に、大木でロッジを作り立て篭もった。


貴族の殲滅は簡単だが何も変わらない。そう思ったアオキは今までに知り合った冒険者達に援助を申し込む。

この国を根本から変える為、近代都市を作り貴族の意識を変えたいと言って、彼にしか使えない転移魔法で頼んで回った。


※彼の行動は、神様との約束を果たす事でもあります。

※転移魔法。緯度、経度、海抜が詠唱に必要な上、軍事的には驚異なので詠唱を一切公開しない。


アオキの友人である冒険者と職人、合わせて74人に加え、最も親交のあるフェルヴが冒険者や職人、作業員を200人程集める。

さすがはエルフと言うべきか、魔王国からもアオキの目指す近代都市の完成まで技術を持つ80人の魔族を貸してもらった。


さらにフェルヴは獣王に申し込み、移住者としてガルべスの祖父である冒険者アンガスを筆頭に800人程がこの地に向かう。

開発されていく街の噂を聞いて、国内からも居場所の無い冒険者や住民が集まってくる。


そして世界を揺るがす事になる近代化の技術と魔道具、現代魔法と呼ばれる様になる改良された魔法、近代魔法と呼ばれる事になる新たな魔法を公開した。


アオキの技術を独占しようと狙う国々から排除しようとする国、過去に恩を受けた事で彼を守ろうとする国まで。

それらがレヴィネール王国内で入り乱れ、国内の貴族達は利用され、騙され、迫害されて疲弊していく事になる。


他国に対抗できるのは王族かアオキだけ。まともな貴族はアオキに付くか、力を無くしていた王族の復権を目指した。

ーーーーー


「うちに来てくれたらはなしを聞いてみたいね」


姉ちゃんとフェルヴさんで盛り上がる。生き証人が居ると言うのは素晴らしい。

そんな話をしてるとママが帰って来た。今日はいつもより早い時間だ。


「ただいま」


「「おかえりー」」


「アオキ・セイジ・ロバルデュー、ちゃんと読んでるみたいね?」


「うん、おもしろい」


「素敵な人が沢山出てくるよね~」


姉ちゃんが乙女の顔になってた


「ふぇるぶさんって家に来ないの?」


「呼んだら普通に来るわよ?エルが2歳の時も来てるのよ」


「えー、覚えて無い」


普通はそうだろう。俺は前世の記憶があるから違うだけで


「このまえもっとはなしたかったな・・」


「パパが帰ってきたら聞いてみる?」


「うん、お話したい」


姉ちゃんも乗り気だ。


さっそく夕食の準備に取り掛かる。今夜は豪勢なので、下ごしらえから大変だ。


「なにこれ?」


瓶の入れ物に色々入った物がある


「調味料よ」


「!」


心の中でガッツポーズ。3年弱だが生きて来て一番嬉しいかも知れない。


(ソースか醤油っぽいのがある。これは胡椒だね。こっちは赤い・・一味唐辛子?あ、これはマヨネーズ・・・あったんだあ)


嬉しそうな俺を見てママはどや顔を見せる。


「エディも3歳になるし、これからは調味料も使って行くわよ」


「どーゆーこと?」


「子供が小さい内は調味料は控えた方が良いって言われてるのよ」


(誰だよそんな事言った奴!)


憤慨しながらも、これから食べられるとなると嬉しくなる。姉ちゃんも俺を見て祭りで食べた肉を思い出した様だ。


「こしょうってお祭りの時のだよね。楽しみ~」


母子3人揃ってニコニコしながら下ごしらえする。そしてママの生活魔法を見た時にある疑問を思い出した。


「ねえママ」


「なあに?」


「きんだいまほうってママは使えるの?」


ママが固まった


「ちょっと・・無理ね・」


「むずかしいの?」


「そうね。訳の分からない計算とか、どうしてこの数字になるのとか、とてもややこしいわ」


「すうじ?」


「ええ。詠唱の殆どが何かの計算よ。なんとか率とかこの量になるとか速度とか。

これは月の引力とか言われた時は、何を言ってるのかさっぱりだったわ」


前世の公式を思い出す。と言っても大した事は知らない。立方体までが限界だ。


(アオキ・セイジさん、もしかしてすげー頭が良かった?)


※その通りである。魔法神がタブーを冒してまで手に入れた存在である



「だれか教えてくれるの?」


姉ちゃんが聞く


「冒険者ギルドに指南書があるわよ。理解できる人には積極的に教える事になってるの。教えてくれるのは商会の魔法士さんよ」


俺も聞いてみる


「ぼうけんしゃではいないの?」


「ロランが使えるわね。それも信じられないぐらいのレベルで」


忘れていたショタコンを思い出した。


「え?あの人すごいの?」


「レリーナから少し話を聞いてるけど・・・聞きたい?」


「うん」


そしてロランの話を聞く事になった


ーーーーー

ロラン。魔法国家グリモワールの跡に作られたアルファティ教国生まれ。力のある伯爵の妾の娘である。

幼い頃から聡明で、伯爵に気に入られ娘として5歳で学園に入りトップ成績。しかし周りからは腫れ物扱いされ友達は一人も居なかった。


6歳の時、学園の魔力検査で膨大な魔力を持っている事が分かり、教会に軟禁される。

教会での暮らしは、近代魔法を叩きこまれる毎日。使用人も何人も付けられるが贅沢は一切出来なかった。


魔法国家の跡地だけに、かつては魔法発祥の国と言われていた。古代魔法で作られた魔道具から復元した魔法が一般的だった。

だが近代魔法と復元した魔法の詠唱を改良した現代魔法の登場で、アルファティ教国は発言力を失っていく。


教皇達はロランに第二のアオキ・セイジの夢を見た。再び過去の栄光を取り戻したいのだ。

現在は魔法発祥の地ロバルデューが一般的である。その上、存在しない神を祀り上げてしまった事も後に響いて来た。


そうしてロランは10年近く教会の中で近代魔法の勉強をして過ごし、公開されている近代魔法を全て覚えた。


だが一つ問題を抱えてしまう。精神的に、人として根っこの部分が成長できなかったのだ。



年相応の人格でもあるが性根はまだ人恋しい6歳で、肉体は思春期真っただ中。教会に訪れていた公爵家の息子と、少し話しただけで恋してしまう。

自制出来ずに5歳の男児に襲いかかり、べろチューしてる所を見つかり軟禁。それを繰り返す事に。


皇族にも幼い子供がいる。これは堪らないとロランを伯爵に返す事になった。

皇族専属の魔導士への道が断たれ、その理由もすぐに広まってしまう。


才能はあっても彼女を雇う勇気のある商人や貴族は居なかった。あまりに強すぎるので軍も躊躇する。

そして伯爵からは家名を名乗る事を禁止される。後見人になるのも恥だとされ、冒険者への道も断たれてしまった。


他人と、特に男児と会わせられないと、真っ黒なローブだけを渡され母の自宅に監禁される。

近代魔法を自在に操れる彼女は、ロバルデューならアオキ・セイジの様に普通に暮らせるのではないか、そう思うようになっていく。


そして、ロバルデューに行きたいと伯爵に告げる。厄介払いなのか親の情けか、使い古しの馬車と灰色の馬を渡された。

この馬は賢いから、方向だけ示して任せれば良いとだけ言ってくれた。


道中はとても危険だ。普通は冒険者を雇って護衛してもらうが、彼女には必要無い。

襲って来たものは全て瞬殺する。馬の為である。


無事にシルヴェール街に付いた彼女は冒険者ギルドで途方に暮れるが、フェルヴのおかげで無事に冒険者となった。



※言語?問題無い。近代魔法の指南書は全て共通言語を使われており、それを書いたのはフェルヴです。

ーーーーー


ロランの話を簡単にだが聞いた。彼女の居場所が母国に無かった事は分かった。

国に振り回されちょっと可哀想だなと思ったが、あの性癖はどうにかならないものか?


「きんだいまほう見てみたい」


「そお?パパが帰って来たら聞いてみようか?皆しばらく休むと思うから機会はあるわよ」


「うん」


アオキ・セイジがすごい事をしたのは分かった。けど近代魔法ってそれほどなのか見てみたいのだ。

夕食の準備を進めながらパパを待つ。ママの見立てだと完全に日が落ちた頃に帰宅するらしい。



たった5日会って無いだけなのに、とてもワクワクする。自分が3歳目前の子供なんだなあと実感する。



ーーーーー



冒険者Side


宿営地を出発して半刻ほど、目前に2台の馬車が現れる。次のチームだ。

ガルべスが手を振ると相手も答えてくれた。そして休憩ついでに情報を提供する。


「早かったな。子牛共が喜びそうだ」


とガルべス


「そんなに懐いたのか?」


そう聞くのはリーダーのベテラン冒険者、グラーク


「特に馬共とな」


「搾乳の邪魔をするか、馬達に突撃するかよね」


レリーナがクスクス笑いながら答える


そんな二人を憧れの目で見つめる新人冒険者二人。

どちらもまだ少年で、フェルヴ・ガルべス・レリーナは若い冒険者達の憧れである。エディットは知名度がいまいちである。



「ダブルヘッドか・・ヤバかったな。まあロランが居れば問題無いか」


フェルヴ達4人はロラン抜きでも十分な戦力のパーティーだが、相手が単体なら何であってもロランが軽く仕留めてくれる。


「今回は働きすぎですよー」


ロランが不貞腐れる


新人の片割れが訊ねる


「ロランさんって強いんですか?」


「近代魔法を片手間に使う程だぞ?」


とグラーク


「でも、良い噂聞きませんよね・・」


声が小さくなっていく新人


「まあロランが役に立つ時はヤバい時だ。役立たずで済んだ方が良い」


顔を見合わせる新人


フェルヴは牛達の情報を伝える


「牛の群れは140頭程だ。明日遅くには少なくとも400頭は到着する。

ウルフの群れは3つ。ダブルヘッドに相当追われたんだろう、それぞれ4~5頭の群れだ。ベアは居ない」


「助かるぜ。こっちは若いのが2人居るからな。お前ら、ウルフの前衛は任すぞ」


「「マジっすか」」



ーーーーー



時間も既に5刻を過ぎており、日も沈みかけた頃に冒険者ギルドへ到着する。

デノーズ商会の職員が荷物の確認と受け取りを済ませる。レリーナの予想通り、ダブルヘッドロックベアはデノーズ商会が即金で買い付けた。

討伐依頼は出ていなかったので、ギルド側も文句は無い。



臨時収入も手に入った一行は、それぞれ家族の元へ帰って行く。ロランだけはギルドの宿舎である

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