第04話「冒険者ギルド」
今日はパパが、冒険者の仕事で5日間出かける日。
いつもより早く朝食と洗濯を済ませ、我が家を出発した。
2回目なのもあって、わき目もふらずに歩き続ける。
短い歩幅で一歩一歩確実に・・
問題無く図書館の前まで来た。あっさりと着いてしまった。普通に歩けて喜んでいる俺。
「まだ開いてないね」
と姉がママに聞く
「図書館が開くのは1刻半ぐらいよ」
「1刻半?」
「この先の広場で分かるわ」
所々広場になっている場所に、日時計の様な物がある。やや半円な石に5つ刻みが入っている。
前世の時間を思い出す。中央が正午、単純に1刻が2時間って所かな?祭りの時は人が多くて気付かなかった。
さらに進むと祭りで王国騎士団が居た広場に来る。そこの一角に冒険者ギルドがあった。
子供も含めて冒険者っぽい人達が居る。
「しゅごい・・」
「おっきい・・」
そこにはバカでかい馬と馬車が2台あった。
「エル!エディ!」
リーサが呼ぶ
「リーサ久しぶり」
姉が手を取って喜ぶ。俺と同じぐらいの歳の金髪イケメンが後ろに居た。
「弟よ。レノンていうの」
俺とレノンが見つめ合う。お互い姉の服を掴んでいる。仲良くやれそうだ。
近づいて話かける
「エディ。もうすぐ3さい」
「レノン。3さいになった」
なかなか会話が成り立たないが、お互い姉の服に掴まってにっこりする。
「エルちゃんとエディ君は始めましてね。私はレリーナよ。うちの子達をよろしくね」
リーサのママが話しかけてきた。銀板の保持者だ。長身で金髪美人すぎて俺と姉ちゃんは固まった。
「「よ、よろしく」」
今度は熊の様な大男が話しかけてくる
「エディット!お前んとこのチビか?」
「ああ、エルとエディだ」
「ハッ!俺はガルべスだ。熊の獣人だ。親父で困った事があったら俺に言え」
(熊だった)
大きな手で頭をわしわしされる。と言うか顔全体をわしわしされる。手がでかい。
ガルべスはエディットと同じく銅板の冒険者カードを持つ。
「レリーナさんが持っているのは杖なの?」
姉がビビってレリーナさんに話題を振る
「ええ。魔石を取り付けた杖を使うと魔法の威力が上がるのよ」
「長い方が良いの?」
「長さは関係無いわ。これは仕込み杖になってるの」
と言いながら刃物を抜く
「近くに来たらこれでぶった切るの」
危ない人だった。冒険者って癖が強いのかなと思ってたら優男が話しかけてくる。
「エルとエディか。お父さんには世話になってるよ。俺はフェルヴだ」
「世話になってるのは俺の方だろ?エル、フェルヴはこう見えて俺よりずっと年上で今回のリーダーだ」
(それってもしかして?絵本にも出ていた?)
「こいつはエルフだぜ」
と熊。フェルヴはレリーナと同じく銀板の保持者。
姉も興味を持った様だ
「フェルヴさんは魔法使いなの?」
「いいや。弓とボウガンだよ」
(ボウガンあるの?)
「フェルヴはちょっと変わった魔法を使えるよ。魔獣の位置とか分かるんだ」
とパパ。異世界お約束の探知魔法か?
「精霊の声を聞くだけだよ」
違った。てか精霊がいるとか、ほんと夢も希望もある世界だな。
もう一人の女性も話しかけてくる。黒のローブをすっぽりかぶった銀髪の怪しい人だ。
「エディくんよろしく。フフ」
怪しい目で見てくる。怖い
「エルちゃんもね」
「「よ、よろしく」」
さりげなく左の肩を抱いて引き寄せられた。本能が関わってはいけないと叫んでいる。
レノンが居ないと思ったら、レリーナさんがママと会話しながら2人の間に隠していた。
「あー、こいつは子供好きなだけだ。名前はロラン。一昨年この国に来たんだ」
とパパ。絶対違うぞパパ。この人は特殊性癖持ちだ。
「ろ、ろらんさんって若くみえるね」
「ありがとう」
ロランはこの国に来て2年目で、冒険者カードは鉄板である。将来エディにとって重要な人物になる。
今度は右手でがっつり抱かれた。やばいと思ったら助け舟が来た。
「リーサ!エル!」
犬獣人のレミが来た
「「「レミ!」」」
勢い良くレミの方に駆け寄る。脱出できた。
「もう時間なのね」
とリーサ。姉が聞く
「何の時間なの?」
「学塾だよ」
どうやら新学期が始まっているらしい。レミは3学生、リーサは4学生になり、思いのほか話し込んでいた。
他に獣人の男子が2人居る。
「困ったなあ。レノンを送ってあげないと・・」
リーサが困ってるのでママが提案する
「私がレリーナのお家まで送るわよ?」
「お願いします」
とリーサはお辞儀する。そして皆出発する事になった。
レミとリーサと男子は学塾へ。ママはレノンを送った後お仕事。パパも冒険者の仕事だ。
「それじゃあ行くか!」
と熊。姉ちゃんは心配している。
「パパ、気をつけてね」
「ハッハー、このメンバーだからな!心配しとけ」
(安心できねー)
「大丈夫だよ」
パパが優しく言ってくれる。無事に帰ってきてね。
ーーーーー
「エディ、図書館に行く?」
「開いてるの?」
(1刻半ぐらいと言ってたな)
「う~ん、冒険者ギルドで聞こうか?」
やった。ギルドに入る口実ができた。
ウェスタンな扉を押して入る。依頼は子供でも出来るから簡単に入れる様になっていた。
「あら、かわいいお客様」
「エルザさんの子ね。いらっしゃい」
美人な二人の受付嬢が話しかけてくる。さっきまで表に居たのを見ていた人は、うさ耳の兎人族だ。
「あの、図書館ってあとどれぐらいで開きますか?」
「そうね・・開館は1刻半だから、あと半刻ぐらいね」
(1刻目が8時ぐらいとして、9時ぐらいに開館か)
「そう・・」
姉が迷っているので、俺があざとく話かける。
「ここでけんがくしてもいいですか?」
「かわいい~~」
「いいわよ。ずっと居ても良いのよ」
中を見て回る事になった。まず始めにお約束の依頼ボード。男女の冒険者さんが居る。
横から見ていると、冒険者さんが自分たちの前に俺と姉を入れてくれた。
「「ありがとう」」
「依頼書が読めるかい?」
「う~ん。すこし」
「すごいね。さすがエルザさんの子達だ」
この人も見ていた様だ。
「君たちのお母さんには世話になっているんだよ」
「パパは?」
「っ!・・お、おとおうさんの方もね・・」
(絶対ウソだ)
相方っぽい女性が苦笑いしながら話す。
「エディットさんは普段会う機会が無いですからね。冒険者と関わる本業でも無いし。
エルザさんが居る衣料品店は冒険者ご用達だし、色々相談に乗ってくれるのよ」
ママは結構有名な様だ。二人に手を振りながら移動する。待合室みたいな広い場所にきた。
カウンター越しに、いかついおじさんが話しかけてくる。
「おチビちゃん、食事かい?」
「け、見物です!」
姉ちゃんはビビり症な様だ。話題を変える
「他にぼうけんしゃの人いないの?」
「ああ。普通は日の出と共に来るよ。この時間だと副業冒険者だ」
「あの人はふくぎょうなの?」
さっきの二人だ。
「あー、あの二人は新婚だ。夜にハッスルしすぎて遅くなったんだぜ!」
二人が照れている。姉ちゃんは分からない様だ
(照れてるってのはそういう事か)
おじさんが二人に話かける
「依頼先でちちくってんじゃねーぞ!」
「「しませんよ!」」
受付の二人がクスクス笑ってる。受付を見に行く。赤い顔をした二人も依頼票を持って来た。
「ええ~こちらですかあ?人目がありますよお?」
「仕事なんで。お願いします・・」
「第三森林での薬草採取とか良いのじゃないですかあ?人目を気にせずにい・・ムフフ」
「あははは」
うさ耳のお姉さんがからかい、もう一人の受付嬢が爆笑している。
二人は黙ってサインし、依頼票を持って出かけて行った。末永く爆発して下さい
ーーーーー
冒険者ギルドで1刻ほど世話になっていた。
今はうさ耳の受付嬢ティアさんに、膝抱っこされてる状態だ。子供万歳
「おや?嬢ちゃん、息子が居たのかい?」
知らないおじさんが依頼にやってきた
「ええ。エディって言うの」
「そうかあ。こりゃ男共が悔しがるだろうなあ」
ティアさんはとても可愛い。スタイルも良い。そしてうさ耳の破壊力がすごい。
「もうすぐ3歳になるし、文字を教えてるのよ」
実際教えてもらっている。図書館に行く話をしていたらそうなったのだ。
姉ちゃんはもう一人の受付嬢アリシアさんと世間話に花を咲かせている。
「子は宝だ。しっかりと教育してやんなよ」
「もちろん!大切に育てるわ」
(・・・・・)
この街に居ると子供は大切にされてるのが実感できる。ロバルデュー領だけかも知れないけど・・
て言うか、おじさん!わかってるよね?信じて無いよね?