現在の状態
オフィスに戻るや否や、ボスの前に整列した。そこには外回りから帰ってきた双子の旭玲子、陽子姉妹もいた。
「相模君は気づいたかもしれないが、今裏世界に異変が起き始めている。恐らく扉が開いてから現世と繋がっている状態が悪影響を及ぼしたのだろう。実際にどのような状況かはわかりかねるが、ニークの駆除と扉を閉めるための研究はより必要になることは確かだ。これからは外回りが多くなる。しっかりと戦闘を身につけるように」
「ニークが増えるっていうことですか?」
「裏世界から逃げ出そうとするニークが多く出てくるだろう」
「裏世界の状態を治すことって出来ないんですか?」
「恐らく扉を閉めれば徐々に復興されるだろうと思う」
「扉って本当に閉まるんですか?」
紅井さんの最後の質問には全てが詰まってるような気がした。普通開いた扉が閉まらないことは無い。しかし、異能力者を大勢集め国が最優先して研究しているのにもかかわらず閉じていない扉には不安しかない。
「ああ。閉め方はある。それが見つかるかどうかは私たちの仕事ではない」
それもそうだ。NEAの仕事は研究ではなく駆除だ。無駄な心配をしている余裕はない。
「とにかく、自主的に戦闘の訓練をするように」
そもそも扉が閉まらなくなったのはつい最近のことだった。それまでは扉が開かないようにするための組織であった門番が、ただ扉の前で変化が起きないことを祈っていただけだった。扉が開きっぱなしになってから門番は規模を大幅に拡大し、全国から異能力者を集めた。この先未来もし扉が閉まったとしたら、全て悪夢として片付けられるのかもしれない。そう考えると自分の仕事も何もかも全て扉が閉まるまでの事なのだ。いつか来る扉が閉まる日までのカウントダウンが始まった気がした。これが終わるときまで決してミスを犯してはいけない。
頬を叩き気合を入れ直した。大きな窓の外からは微かに赤みがかった都心の街並みが見渡せた。深く息を吸い、吐いていると、玲子さんが声を出した。
「ニューヨークの門番本部に誰かがクラッキングをしかけたみたいです」
「本当か」
「今本部の方々が逆探知しています。あ、被害は無さそうです」
この事件はとても重要なことであることがすぐにわかった。国と組織の人間以外知りえない門番のことを知っており、さらにこのタイミングだ。裏世界の状態ないし扉が閉まらないことに人間が関与しているとなると大事件である。
「さあみんな。忙しくなるぞ?」
ボスの言葉も重く首の根にのしかかった。




