強敵の戦略
「こっちよ」
「どこ行くんですか?」
「第一層は扉の近くで入り組んでるの。外に出るにしても中を動き回るにしてもこの“核”の中では難しいわ。恐らくこの“核”を抜け出すために私たちから逃れようとしてるのよ」
「でも、なんでそんなこと……?」
「それはわからない。でもここから抜け出す道は一通り。だからこのまま進めばいるはずよ」
「もう外に出たって言うことは?」
「核外のセキュリティはニューヨークにある本部と同じものよ。それにもし出れたとしてもその時は確実にボスたちが動くはず」
入り組んだ廊下を進んで行くと、壁に反響した何かが聴こえてきた。
「今のって……?」
「間違いなくガザリグの鳴き声よ。さあ、早く行くわよ!」
「は、はい!」
紅井さんはスピードを上げ走っていった。それについて行くと、開けた場所に出た。核と核外の境に当たるエリアJだ。そこには大柄なガザリグが二体と、その二体さえも小さく見えるほど大きなガザレグリムがいた。三体は壁に攻撃をしていたみたいだが、少し傷が入る程度で外に出るには程遠かった。
「ここまでのようね。堪忍なさい!」
紅井さんがそう言うと、間発入れずに二体のガザリグが襲いかかってきた。何とか大剣を取り出し攻撃を防いだが、能力は直ぐに発動できなかった。さっきの三体は紅井さんが能力を発動するのに要する時間も計っていたのだ。
二体のガザリグは続けて猛攻撃を仕掛け、紅井さんは必死に防いでいた。そこに後ろからガザレグリムが近づき襲いかかろうとしていた。紅井さんはそれに気づき咄嗟に持っていた大剣をガザレグリムに投げ付けた。すると腹部に刺さり黒い液体が飛び散った。しかしそれで怯むことなく、ガザレグリムは剣を抜き取り、それを武器にして攻撃を始めた。恐怖心を振り払い一体のガザリグに向かったが、無視され距離を離された。劣勢な状態が続く中、突然二体のガザリグが紅井さんの両端に周った。そして前方からガザレグリムが大剣を振り下ろしてきたかと思うと、それを避けるために跳んだ紅井さんを狙い、ガザレグリムは謎の弾を打ってきた。まずガザレグリムの手のような部位に傷をつけ剣を落とさせてから紅井さんを押し、弾丸を避けた。その時間およそ五万分の一秒だった。落ちてきた剣を紅井さんは拾い上げた。
「さっき戦ってなかったからって弱いと思われるのは癪ですね」
「そうね。私もさっき使った能力の使い方しか出来ないと思われたら癪だわ」
紅井さんの髪が青くなったかと思うと、二体のガザリグに触れて凍らせ、チョップすると砕け散った。最後にガザレグリムの頭から剣を突き刺し足元まで切ると、力尽きて倒れた。
「やりましたね」
「そうね。相模。その……」
「なんですか?」
「……さっきはありがと」
「最低限のことをしているだけです。紅井さんに怪我してほしくありませんから」
「なっ、何言ってるのよ! バカ!」
「ご、ごめんなさい」
NEAのオフィスに帰ろうとすると背後で気配がした。振り返ると倒れたはずのガザレグリムが起き上がっていたのだ。
「な、なんで!?」
「ガガギググゲギゴガグギゲゴガグ」
「ちょっと、何よこれ」
ガザレグリムの様子はおかしかった。しかしその様子を見ているとそれが何かわかった。
「荒田さんですか。驚かさないでください」
「なんだ分かっちゃったか」
ガザレグリムはにこやかに笑い言った。
「本当に殺すわよ」
「ちょっとやめてよー。死んだらアリスちゃんで遊べないじゃん」
「荒田さん、洗脳って目を合わせないとできないんじゃ?」
「できないことは無いよ。難しいけど。まあ感情がない生物なら余裕かな」
「まさかあんた遊びに来ただけじゃないわよね?」
「もちろんもちろん。凉くんは気づいたかもしれないけどボス曰く今大変なことになってるみたいなんだ。だから十秒でオフィスに戻って。じゃあねー」
ガザレグリムは再び力なく倒れた。




