先輩の余裕
エリアA第一層に繋がる非常ドアの前に来た。そのドアの奥から微かにこの世のものとは思えない唸り声が聞こえてきた。もちろん中にいるものもこの世のものでは無い。
「相模。ドア開けるよ。準備はいいわよね?」
「もちろんです」
そう答えると、紅井さんは勢いよくドアを開けた。すると中には三体のガザリグがいた。ガザリグを見たのは初めてだったが、とてとみてはいけないものを見たような気分になった。全身真っ黒で歪だが確かに二足歩行をしている。人間における頭部には目と口のような穴があったが、中は真っ白で淡い光を漏らしていた。さらにその頭からは長く伸びた角のようなものが付いていた。その姿はどこか不鮮明な印象を受けた。
「ビビってるの?」
「驚いただけです」
「まあ、最初は見ときな」
紅井さんは手で後ろに下がるよう押してきた。一歩下がり様子を見ようとすると、紅井さんは大剣を構えた。そして表情が変わり髪の色が赤くなってきたかと思うと、大剣が強烈な熱を帯び始めた。
「子供たちは三秒で片付けるわ」
ガザリグは三人まとめて紅井さんに襲いかかった。それに対して紅井さんは大剣を遠心力で大きく振り三体全てを一度に真っ二つにした。ガザリグの肉片が転がり、そこら中には黒い血のようなものが飛び散っていた。紅井さんは息をつくと、部屋にこもった熱も無くなり髪色も黒に戻った。
「まあ、こんな感じかしら」
「ごめんなさい。あまり参考にはならなかったです」
「そんなこと言うのなら次はあんたも戦いなさい。と言ってもどうやらガザリグはこの三体だけだったみたいだけどね」
「ガザレグリムは……?」
「この三体だけ迷い込んできたんじゃない? ここにはいなさそうだし……」
部屋を見渡したが、いくつものコードが張り巡らされてるだけで、ガザレグリムや他のガザリグの姿はなかった。
「それじゃあ戻ってボスに報告しましょう」
「……わかりました」
「どうかしたの?」
「いや、何か根本的に忘れてるんです……ちょっと着いてきてくれませんか?」
紅井さんの手を引き、部屋を出た。
「ちょっと。どこ行くのよ!」
「ガザリグはIP三千百です。ガザレグリムは恐らくその倍!」
「何、IPって……?」
「Intelligence Point、ニークの知能ポイントのことです。三千百は他のニークより圧倒的に高い」
「さっきあいつら三体同時に死にに来たけど?」
「ガザレグリムは特殊な力をつかえます。もしその中にガザリグに対してテレパシーや読心があったとしたら?」
「あいつら、わざと私に能力を使わせてガザレグリムに情報を流したって事!?」
「三体同時に攻撃することで紅井さんに能力を使わせた。恐らくガザレグリムは何らかの方法で抜け出しています。探し出しましょう」
「そうね」
「それと、能力は本領発揮しないように」
「言われなくてもわかってるわよ」
紅井さんは手を振り払い、前を走り出した。
「着いてきなさい。心当たりがあるわ」




