たったひとつの冴えたやりかた
変人とコミュ障がすれ違ったり違わなかったり第五十話
暗闇の中にビアンカの白い顔が浮いている。黒目がちな双眸に写るロウソクの灯りが、舌なめずりをする蛇の舌に見えた。
彼女から溢れ出す黒い炎のような影が、右に左に揺れる。
日が沈んでから気温は下降する一方だというのに、ボクの背中を脂汗が伝う。
「ふふ、まだかな」
「ヒッ」
なまじ色白で派手目な美人のビアンカは、仄明かりだとただ笑っているだけでも迫力があった。ちょうどテレビで観た怪談師を思い起こす。やだなー、こわいなー。
しかし、多少うざいだけの扱いにくい変人だと思っていたが、まさかここまでのヤンデレだったとは。それに気づかなかったからボクはいま詰んでるんだが。
ミューズは相変わらず腹ペコ省エネスタンバイモードだし、逃げようにも扉はビアンカの後ろだ。
そのビアンカは空っぽの器をボクに見せ、そこにあるらしい限りなく透明に近い無味無臭な料理の感想を、ボクが述べるのを待っている。
勝利条件が見えない。あるのか?
どのタイミングでこのルートに入ったかわからないが、おそらく肯定しても否定しても刺されるやつだ。ビアンカヤンデレルート。バットエンド。もうダメだ。おしっこちびりそう。
それでもなんとか知恵を絞って、この状況を打破する案を三つほど考えてみた。
私にいい考えがある。
「あの、お手洗いは……」
「ないよ」
そっかー、ないかー。オーケーわかった。
あとは即席の火炎放射器を作るか、落ちてくるトゲのついた天井の下にビアンカを誘導するか……だめそうだな。クソ、万策尽きた。
魔法もだめだ。ぜったいにビアンカのが早い。それに、ボクがもたもたしてる間に、ビアンカのあの切れ味のいい魔法がミューズにあたったら大変だ。
あ、ミューズを投げつけてビアンカが彼女に夢中になっているすきに助けを呼ぶ、とかどうだろうどうもこうもねぇ却下だ落ち着けボク。
「暗くなってしまったね」
「はいそうですね暗いです」
ビビリにビビりまくるボクを知り目に、ビアンカがすっと手を伸ばす。
その先には、ナイフがある。
ナイフがある。
ナイフが、ある。
「ビアンカいるかい!」
心臓が五個くらい飛び出た。
扉を叩く音と威勢のいい声が聞こえて、驚きのあまりミューズを抱きしめる腕に力が入ってしまった。
「ふふ、きたきた。ああ、いるよ。少しまっていておくれ。いまランプをつけるから」
ビアンカはそういってナイフ、ではなくその横の皿を持ち上げる。ぶら下がっている紐に蝋燭を近づけると、ほんの少しくすぶってから炎が飛び移った。
「私はロウソクの燃える匂いが好きなんだ。特に理由がないけれど、子供の頃から。なんでだろうね?」
答えのない問いにボクが答える前に、ビアンカはスタスタと歩いて扉を開けた。
扉の前には大きな籠を抱えた体格のいいおばさんが立っていた。
「すまないね遅くなって。いつもなら日が暮れる前にすんじまうんだけどさ、急に三人分だなんて言うもんだから泡食っちまって」
「構わないさ、マーサ。無理を言ったのは私だからね。なに、楽しかったよ」
「そうなのかい?」
ビアンカが振り返りボクを見る。その向こうからマーサおばさんが興味深そうにこちらを覗き込んだ。
「まぁ驚いた。ビアンカあんたが友達だなんて珍しいこともあるもんだと思ったけど、まさか噂のエルフさんだなんて! はー、話にゃ聞いちゃいたがまぁほんと、女神様みたいに美人だよねぇ。ねぇ、エルフさんあのね、ビアンカったらこんなんだけどさ、良い娘なんだよ。仲良くしてやっておくれな」
「あ、はい。どうも」
「まぁ声までなんて可憐なんでしょ!」
ボクのしょうもない返事を褒めちぎってからも、マーサおばさんは大きな声であれやこれやとうわさ話をしたり、ついでに世話を焼こうとしたりする。
「あらいけない、すっかり話し込んじまって。じゃーねビアンカ。よろしくねエルフさん!」
やがて満足したのか、大きな籠をビアンカに押し付けると、マーサおばさんは元気よく手を振って去っていった。
「愉快な御婦人だよね。ここの大家なんだ。いつも私は彼女に夕飯を頼んでいるんだよ」
ビアンカはカゴの中から湯気の立つ器を取り出して、とんとんと手際よくテーブルの上に置いていき、最後に真ん中の器に銀色の蓋をかぶせた。
それから椅子に座ってテーブルに肘を付き両手を組んで、その上に顎を乗せる。
「さぁ、はじめようか」
にっこり笑うビアンカを見て、ボクはとりあえず思いっきり息を吸った。
言いたいことがいっぱいあるからだ。
「すー」
「はっ! 私はなにを?!」
「び……っくりした。おかえりミューズ」
料理の匂いに反応したミューズが正気に戻った。驚いたボクは吸った息をすべて飲み込んでしまった。
「まるで長い夢を見ていたようだわ……ビアンカが空気を読まずに仕掛けたいたずらにマリーがいつもみたいに過剰反応していたような気がするけど……そんなはずないわよね」
「うん、だいたい合ってますね」
そんないつもひとりで大騒ぎしてないだろ。してるな。してるわ。
「面白くなかった?」
「ない! ぜんぜんない! おまえただでさえサイコが堂に入ってるんだから演技でも怖いの! しれっと仕切り直してもボクの心のスコアブックには逆転満塁ホームランなんだぞ!」
「だいたい何を言っているのかわからないけど、何を言いたいのかはだいたいわかったよ。ふふ。そうか、私は間違ってしまったんだね」
「間違ったの!」
「そうか……」
やり取りとしては、いつもとそう変わらなかったはずだ。ビアンカがボケてボクがツッコんだ。それなのに、ビアンカは、それこそ普段の彼女からは信じられないくらい悲しそうな顔をした。
「ごめんね」
「お、おう……」
そして素直に謝った。
そんなことされると逆につらい。なんだかボクが悪いみたいじゃないか。
「ねえ、食べよ? 冷めちゃうわ」
ボクが気まずさに固まっていると、ミューズがえらく落ち着いた声をだす。催促でなく、促すように。
食べ物への執着が強めの彼女が、わざわざ声色を変えたなら、意味のある行為なのだろう。ボクはそれに乗っかることにした。
「大家さん、えっとマーサさんがせっかく作ってくれたから、温かいうちに食べないとね! ね!」
「ああ、そうだね」
なんだかずいぶんと雰囲気のかわったビアンカがうなずく。
それからメインディッシュらしい料理を切り分けながら。ポツポツと話し始めた。
「私はね、友だちが欲しいんだ。でもね、やり方がわからない」
やっぱ居ないのか。と思ったが、前世のボクもそうなのでエラそうなことは言えない。
「マーサさんはビアンカのこと気に入ってるみたいだったけど」
「そう、なのかい? 彼女は私のことが好きなの? 友だちになってくれるかな?」
「あ、いやそういうことじゃなくて」
「ちがうの……?」
えーと、どうすればいいんだ。助けてミューズ。
「いい匂いね」
「キャッシュだ、ベーコンとほうれん草がのっている。マーサの得意料理なんだ」
「おいしそう……ねえビアンカ、あなた、友達をつくるときにはいつもどうしてるの?」
「それは、私と友だちになって、と言うよ。いつもそうする」
ミューズに問われてビアンカがしれっと答える。
うーん。それはどうなんだ。
「いつもおかしな顔をされるんだ。クゾ隊長はね、そういうものは時間をかけてなるものだと言ったよ。でも、わからないじゃないか。相手にとって自分がどんなものかなんて、どうやって確認すればいいんだい? それでいつまで待てばいいんだろうね?」
「おまえ、自分とこの隊長に友だちになって、っていったの?」
「そうだよ」
ヒゲを曲げて困惑の表情を浮かべるクゾさんがありありと想像できる。
コレにはさすがのミューズも答えに窮しているのか、ボクが手に持ったキャッシュとやらに食いつきながら軽く首を傾げる。
「でもビアンカ、あなた、どうしてマリーには聞かないの?」
「え、ミューズには聞いたの?」
「ええ」
「いつ?」
「今朝」
あー、抱きかかえられて広場に顔を出したたあたりか。
「なんていったの?」
「あなたならきっとなれるわ、って」
それは、イエスなのかノーなのか。拒絶ではないのはわかるが。しかしまるで謎かけのようだ。
「ねえ、ビアンカ。あなたはどうして、友だちになってってマリーに聞かないの?」
ミューズが再度と問うた。
「マリーは、特別なんだ。私にできないことをして……私はそんなやり方思いつかなかった。だから、きっとそれだから、皆マリーが好きなんだと思う」
なんのはなしだ。というかちがうだろ。ボクのほうが勝手にくっついてってるだけだ。ボクがあまりにしょうもないから、仕方なく手を貸してくれているんだろう。
「そんな君に、もし嫌われてしまったら。私はどうすればいいだろう。皆が好きなマリーに嫌われてしまったら、私はきっと一人ぼっちになってしまうよ」
「そんなことは……」
ない、と言いかけて、いいよどんだ。わかってしまうからだ。エリートぼっちのボクだって人を好きになることくらいある。そうじゃなくたって、たとえば両親に、あの脳天気でお人好しな両親の口から、望むはずのない言葉を聞いていたのなら、あるいはそうだ、スポーツ紙の一面を飾る程度にはとんでもないことをしでかしていたに違いないし、実際ぼくは、そうなってしまった “彼ら” を見て、言いようもない羞恥心を覚えたのだ。
ボクは恵まれていて、それなのに何もできていなかった。
「ビアンカ、強いんだろ? ボクなんかより必要とされてるに決まってるじゃないか」
「皆死んでしまう」
「え?」
桃の香りがする。これはビアンカの魔法の匂いだ。彼女にあの物騒な魔法を使っている素振りはないが、もしかしたら無意識に発動させる癖でもあるのだろうか。
「私はね、他の人より人を殺すのが得意なんだ。血筋かな? ふふ。だからね、戦争に行ったよ」
ビアンカがボクの斜め上あたりを見ながらいう。思い出を手繰っているのだろうが、彼女がフワフワと視線を泳がせる様は傍目で見ていてかなりコワイ。
「私が魔法を使わなければ、獣人は友達になってくれたかな。ふふ。皆バラバラになってしまうから、答えてくれなかったよ」
「そりゃ……大活躍だね」
「ああ、活躍したよ。そのはずさ。たくさん褒めてもらって、勲章だってもらったよ……どこかにいってしまったけど」
なくしたんかい。
「ふふ、でもね、私の魔法は気持ちが悪いって、皆がいうんだ」
今の笑いは自虐だろうか。
「あのさ、ビアンカの魔法ってさ、あれなんなの?」
「ああ――」
どう反応していいかわからず話をそらす。
思い出の戦場から戻ってきたビアンカは、ボクの問に軽くうなずいてから、静かに人差し指を立てた。
ぴょん、とミューズが跳ねる。
「なあにマリー」
「ん? ミューズが動いたんじゃないの?」
口の周りにソースをつけたミューズが小首をかしげた。
ビアンカが魔法を使ってなにかしたのは間違いがない。甘い匂いがする。しかし、なにが起きたのかわからない。
「これ? なにしたの?」
「そう、私の魔法はこれだけ。なにがどうなったのか私もしらない。ふふ。自分にはかけられないみたいだから」
「いやいや、ララポーラ頭から血出てたじゃん」
「なんでだろうね。私も知りたい。ふふ。おかしいね。エルフの君にわからないなら、私はずっとわかりそうにないな。ふふふ」
どうやら彼女は、自分の魔法を、軽く人を驚かせる程度のもの、だと思っているらしい。そしてどういうわけか、それを使って戦場を生き抜き、使いこなして勲章をもらうほど敵兵をバラバラにして、だというのに、それが何かわからないのだという。
「皆は魔法を “使う” という。でも私が “使う” とああなるんだ」
「加減じゃなくてニュアンスの話? じゃあ戦場では――人を殺すときはどうするの?」
人を殺す、と口にすることがこんなに不愉快だったのか。一瞬、言葉が喉に詰まった。
ビアンカがなにやら楽しげに答える。
「こいつを殺そう、次はあいつを殺そう、あそこにいるのも殺しておこう。ふふふ。そう思うんだ。そうするとね、とてもうまく殺せるんだよ」
「それって、剣で……するときは?」
「かわらないね、同じさ。ふふ。私が殺す、ただそれだけのことに、なにか違いがあるのかな?」
うーん。ボクに答えられる質問ではないな。
「えーと、つまりさっきのは、傷つけないように魔法を使った、じゃなくて、傷つけるつもりがなかった、ってこと?」
「あはは、だって、ミューズやマリーを傷つけようだなんて思わないよ。傷つけようと思わない、殺そうと思わない。魔法か剣かは関係ない。うん、そうだね」
ビアンカは自分でそう言ってなにか合点がいったらしい。
結果が同じなら手段の違いを判別しない。その必要がない。いや彼女にはそれができないのではないか。卵を割ろうと思ったら、卵を持ち上げるまでが彼女の魔法なのだ。そこから先は彼女次第。想像を絶する主観的観測。自己中心の極み。生かすも殺すもビアンカ次第。それを選ぶのは、剣でも、魔法でもない。
「いつから?」
「ずっとだよ。私の家はね、少し変わっているんだ。そのせいかもしれないね」
「かわってるって? どんな?」
「死体がたくさんあったよ」
オーケーわかった。この話はやめよう。
「ビアンカは自分のことをたくさん考えているのね」
スープに浸したパンを齧りながら、感心した様子でミューズがいう。
「そうなのかな、皆はどうなんだろうね。私はね、どこまでが自分なんだろう、って思うよ。ふふふ」
哲学かな?
「私は私の背中を見ることができない。もしも、私の前に私の背中が現れたら、私はそれを私だと思うだろうか」
哲学だこれ。
皿の上の……コレはなんだっけ――酸っぱいキャベツに鼻を近づけていたミューズが顔を上げた。
「痛かった?」
「いや。しかし私は痛みを感じられる」
「どこにいるのかしら?」
「きっと、とても大きいのだと思うよ、だから、近いけど遠い」
「ひとつ? たくさん?」
「ああミューズ、それは同じ。同じことさ」
ミューズもビアンカも簡潔にして支離滅裂。まるで禅問答のようなやりとりだ。
そしてボクはおいてけぼりだ。
「マリーは?」
「君とマリーはよく知っている。ふふ。違うだろ?」
今度はミューズが納得したように息をついた。
「私は時々忘れてしまうの……ねえマリー」
「え、あ、はいマリーです」
二人の会話についていけなくてポカンとしていたら、唐突に話しかけられた。
「もう、なぁにそれ。キャッシュはまだある? とっても美味しいのよ。マリーは食べた?」
「あ、ボクも食べる」
なにやら意味深なつぶやきを聞いた気がするが、話の流れを掴みそこねたのでツッコミも入れられない。とりあえず最後のひと切れとなったマーサおばさんのキャッシュを掴む。
「うん、うまい、得意料理なだけあるね」
「マーサに伝えておくよ」
お世辞ではなく美味しい。なんというかこの街に来て食べたものの中で一番手が込んでいるというか、オシャレな気がする。けっしてローザさんの料理が手抜きというわけではない。エリカの料理のほうが美味しかったのは事実だが。
それから世間話をした。そう、世間話だ。
驚いたことにビアンカは、その気になれば相手を退屈させない程度の話題を持ち合わせていて、相手に合わせて冗談なんかも言えるのだった。
なぜこれで友だちができないのだろう。
ビアンカとミューズの会話は、ボクにはさっぱりわからなかった。でも、ビアンカに友達がいない理由はボクとは違う。それだけはわかった。彼女の隠れたコミュニケーションスキルはうらやましいが、うらやましいと感じるより、それは悲しいことだと、ボクは思った。
「今日はご馳走様。いや、作ったのマーサさんだけど」
「ああ、伝えておくさ」
別れ際、戸口に寄りかかったビアンカが少しさみしそうな声でいう。
「ミューズは寝てるのかい?」
「おなか一杯になると寝るんだよ」
ミューズはボクの腕の中で寝息を立てている。
「ふふ、かわいいね」
「うん」
眠っているミューズは会話のだしに使えない、ほんの少し彼女を挟んで沈黙が続く。
「あの……さ」
なんとなく見つめていたビアンカの足が、左右を組み替えたのを見計らって声を出す。
「友達になって、なんて言うなよ」
ビアンカが戸口に預けていた体を起こした。
表情はわからない。
彼女と違って、真正コミュ障のボクは、会話がシリアスであればあるほど相手の顔を見れないのだ。ボクはそれでもなんとか、彼女の少しはだけた鎖骨のあたりを上目使いで見ながら続ける。
「ボクはお前のこと、友達だと思ってたんだ。思ってるんだよ。でも、そんな……勘違いみたいな、バカみたいじゃないか」
ビアンカが小さく息を吸った。
ボクは話し続ける。
「ボクだって友達を作るのは苦手なんだ。ずっと独りぼっちだったから。さみしすぎて、それがいいことなんだとか、正しいんだとか思い込んで、でも、ほんとは友達が欲しくてほしくて仕方ないんだ」
久しぶりに耳が熱くなる。これが羞恥心か、あるいは怒りかもしれない。いやわからないな。だってこんな話、したことがないんだから。
「やり方なんてわからないよ、たまたま相手が優しかったりで、なんとなく一緒にいてくれるんだと、そう思ってる。無理の仕方だってわからないよ、どうすればいいかなんてわからないんだから。なにをしたってボクはボクなんだ、それはどうしようもないことなんだ。ボク以外にはなれないんだよ。だからさ、友達になってなんて言うなよ……それで――」
「マリー」
大きく一歩踏み出したビアンカが、ボクの頬に軽く唇を押し付けた。思い切り抱き着かないのは、眠ったミューズを間に挟んでいるからだろうか。
突然のくちづけに驚いてのけぞって、それでビアンカの顔を、ごく至近距離で真正面から見てしまった。
「またね、マリー」
ビアンカは笑っていた。いつものような、どこかから切り取ったような笑顔の真似でなく、本当に子供のように無邪気に笑っていた。
大きく開いた口から八重歯が覗いている。それは彼女の恐ろしく整った容姿のなかでは唯一の欠点だ。でもそれは、きっとそうしている時の彼女が一番魅力的で、そのうえきっと、それを知っているのはこの街でボクだけだろう。
「うん、また明日」
おそらくは彼女も知らない彼女の秘密を、その夜ボクにこっそり教えてくれた彼女は、ボクが角を曲がって見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。
マリーは自分が思っているほどコミュ障ではないんだけど、長い間引きこもっていたのと自己評価が低いせいで、相手にとって自分が何であるかを把握する能力を極端に欠いている。何かであろうとするけど不器用だからうまくいかない。ビアンカは自他の区別がつかず主観でしか物事を理解できないので、逆に相手が自分にとって何であるかがわからない。
言語化できない契約を結ぶのには相性が悪い二人でした。
それとは別に、ビアンカが超主観的に観測する世界では、体で成すこととと魔法で成すことに違いはなく、本質的には同じものだと言っています。そのうち説明キャラが出る。
あとミューズとビアンカが世界の形はどんなか的な話をしていますが、コレは私が仏教好きなせいです。
わかりづらい世界観の回。
やっぱり書くのに時間かけすぎると後半が駆け足になるなっておもった。




