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お○○○には勝てなかったよ

全裸から半裸にランクアップする第三話。

 さて、我に返っていつまでも乳投げ出してもいられないといそいそと服を着ていたつもりがいつの間にか全裸になっていた。なぜだろう。

 なぜあれほどおっぱいが好きなボクが、欲望の身体的優位性の逆説的証明のそれそのものになったという、ただそれだけでこんなにも冷めているのか。

 全裸だからだろうか。

 考えるに、もしかしたらボクには今まで気付かなっかった特殊な性癖があるのかもしれないと、そう思う。

 とにかく野外露出がそうではないとわかった今、いや今だからこそ試さなければならないことがいくつかあった。もはや使命感である、寒いので手早く済ましたい。


「なるほどー、なるほどー」


 腰まで伸びた癖のない美しく豊かな金髪、そして大きな胸は概ね願ったとおりり。これだけ胸が大きいのに皮下脂肪のみの二の腕というのは、おっぱい警察にギルティ判定を受けそうだ。浮き上がった鎖骨と肋、細いウエストに薄らと見える腹筋、ヘラで抉ったような下腹部と突き出た腰骨。大きめだが形良く釣り上がった尻、しっかりとした張りの良い太もも。骨格はやや骨太だが手足が長いので格好がいい。

 出るとこ以外は全部引っ込んでいる美少女フュギアか3DCGみたいな体型に素直に感動を覚える。さすがは神の被造物。

 一部女性に言わせれば、女性蔑視と低俗な性コンテンツのステレオタイプな複合体、まさに許されざる妄想の権化という感じだろうが、ボクは評価する。

 ボクの身体をボクが美しいと思ってなんの問題があろうか。

 機会があればいつか、この恐ろしいほど理解力のある神様とは一度話をしてみたいものだ。ボクは極度の下戸だが、彼とならきっと旨い酒が飲める。

 あと耳。長い。

 横に出っ張った長い耳は間違いなくエルフのそれである。

 正直ちょっと興奮した。間違いなくおっぱい揉んでるときよりも興奮した。興奮しすぎて触りまくったから耳がすっかり熱を持ってしまった。多分真っ赤になってる。

 さて、厳密な調査の後、いくつかの知られざる女体の神秘、あるいは驚愕すべき生命の驚異と宇宙の真実を知るに及び、でんぐり返しの途中みたいな恥ずかしい格好をしていたボクはすばやく身を起こすと、三歩あるいて右手で天を指し左手で地を指しこう言った。


「チ○ン○ポがないからだ!」


 判明した事実のその衝撃たるや直接的エロ単語の隠蔽を不可能とするほどであった。

 女性声優のようなアニメ声なので少しいけないことをしているような気分になったが、それはともかく。かくしてボクは依然にして隠しきれない巨乳好きであることは間違いがなく、それはこの調査の間に幾度となく暇さえあれば自分の胸を触わり満足感を得ていることからも明白である。

 だがそこで止まるのだ。

 通常なら男たるもの乳など目の前にして下半身からムクムクと沸き起こり猛り迸る歓喜の騒動を抑えられぬはずである。男は下半身で物を考えるとはよく言ったものだ。

 しかしながら、現在女体と女人のそれとなったボクの下半身には猛るものも無ければ迸るものもない。女性に性欲がないわけではなかろうが、ついさっきまで男であったボクの欲情とは男の欲情である。

 例えば、これは性同一障害とは違うだろう。まったくバカバカしい想定外の矛盾。いうなれば機能的寸止め、超自然的勃起不全。

 現実とは非情である。

 世の巨乳好きよ、いかにおっぱいが好きだからといって、自分でなるのはよしたほうがいい。これは忠告であり願いである。ボクと同じ悲しみを背負うものなきように、全てのおっぱい星人に乳――もとい、幸のあらんことを。

 自分の乳を揉みながらへし折れた心をひとまず落ち着け、いや何よりひとまず着衣を身に付けるべきではないかと気付いた。


「とりあえず、服着よ……どうやって着るんだこれ」


 地面に数枚の布切れが転がっていた。

 GパンTシャツなら問題ないが、どうやらもともと着ていた服とは文化様式が違うようで、これも男物ならまだしも女性物であるのでどうやって着たらいいかまったくもって見当がつかない。


「なぜ、脱いだ、ボクは。馬鹿か」


 勢いほど恐ろしいものはない。

 さて勢いで脱ぎ捨てたものを、今度は思案しながら着ていく。

 円錐形で底辺につばのある物体を拾い上げると、帽子であった。これで黒かったら魔女のそれだが、それは優しい緑色をしている。

 厚手の大きな布切れは野宿用の寝具かとも思ったが、一辺にボタンと紐があるので外套の類だろう。これも緑色。どうやらボクのイメージカラーはグリーンらしい。

 金具で締めるタイプの茶色い革製のロングブーツは、なかなかおしゃれで中二心をくすぐる。造りもしっかりしているようなので、ソールの糊が剥がれるなんてこともなさそうだ。ファッションに詳しくないが既成品を買うならなかなかの値段がするのではなかろうか。

 白くて長いつつ状の布切れは、腕にはめるのでなければ足を通すしかなかろう。両手で端をつまみ長く伸びる脚をつま先からセクシーかつスマートにスルスルと通して……いかない。伸縮性のない素材なので途中で引っかかって履けない。イライラする。

 幸い丈夫そうなので力任せに引っ張って、セクシーさもスマートさもかなぐり捨てて、限りなく無様に片足上げたまま地面を転げ回り格闘すること数十分。最初からドーナツのように丸めておけば楽であることに気づいたのは、両足とも履き終えた後だった。

 しかしなかなかどうして、この太ももに食い込んだニーソックスというのは良いものである。正確には長さによって呼び名が違うらしいが、さすがにそこまでは詳しくない。間違っていても咎めるものなどいないのだから、太ももの中頃まで覆うこれもニーソックスでよかろう。


「よし」


 一通り身につけて自分の姿を俯瞰する。

 三角帽にマント。果たしてニーソックスが必須のアイテムかはあやしいが、これに杖でも持っていたらもうほとんど魔女といった出で立ちではないか。

 魔法職なのかな、知らんけど。とにかくそろそろ本当に服を着よう。マントの下は秘部三点露出だ。


「これじゃ魔女じゃなくて痴女だな。わはは……ハックショイ」


 馬鹿は風邪をひかないというのは嘘かもしれない。

冒険まだー?

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