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E4 ~魂の肖像~  作者: たま ささみ
4/12

第3章  バグ

49階、地下1階と地下2階の設備は、2年前と同様に設置されていた。

 勿論、最新鋭の設備も付加して。

 設楽と八朔はいそいそとIT室に入っていく。そしてまた雄たけびを上げていた。

「チーフ、この定点カメラ、最新式ですよ!なんだ、僕たち向けのサプライズもあるじゃないですか!」

「そうか、良かったな」

 設楽の独り言は2年前と変わっていない。

「これ、弄ってみたかったんだよなあ」

 八朔はまたもやVRで遊んでいる。

 倖田はソファに腰かけてライフルのオーバーホールを始めるし、西藤はソファに横になる。

 2年前の光景と、何も変わらない。


 ただそこには、紗輝の姿が無いだけだった。

 杏はしばし感傷に浸った。

 元気で無事にやっているだろうか。元々あいつは公務員として向いてなかったからだが、何となく危なっかしいところがあった。今も元気でやっていればいいが。


 E4に属していた時には厄介なヤツだと不満をもったものだが、やはりいないと、魂が揺らぐような錯覚に捉われる杏だった。


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 みな、2年前のあの日のようにだらけている。

 そこに剛田が戻ってきた。あの日のように、後ろを歩いてきたのは監理官の西條来未さいじょうくみだった。

 

 杏は皆に声を掛ける。

「皆、出てきて」

 執務室にいた倖田、西條、不破、杏の4人は、すぐさま敬礼する。奥のIT室にいた設楽と八朔も、バタバタと執務室に出てきて敬礼した。

 剛田が杏に尋ねる。

「北斗は?」

 まさか、バグたちと遊んでいるとは言えない。何か嘘をつかねば。ぴんと閃く杏。

「地下の片づけをしています」

「そうか」

 剛田は西條監理官から挨拶をもらうといい、皆はピシッとした姿勢で腕を後ろに組んだ。

「今回はマイクロヒューマノイドの関係でE4の活動を一旦中断していたが、このたび再始動することが正式決定した。皆、心して業務に励むように」

「はい!」

 皆が再度敬礼すると、西條監理官と剛田室長は再びドアを開け廊下に消えた。

 

 設楽がまたもや皆を遮ってお喋りを始める。

「緊張しますね、今回の一件に監理官が絡んでるとなると」

 杏は、久しぶりに設楽を無視しない。

「監理官がいなければE4の存続は難しかっただろう。皆、心して業務に励め」

「チーフも相変わらず変わっていませんね。変わったのは髪型だけだ」

「まあな」

 不破も、後ろで纏める髪型が気に入ったのか、髪を切ろうと思っていないようだ。

 特に業務に差し支えさえしなければ、どんな格好でもいい。これがE4だ。


 30分ほどして、剛田室長が1人で戻ってきた。

 皆、また剛田の前に集まる。

「皆、今迄ご苦労だった。もう少し早く帰国したかったが、マイクロヒューマノイド弾圧政策が本当に終わりを迎えたのか見極める必要があってな」

 設楽が身振り手振りを交えて解説者と化した。

「そりゃもう、この2年間は最低最悪でした」


 八朔も口を揃える。

「軍にマイクロヒューマノイドが何体もいるはずなのに、それらを不問に処してるんですから。汚いですよ」

 あとからこっそり戻った北斗。滅多にこういった会話には口を挟まないが、バグとビートルを傷つけられ、その怒りは頂点に達していたようである。

「春日井元総理はそれなりの制裁を受けるべきだと思うんです。何万人ものマイクロヒューマノイドが命を落としたことは、日本にとって大きな損失になりました」


 不破はE4にくると冷静でステキな男になる。

「社会的な制裁すら受けないで病院に雲隠れじゃ、国民は納得しないですね」

 この意見に、西藤と倖田がうんうんと頷く。

 西藤は不破の意見に同調し、言葉を繋ぐ。

「それでいて任期が永久になるよう画策してたっていうんですから、話になりませんよ」

 倖田が言葉を引き取った。

「国民投票の結果があれですから。日本国民はバカじゃなかった、ということですね」


 杏は自分達3人が潜伏していた事実を、遥か遠くのことのように感じた。


 剛田が低い声で言い放つ。

「朝鮮国や中華国にとってはおいしい政策だったはずだがな」


 世界的には、日本の動きを報じるメディアはさして多くはない。

 ましてや、マイクロヒューマノイド弾圧などという世界では類を見ない政策は、剛田のいうとおり朝鮮国や中華国的には美味しい策戦だったに違いない。

 戦争をしかければ楽勝できる。

 春日井が、いかに世界の動きを把握していなかったか、自分の周りに警察という強大な権力を置いておきたくなかったかが分る。

 特に、自分の指揮命令下にあったとはいえ、E4とW4は目の上のたんこぶ状態だったのだろう。W4のように、いつ裏切るか分らない。どちらも解散状態に追い込み、したり顔でいたはずだ。


 それでも、春日井の裏をかきマイクロヒューマノイドを扶翼した者たちが警察府には多くいた。

 公務員でマイクロヒューマノイドといえば、警察府や国立研究所の研究員、海軍、陸軍や空軍などの軍隊が主だった。公立学校の教師にも多かった。

海軍を初めとした軍隊は春日井の指揮命令下にあったはずだから、日本を追われたのは研究員や警察府、教師たちということになる。

 研究員たちはその殆どが地下に潜り研究を続けていた。警察府では地下に潜って時を待つことをせず、上層部の意向により半島に逃がしたのだろう。

 教師は、捕まった者が殆どだったと聞く。生徒や保護者からの密告が多かったらしい。


 半島との複雑な距離感。

 杏は、春日井の政策が2年で終わりを迎えたことに安堵の気持ちがあった。

 これ以上長引いたら、悲惨な結末が待っていたかもしれない。



 皆が言いたいことを口にしたあと、今度は剛田が皆に問いかけ始めた。

 不破や杏が聞いた設問と同じだった。

「お前たちに2年前に問うた、『魂は肉体に宿り、生命の源として心の働きを司るのに対し、意識は毅然とした自律的な心の働きである』この意味がわかったか?」


 初めに降参したのは設楽。

「いくら考えてもわかんなかったっす」

 八朔や倖田も首を振る。

「難しすぎますよ」

 西藤は、次のように解釈したようだった。

「魂は肉体がなければ生命の源になり得ないわけですよね、一方意識は・・・あれ?肉体がないのに意識があるって変ですよ」

 剛田が笑いながら西藤の肩を叩く。

 そして設楽の方に目を向けた。

「設楽、お前は大体にして考えてなかっただろう」

 剛田に芯を突かれた設楽は顔が真っ赤になる。

「すみません、今言われるまで忘れてました」


 笑い声がそこらじゅうに響く。

 最後に、北斗を前にした剛田が、同じ質問をした。

「壁に貼っていたんですが、見ても分からなくて。ただ、麻田導師の教えとは真逆だと思ったことだけは覚えています」

「麻田の教えとは?」

「確か、『魂は肉体に宿らず。尊厳ある死こそが高尚な意識の全て』だったかな」

「なるほど、真逆だな」



 E4室内で皆が寛ぎ始めると、剛田が杏を呼んだ。剛田について、廊下に行く杏。

「どうしたの?」

「E4回線を遮断しろ、ダイレクトメモで話す」

「了解」

 杏もダイレクトメモの準備に、時計右端のボタンを1回押す。

(何?大事おおごとなの?)

(考えていることがあってな。九条をE4に引き入れようか迷っている)

(あら、彼W4の人たちが生きてるって。あ、でも警官身分剥奪っていってたわよ)

(だからこそのE4だ。暗殺部隊ではなく、テロ制圧行為なら総理も許すだろう。それに)

(それに?)

(春日井が一条や三条たちを見逃したとは思えない。自分を裏切った奴を許すはずがない)

(でも、華族会が黙ってないでしょ、殺したら)

(処刑すればな。自殺で片付けたとしたら)

(華族会も何も言えない。死人に口なしだものね)

(九条はまだ表立って顔を晒せる時期ではない。俺が行って調べてくる)

(もし生きてたら?)


 剛田は口角を上げニヤリと笑った。

(皆まとめて面倒見るさ。さるかに合戦も終わる)



 剛田はそのまま出かけてしまい、夕方まで戻ることはなかった。金沢市か毛利市まで足を運んだのかもしれない。

 夕方、またE4回線を遮断したダイレクトメモが杏の下に届く。

(九条に会って、勧誘してみる)

(了解)


 E4室内では、何もないということで皆時間とともに帰っていった。設楽と八朔は、明日以降、各種ロボットを整備するという。北斗はもう少しバグたちと遊んでから、戸締りをして帰ると言いながらオイルを持って地下に降りた。

 

 杏は設楽たちとともに室内を出て、帰路に着いた。杏と剛田の行動を不信に思ったのだろう、不破が後から追いかけてくる。

「何、剛田さん、なんだって?」

 不破に隠しても仕方のないことだった。

「九条さんをE4に引き入れたいそうよ。あとは、他のW4メンバーがどうなったか調べるって」

「なんでまた」

「さあねえ。こっちでは紗輝がいなくなった後、誰も加入してないしね」

「みんな生きてたら?」

「みんなまとめて面倒見るって。ただね・・・」

 不破は不機嫌そうな顔こそしていたが、反対を示す態度はとらなかった。

「ただ?」

「春日井が裏切り者を許しておくわけがないって」

「処刑したということ?」

「そう。それを調べるために、金沢と毛利に行くって。今日明日は戻らないみたい」

 

 その晩、ベッドに横になった杏は、また九条たちW4のことを考えていた。

 春日井総理は怖い人。九条はそう言ったことがある。

 本当に、そうなのかもしれない。

 捕まった一条、三条、四條、六条。何らかの処分があるだろうが、身分剥奪で済むわけがないのか。

 春日井は軍を手中に収めていた。杏と不破ですら陸軍にさんざん追われたし、研究所は跡形もなく破壊された。

 陸軍に追われたなら、捕まるのは時間の問題だっただろう。 

 問題はその後だ。

 九条は皆元気といったが、果たしてそうなのだろうか。

 旧華族出身のW4は春日井に処刑されることもなく、警察関係の身分剥奪だけで、それ以上の咎めはないから安心して欲しい、と九条は手紙に書いていたが、杏たちを安心させるためだとしたら。

 軍の拷問は、それはもう過酷だと聞く。耐えられず自殺する者も多いとか。

 剛田の返事を聞かないことには現状も知り様がないのだが、それでも心配していた杏だった。



 翌々日の正午。

 やっと剛田がE4に姿を見せた。

 杏は何故か、気が気ではなかった。

 剛田が顔を出すなり、廊下に引っ張っていく。

「どうだった?」

「まず九条に会ってきた。今は金沢で知人の家に厄介になっているそうだ」

「安室の件があるから?」

「今じゃクーデター首謀と見做されているから、毛利市には行きづらいのだろう」

「他の4人は?」

「居所が掴めない。いるとすれば刑務所のはずなんだが、名前が無い」

「九条さん、どうするって?」

「W4の皆が生きていると信じたいから、今はまだどこにも属したくないそうだ」

 

 ちょっぴり残念な思いを抱く杏。

 九条に興味があるのは確かだったから。


「五十嵐。今はこれくらいにしてくれ。北斗に行ってもらわねばならん案件ができた」

 剛田は杏の肩をポンポンと叩いて、そこから離れE4のドアを開ける。

 室内にはいるなり、活字オンラインを読んでいた北斗の名を呼ぶ。

「北斗。早速だが出番だ。中華系の料理専門学校があるのだが、裏に中華系のマフィアが関わって覚醒剤やらを扱っているらしい。どうだ、行ってくれるか」

 北斗が剛田の前に走ってくる。

「承知しました。で、いつから」

「職員採用の面接があるそうだ。それからになる」

「了解」

「表向きは学校だが、敷地内で大麻を栽培したり、輸入した覚醒剤を溜めておく部屋があると聞く。そこを探るのが今回の仕事だ」

「はい」

「ところでお前、料理は得意か」

「男の一人暮らしですからね、料理には自信あります」

「万が一だが、調理師免許はこれからとる予定だとでも言っとけ。食品衛生責任者養成講習くらいなら、都道府県の講習で済むのだろうから」


 北斗は、明日からの任務に備え、バグやビートルと挨拶を交わしたのち、E4を後にした。専門学校や調理人などを勉強するため、本屋に寄って帰るという。

 剛田が安心したといった風体で椅子に腰かける。

「あいつは本当に真面目だな」

 設楽が剛田の視界に飛び込んだ。

「僕も真面目ですよ」

 剛田は上目遣いに設楽を見る。

「今回はバグやビートルも配置する。バグたちは夜も残って敷地内で証拠を探ってもらう予定だ、で、お前か八朔にバグたちが見た様子を解析してもらう。2人交代で、徹夜で監視しろ」

「うげっ、チーフより人遣い荒いですよ」

「うだうだ言う前に準備しろ」


 剛田と北斗の会話も、設楽との会話も耳に入らず、杏はW4のことを考えていた。

 もし、皆が生きていたとしても、警察官としての身分は剥奪された。W4としてこれからも一緒に仕事をすることはできない。

 万が一亡くなっていたと仮定するなら、組織上、九条は一人ぼっちになってしまう。

 究極として、名前を変えて生きている可能性はある。それなら、身分の剥奪も関係ないから一緒に仕事ができるだろう。

 氏名を変えることを華族会が許すかどうかわからないが。



◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 一方の北斗は、食品衛生責任者養成講習を受けるための準備に、活字オンラインを購入した。何も勉強せずに入り込んでもいいのだが、ここはあくまで心証をよくするために。

 もう一冊、中華料理の本も買いこんだ。日本の中華料理と本場のそれは、全然違うだろうが。見てないよりはいいだろう。

 

 日本の反社会勢力、所謂ところの暴力団は、近頃ではおれおれ詐欺の大元や覚醒剤等の売り込みで生計を立てていると聞く。それは昔から変わりのない構図なのかもしれないが。

 中華国のマフィアもそんなところだろうが、中華国圏内ならそれなりに人口も多いし、何も日本に来てまで、と思う。

 どうやら、原住民族が売り込んでいるにも拘らず、土地を占領しているゲルマン民族やアラブ民族はそういったものを別民族からは買わないらしい。

 どこからでも買うのは、平和ボケしている日本自治国の国民だけ。島国故に、周囲が見えてなく、すぐ騙される。

 今や日本では、住宅地のど真ん中で一般人が覚醒剤を購入しているのだとか。バイヤーは、ほとんどが中華国の息が掛かった人間ばかりだ。


 今度の任務も、もしかしたら麻取と呼ばれる厚生省の人間が囮捜査を始めているかもしれない。警察府が合法的に囮捜査を行えずE4に丸投げするのとは対照的に、麻薬取締官は、合法的に囮捜査を行うことができる。

 警察府と厚生省は、どちらが元締めをあげるかどうかでせめぎ合いだ。勝ち負けの世界と化している。

 今回も麻取であげてくれるなら、別に構わないと北斗は思っている。悔しさなど、囮捜査には何も関係ない。

 ただ単に、誰がミッションをクリアするか、それだけの話。

  

 職員採用面接は3日後。

 北斗はある程度の知識を頭に叩き込まねばならない。

 E4には顔を出さず、活字オンラインとにらめっこの毎日だった。


 面接の日がやってきた。

 背広にネクタイを締め、アパルトモンを出る。

 以前隣に住んでいた警備員の男性は、北斗誘拐事件のあと、消えた。FL教に拉致されたのか、自分から出て行ったのかは知らない。

 誘拐に加担したのが怖くなったのかもしれない。

 今は、同年齢くらいの女性が住んでいるようだった。なぜ知ったかと言えば、化粧品や香水の臭い。お世辞にも良い香りとは言えなかった。香水もふりすぎ。

 でも、本心はなかなかどうして、言ったらセクハラ扱いされるかもしれない。いや、痴漢扱いもあり得る。やはり、口出しはやめておこう。


 今日は雨。いくらか土の臭いが立ち込めている。女性の香水の香りはほとんど消えていた。

 傘をさして専門学校まで歩いた北斗。家からちょうど20分。近いところにあって良かった。

 面接の為に事務室を探す。

 生徒用の玄関はあるのだが、どこが事務室の入り口か分らない。

 困っていた北斗に、女神が現れた。

 

 2年前、いつもE4に花を活けてくれていた女性だった。

 設楽と八朔がNシステムを引き伸ばし、紗輝の車に同乗していたので、顔を覚えていた。

「あの・・・事務室がどこかわかりますか」

「事務室でしたら、反対側になります」

「ありがとうございます」

 彼女から香ってきたのは花の匂い。今も花屋さんを続けているのか。こんな場所まで大変だな、というのが印象に残った。学校辺りでも生け花は必須なのだろう。

 今日、紗輝は一緒ではないのだろうか。

 聞こうとしたが止めた。プライベートを覗くような気がして。


 事務室をようやく見つけ面接会場に赴いた。

 職員としての業務はどちらかといえば用務員的な仕事で、校舎内外の清掃、草むしりやゴミ出しといった内容。

 北斗は内心ほっとした。

 警備員を辞めた理由を聞かれたが、昼に仕事をしたいとお茶を濁した。


 採用はその場で決まり、3日後から出勤することになった。

 よし。

 第一段階クリア。

 校舎内外の掃除をすると聞いて、内偵の仕事がやり易いと踏んだ北斗。

 今回は通勤なのでE4への連絡が取り易いことも幸運には違いなかった。


 校舎内外を他のスタッフとともに清掃する日々が続く。

 傍らにカメレオンモードのバグとビートルを侍らせて。

 ニューバージョンのバグたちには、録音及び撮影機能が付随されていた。

 その中で北斗は、何がしかの証言を得ようとしていた。


 証言の相手は、一緒に掃除をするスタッフが主だった。

「ここの敷地は広いですよね、学校とは思えない」

「色々栽培してるからな」

「料理用の野菜とかですか?」

「まあ、そんなところだ」

 ということは、その中に大麻があってもおかしくはない。北斗はそれ以上の追及を止め、清掃に精を出す。

 何事も焦ってはいけない。炙り出すためには、時間を必要とする。


 別の日には、開かずの部屋があるらしいとも聞いた。

「校内の実習室も充実してますね、何部屋もある」

「ああ、でも中には開かずの間があるって聞いたぜ」

「開かずの間?」

「俺達が掃除できない部屋があるんだとさ」

「へえ、なんだろう」

 北斗は、輸入した覚醒剤を溜めておく部屋だと当たりを付けた。場所を知りたかったが、このスタッフが知っているとは限らない。まして、聞きたがりは往々にして墓穴を掘りかねなかった。

 自分で校内を歩きながら、北斗は場所の特定を急ぐことにした。

 バグとビートルは、一日中カメレオンモードで北斗のあとをついて回るほか、北斗が家に戻る夕方から早朝に掛けては校舎外で異物がある場合や声がした場合、撮影及び録音に携わっていた。


 そんなある日のこと。昼休み、北斗は庁舎内を散歩していた。

 また、花屋の女性が校舎内にいるのを見つけ、思わず独り言が口を吐いて出た。

「あ、あれ」

 バグが北斗の独り言に気付いて声を掛ける。

「ホクト、ドウシタノ」

「紗輝の彼女」

「エーーーーーーーーーッ」

「騒ぐな」

「シャシントローット」

 バグやビートルは興味津々で女性の写真を撮る。

「学校内で花を活けてるんだろ、きっと」

「サキハ?」

「いないみたい」

 バグが足をバタバタさせる。

「ナンダ、ザンネン」


 その晩、家に着いた北斗はE4にいる杏に当てて電話した。

「チーフ。大麻の製造はまず間違いありません。広い敷地ですから、野菜と一緒くたにして栽培しているようです」

「そうか、他に何か収穫はあったか」

「開かずの間があるんだとか。たぶん、覚醒剤の隠し場所でしょう」

「わかった。怪しまれないよう引き続き頼むぞ」

「了解です」


 半月後、ビートルの録音機能にヒットした音声があった。設楽が監視していた夜間の時間帯だった。普通なら、もう学校には誰もいない。校舎内は機械警備の設備があったが、校舎外には設備がない。それでバグたちも容易に動けたのではあるが。E4側にとってはラッキーなザル設備だった。


 ビートルが録音した音声は途切れ途切れだったが、少なくとも男性2名、女性1名がいたという事実を示していた。

(海兵隊・・・)

(本国・・・)

(新潟・・海岸・・)


 会話は日本語ではなかったが、設楽が翻訳機に突っ込むとその単語がヒットした。

 その日は杏もE4に残り、設楽たちとともにバグやビートルの動きを監視していた。

「設楽、八朔。あの学校はどこが出資しているのか洗え。マフィアというよりも中華国本国かもしれん」

 設楽はすぐに口答えする。

「えー、今ですら24時間営業なのに、仕事増やすつもりですか、チーフ」

 杏は呆れかえって物が言えない。

「お前たちは普段遊んでるだろうが。仕事がある時ぐらいちゃっちゃと稼げ」

 横を向いてぼそぼそと口答えをする設楽。

「北斗だって同じじゃないですか。仕事ないときはバグたちと遊んでばかりいますよ」


 杏が設楽の耳を上に引っ張り上げる。

 痛さのあまり、ごめんなさいを言い続ける設楽。

「北斗はバグたちの寝床まで掃除してるぞ。お前が文句言える相手じゃない。なんなら、これからはお前が専門学校に潜入するか?」


 設楽は心の底から北斗に謝り、そのままIT室で24時間営業することになった。

 それに伴い、杏は設楽と八朔に命じ新潟市海岸沿いの定点カメラを重点的にマークし国籍不明の船舶がいないかどうか確かめさせた。

 今はまだ、そのような船舶は見つからなかった。

 今、日本にいるとは限らない。これから日本にくる船から覚醒剤を受け取る可能性もある。または偽装しているかもしれない。

 杏の指示も段々声が大きくなっていく。

「日本船舶に化けてる可能性もある。二人とも気を抜くな」


 それから1か月。北斗は毎日の清掃を重ねるにつれ、学内で一カ所だけ毎回通り過ぎる部屋があることに気が付いた。

 知らないふりをして、清掃スタッフに聞く。

「あれ、ここは掃除しなくていいんですか」

「ここはいいんだ、いつも施錠してあるし。俺たちの鍵じゃ開かない」

「そうなんすか」

 

 大凡の部屋の目星はついた。

 あとは、大麻栽培の場所である。昼休みに、ぶらりと校舎を出た北斗は、野菜栽培のコーナーへと足を向けた。

 ビニールハウス形式の野菜栽培コーナーは、全部入口に野菜の名前が記されていた。

 その中でひとつだけ、名前の無いビニールハウスがあった。


 ここだ。北斗の直感が働く。

「バグ、写真を撮ってくれ」

「アイヨー」

「大体の場所がわかるように、もっと引いたところからもお願いするよ」

「ハイハーイ」


 その時後ろから声がした。

「キミ、何を呟いているんだ、まるで会話しているみたいに」

 声のした方向を振り返る。

 相手は、どうやら教師のようだった。

「あ、いえ、これだけ広い栽培室で、何が栽培されているのか興味がありまして」

 相手はかなり訝っていたようだが、北斗が野菜の名前を続けざまに出したことで、ハウス内に一緒に立ち入って説明してくれた。

 無論、疑義のあるハウスには立ち入りもしなかったが。


 内心ばれたかと思った北斗だったが、教師らしき人物はそのまま校舎の方に歩いて立ち去った。

 辺りに人影は無くなった。もう一度周囲を見回して、誰もいないのを確認する。

「ふう、ばれたかと思った」

 バグが北斗に注意する。

「ホクト。カイワキンシ」

「そうだな、これからは気を付けないと」

「クチブエフイタラシャシンサツエイシテアゲル」

「マンマエトジャッカンヒイタトコロカラサツエイスルネ」

「ありがとう」


 翌週、北斗はまた例の開かずの間近辺を清掃することになった。清掃はスタッフ2名がペアを組んで行うが、その日、相棒のスタッフは風邪で休んでいた。せっせと掃除しながらも、部屋のことが気になる。

 北斗は、鍵の掛けられている部屋を、間違えたふりをして手持ちの鍵で開けようとした。やはり開かない。

 すると、北斗は部屋の前に佇んだまま、短い口笛を1回吹いた。



 やはり、ここは覚醒剤を隠している部屋に違いない。たぶん、夜間に事を進めているのだろう。夜間、僕はここにいない。

 バグかビートルが外からこの部屋の写真を撮ったところで、中まではとることが出来ないだろう。どうにかして中を撮る方法がないものか。

 そう思いながら、北斗はしばし部屋の前から離れなかった。


 その様子を、廊下の影から見つめる怪しい影にも気付かず。


 その日の夕方、清掃や草むしりのルーチン業務を終えて休憩所にいた北斗を呼び止めた人物がいた。

 先日の教師だった。

「ちょっときてほしいんだが」

「仕事ですか」

「そんなところだ」

 講堂裏に連れて行かれた北斗。そこには4人の教師らしき人物が立っている。

 北斗は、何か不穏な空気が流れているなと感じた。バグとビートルも後ろをついて来ているはずだが。


 と、急に北斗の腹を蹴る教師たち。

「お前、一体何をしている」

 あくまで知らぬふりをする北斗。

「仰る意味が解りません」

 北斗の胸ぐらを掴む教師もいた。

「なぜあのビニールハウスやあの部屋を気にする」

「どちらにも名前が無くて。ビニールハウスは草むしりもしてないようですし」

「じゃあ、鍵で開けようとしたあの部屋のことはどう言い訳する」

「いつも一緒にいるスタッフさんが開け閉めをするので、間違えて鍵を差しただけです」

 何分続いたろうか、北斗を殴る蹴るの暴行。

 北斗は黙って受け入れていたが、急に教師が引きずられて後ろに飛ばされた。全員、投げ飛ばされたように周りからいなくなった。

 どうも、カメレオンモードのバグとビートルが怒って教師たちを投げ飛ばしたらしい。


 ビートルは北斗を背に乗せると、スピードを上げてその場から立ち去った。バグもついて来ていた。


 帰宅した北斗は直ぐ杏に電話し、潜入・調査していることが教師たちの一部にばれて、講堂裏にて暴行を加えられたことを報告した。

 バグやビートルが怒ってカメレオンモードのまま相手を投げ飛ばし、北斗を連れて逃げたことも。

 杏がくすっと笑う。

「お前が暴力を振るわれて見ていられなかったか。あいつらはお前のことが大好きだから」

「明日から針のむしろですね」

「何とでもなるさ、成り行きに任せろ」


 翌日の朝。

 北斗が学校に出勤しようと身支度を整えている時だった。家の電話が鳴る。番号登録していない相手。

 朝っぱらから誰だろうと不審に思う北斗だったが、一応出てみることにした。


 電話の相手は、専門学校の校長だった。何を言われるのか緊張した北斗。

「あなたを昨日付けで解雇しました。もう来ないでよろしい」

 昨日の今日で、何という対応の速さ。北斗は食い下がる。

「どうしてですか。急に解雇するのは法律で禁止されています」

「理由はわかっているはずだ」

「告訴する権利が私にはあります」

 相手の声は、1オクターブ下がった。

「そんなことをしたら、命が無いものと思え」

 

 ガチャン!

 物凄い音で電話は切れた。



◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 北斗はE4に戻ることになった。

 アパルトモンを出て、周囲に気を配る。

 どうやら、誰かが自分を見ている気配はない。


 そこからタクシーを拾い、一旦ESSSのビルに入り、地下通路を使ってE4に行く。

 地下2階にはいつもならバグとビートルがいるが、今日は2機ともあの学校に仕事に行っている。

 今回の任務は失敗に終わった。

 どこが悪かったのかは自分でもわかっているつもりだった。


 焦りすぎ。その一言に尽きる。


 たらればを言っても仕方ない。

 あの学校から出回る覚醒剤のルートを解き明かすまでが今回の任務だった。

 悔しい。情けない。

 

 やや沈痛な面持ちでE4のドアを開ける北斗。

「おはようございます」

 剛田が出勤していた。

 その前まで進み出ると、北斗は頭を下げた。

「室長、すみません。クビになってしまいました」

 剛田は机の上で掌を組んでいた。

「しかたあるまい」

「情けないです、何もできなかった」

「また機会はある。覚醒剤密売においては、売買ルートから炙り出す線もある」

「そちらに回していただけますか」

 剛田は組んでいた掌を口元に持っていく。

「お前は顔が知られてしまった。今回はもう休め」

「すみません」

「バグとビートルを飛ばして教師たちの映像を送らせる。どいつがお前を殴ったか、あとで確認してくれ」

「というと?」

 剛田は真剣な顔を崩さない。

「あの部屋に興味を持たれたくない人間の顔を知っておきたい」

「あ」

「そうだ。たぶん、そいつらは密売に関与しているはずだ」


 北斗は頭を下げた。

「本当に申し訳ないです。すみませんでした」

「お前に危害が及ぶことが一番気がかりだからな、これでいいんだ」


 その日の午後。

 IT室に篭っていた八朔が何枚かの写真を持ってきた。

「この中に北斗さんを殴った野郎はいますか?」

 じっと見る。

 写真は7~8人の男性。


「あ、この人」


 北斗に声を掛け、ビニールハウスを案内し、殴るときにも声を掛けてきた人物。

「確か、教員だと思うんだけど」

「こいつは中華系の覚醒剤バイヤーなんですよ」

「そうなの?」

「他にはいますか」


 北斗はなおも写真を見つめたが、残念ながらあの時北斗を殴った男たちは見つからなかった。

「いないようだね」

「そうですか、じゃ、もう少しバグたちに当たらせますから待っていてください」


 自己嫌悪に陥る北斗。

 バグたちの方が余程働いている。


 ここで待つしかないのだろうか。

 自分が出来ることが何かないだろうか。


 北斗は覚悟を決めて、珈琲を飲んでいる剛田に話しかける。

「室長。何か僕にできることはないですか。ここで待つしかないのでしょうか」

「焦るな。今、あの学校内にいる教師たちを洗っている。何名かバイヤーがいるはずだ。たぶんお前を襲った奴らがバイヤーだ」

「では、それらが見つかったら、何かすることはありませんか」

「面が割れている以上、お前に出来ることはない。少し休め」

「はい・・・」


 北斗は猫のように身を丸めて歩き出す。

 ソファに座っていた杏が北斗の背中を叩いた。

「あたしたちが仇とってあげるから。木の船に乗ったつもりで待ってなさい」

 不破が脇から口を出す。

「チーフの乗ってるのは、泥船だぞ。北斗、気を付けろよ」

「何よ不破。何か言った?」

「別に何も。それより、北斗は出歩いて大丈夫なんですか、室長」

「アパルトモンはばれている可能性も否めないからな。暫くここに寝泊まりするといい」

「ばれているでしょうか」

「告訴したら殺すと言われたんだろう?」

「はい」

「ただの恫喝ではあるまい」


 アパルトモンに帰ることも許されず、バグたちと遊ぶ時間もなく、落ちこみながら活字オンラインを見る毎日になるようだ。自分に対して情けなさが募る北斗。

「北斗、射撃練習でもしないか」

 不破の誘いにも興味は出なかったが、こんな時こそ一心不乱になるべきだと、不破は北斗を地下の射撃練習場に無理矢理連れて行く。

 心乱れているせいか、北斗の出来は散々だった。

 こんなときなんだから、ほっといてくれよ、と益々落ち込む北斗。

 不破はまるで北斗の心の中を見透かしたように頭をぽんぽんと叩く。

「どんな時でも、どんな場面でも、僕たちは絶対に敵を倒さなくちゃいけない。北斗の命中率があがるまでここに拉致するから」

 

 そういって、半ば強制的に射撃練習は続けられた。



 三日後。北斗は漸く少しだけ自信を取戻し、射撃の成果も出てき始めた。

 不破からも解放してもらい、49階のE4室内で北斗は活字オンラインを見ていた。

 そこにまた八朔が現れた。そして、何枚かの写真を北斗に見せた。

「北斗さん、これ」

「あ、写真ね。どれ、あ、こいつとこいつ。こいつもだ」

 IT室から八朔に付いて来た杏が北斗の背中を叩く。

「ほとんど見つけたじゃない。成敗しに行きましょうよ」

 北斗は一瞬、目を丸くした。

「僕がですか?」

「やあねえ、成敗するのは、あ・た・し」

 おーっほっほっほと不気味に笑う杏。

 その声に不安な物を感じ取ったのか、剛田がこめかみを押さえながら、席を外し廊下に出た。


 途端に杏の言葉遣いが変わる。

「おい、北斗。危ない橋だが渡るか?」

「はい、僕に出来ることなら」

「取引成功だな。今日の夜辺り、こいつらが出回りそうな辺りを散歩するとしよう」


 剛田は定時に席を立ち、帰って行った。E4回線を遮断し、一言だけダイレクトメモを杏に送る。

(やりすぎるなよ)

 杏はその後ろ姿をバイバイと手を振りながら見送ると、北斗の方を見る。

「作戦決行」

 それを聞いた不破が杏を否す。

「北斗に危ない真似させる気か?」

 杏は物ともしない。

「私が1人で歩いててもこいつらが寄ってくるかわからんだろうが。北斗なら、もしかしたら覚醒剤漬けにできるかもと思って寄ってくるはずだ。先日も北斗はやられっ放しだったからな」

「あの時はあれしかできなかったんですよ、対抗して喧嘩したら腕の一本も折りかねなかったし」

「それはそうだ。お前の体術は西藤仕込みだからなあ」

 西藤が嬉しそうに寄ってきた。

「みんなで北斗を囲んでいきませんか」

 不破は、こめかみを押さえている。

「あー、もうこうなったら、みんなでついて行って取り押さえるしかないだろ」

 杏が倖田の方を向いて誘う。

「倖田、お前も来るか」

「狙撃じゃないなら・・・と思うんですが、何か楽しそうですね。行きます」



 夜8時。北斗が1人、住宅街を歩いていた。

 近くに電話ボックスがある。電灯が寿命のようで、チカチカと光が交差している。

  

 北斗が電話ボックスを通り過ぎようとした時だった。

 専門学校のあの教師らしき人物が、ボックスの陰からぬっと顔を出した。

 そして、驚く北斗の右腕を引っ張った。

 その先に見えたのは、注射器。

 

 なるほど。絡繰りが見えた。

 最初にこうして覚醒剤を注射し、禁断症状が出てくる頃合いを見計らって袋入りの覚醒剤を売るというわけだ。


「あっ」

 

 北斗は叫び声をあげようとした。

 相手は、そうさせまいと北斗の後ろ側に回った。


 瞬間。

 注射器は地面に叩き落とされ、相手の腕は捻じ曲がる。

 そして、うめき声にも似た悲鳴が上がった。

 サイレンサーのついた銃から発射された弾が、相手の右掌を貫通したのだ。


 身体をよじりながら泣きわめく男。


「はい、一丁あがり」

 カメレオンモードで姿を隠していた杏が、男を見下してハイヒールのまま蹴り上げると、北斗がにっこりと笑った。

 所轄に連絡した北斗は、その場を立ち去った。警察に見つかると五月蝿いから。


 

 こうして、毎日のように散歩する北斗だったが、そうそうバイヤーに出くわすものではない。

 確かに出没場所として警察府もマークしている場所なのだが、1人が逮捕されたとなると、バイヤーも臆するらしい。



 そして、先日は北斗が相手を撃ったわけではなかったので、余計に詮索する機会を与えてしまったようだ。

 それは、中華系のバイヤーが如何に情報交換をしているかを意味する。


 今晩もまた空振りに終わり、E4に戻った杏たち。

「やっぱりまずかったか、この方法は」

 不破が激しく頷いている。

「私が1人で歩いたらどうだろう」

「絶対に寄ってきません」

「どうしてだ」

「チーフは殺気がムンムンしてます」

「なら、淑やかに振舞えばいいさ」


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇ 


 北斗を前面に押し出して、はや1ケ月。

 ついに再会の時が来た。

 さすがに相手も考えたもので、全員そろって北斗を迎えにやってきた。

 3人のバイヤーが全員で注射器を持って、とにかく北斗を覚醒剤漬けにしてしまおうという荒業。

 

 これには杏たちも驚いた。

 覚醒剤バイヤーさまご一行など見たこともない。

 たぶん、北斗の隣に1人、透明人間なる者がいるとだけ思っていたのだろう。

 全員が北斗目掛けて雪崩をうつ。


 杏、不破、西藤が1人ずつお相手し、まず相手から注射器を叩き落とした。

 そこまでは良かった。


 なんと、バイヤーの一人が、北斗を盾にナイフを構えてきた。


「あら、どうしましょ」

 杏はカメレオンモードを解いて姿を現した。

 他の3人も次々とカメレオンモードを解く。

 不破が至って真面目な顔をする。

「困りましたねえ」

「ほんと、困ったわ」

 目が本気の倖田。見かけだけならヤクザと変わりない。

「どうします」

「そうねえ」


 相手は、もう必死のようで、北斗を人質に取る者あり、また注射器を持つ者あり、カメレオンモードを目の当たりにし腰砕けになる者あり。

 3者3様である。


「さて、そろそろね」

「そろそろですね」


 のらりくらりとする杏たち。

 相手は、こいつがどうなってもいいのかと夜の住宅街で叫ぶ。

「うるさーい。静かにして」

 杏が言ったその時。

 北斗は左ひじをガツンと相手のみぞおちに入れ、少し距離をとったところで、相手の襟を取り、背負い投げを披露した。

「あら、すごーい」


 杏の声とともに、他の3人が動き出す。

 不破は注射器を持った男にかかと落としを決め注射器を振り落とし、西藤は腹に4,5発パンチを入れ、杏は回し蹴りで相手を追い込んだ。

 それを見た倖田が相手の右掌を至近距離から銃で撃ち貫通させる。


「コイツ、ただのひ弱人間じゃなかったのか」

「お前ら一体何者なんだ」

 全員が警察の御厄介になるまいと逃げだす構えを見せるが、最後に倖田が愛用のサイレンサー付き拳銃で1人ずつ足首を撃つ。これで相手は逃げられない状況に陥った。


 杏は高らかに笑い、負傷した相手3人の足をハイヒールで踏みつけた。



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