54
「あ~胸糞わりぃ店だぜ。今直ぐ正面の本店共々消し去ってやりてぇ」
「・・・・・はぁ・・・喧嘩売るの止めて下さいよ。と言っても止めないんでしょうけど・・・・・」
「まぁな、しかしでかいと言うか広い建物だな。横幅は俺の土地の三倍位あるのに三階建てか・・・・・高さ制限とか有るのか?」
「いえ、有りませんけど?三階以上になると王城並みの強度が必要になるじゃないですか」
「なんだ、建築技術の問題か。さて、敵の総本山に突入だ」
建物の中央に有る両開きの扉の前に居る二人の警備員らしき男達が開けてくれた扉を抜けて店内に入った。
一階はエントランスホールと正面に階段、その周囲に食料品や雑貨が並んでいて大勢の客と対応する店員が動き回っていた。
俺達はその間を縫う様にして商品を見て回ると二階へと向かった。
「流石にでかいだけあって品揃えは豊富だな。価格も若干安めだし」
「生産者との直接取引と大量購入で価格を抑えてますから。資金力じゃ勝てませんよ」
二階は冒険者や旅人用のフロアで武具や野営用の道具などが並んでいたので一通り見て回り、壁に掛けてあった剣や鎧を手に取り軽く叩いて材質と製法を確認する。
「ハッ、どれもこれも鋳造の量産品かよ・・・・・ホレス、鍛造って製法知ってるか?」
「何ですそれ?聞いた事もありませんけど。何処かの国の新技術とかですか?」
やはり科学技術はまったく発展してない様だなと横に目をやると、熱心に武器や防具を吟味している十代後半位の二人組みが居たので声を掛けてみた。
「よう、兄ちゃん達。随分熱心に見てるけど冒険者かい?」
二人は同じ村出身の農家の三男と四男で冒険者歴五年。そろそろ少し良い装備が欲しくてこの店に来たのだそうだ。
「何時まで冒険者続けるつもりか知らないが良かったら転職しないか?こんなしょぼい装備に命預けてたら何時死んでもおかしくないぜ」
俺の台詞にホレスが頭を抱えて項垂れていると、俺達の話を聞いていた店員が飛んで来た。
「お客様、店内での勧誘は御止め戴けますか。それに当店の品は守備隊に納入している物と同じ職人が作成した物ですから品質に問題など御座いません」
「いやぁ~すまんすまん。こっちじゃこれが標準だったな・・・兄ちゃん達、面白いもん見せてやるよ。そうだな・・・この鎧貰うぜ」
そう言って壁に掛けてあった鎧を取って店員に代金を払うと、鎧を床に置いて収納から刀を取り出した。
「こいつは俺が作った刀なんだが・・・兄ちゃん達よく見てな・・・・・ハッ!」
掛け声と共に刀を振り抜き、床に置いた鎧を真一文字に斬り付けるとゴトリと音を立てて上半分が床に転がった。
「あ~守備隊の装備と同じ職人が作ってるんだっけ?こりゃいけねぇな宰相様に言って替えさせないと守備隊の存亡に係わる。さて、兄ちゃん達、転職したかったら北地区のハンス商会まで来るといい。ホレス、これ以上見ても時間の無駄だから帰るぞ」
呆然と固まる人達と斬り飛ばした鎧を放置して階段を下り始めると背後で歓声が上がった。
一階のエントランスホールを出口に向かっていると、背後から俺の斬った鎧を持った二人が追いかけて来た。
「ちょっと待って下さい!これ!忘れてますって!」
「そうそう!それにちょっと話もしたいし!待って下さい!」
「おいおい、声がでけぇよ。それにそいつは要らんから君らにやるよ、好きにしな。話ってのは転職の事か?だったら付いて来な」
二人を連れて外に出ようと扉に向かうと背後から更に声が掛けられた。
「待ちたまえ。君達かね、うちの店で騒ぎを起こしていると言うのは。営業妨害は止めて貰えんかね」
見た目四十代後半のでっぷりと太ったいかにも成金と言った感じの男が太鼓持ちと言った痩せた男を連れてやってきた。
「ああ、正面に店を出す事になったんで敵情視察に来たんだが・・・時間の無駄だったよ。こんな在り来たりの物しかないしょぼい店なんて二度と来ないから安心しな」
俺は頭だけ振り向き肩越しに返答して左手をひらひらと振りながら外に出た。自分の土地の前まで歩いて行くと成金男が追いかけて来て怒鳴り散らしてきた。
「貴様!王都一の商会の私の店を侮辱するとは何様のつもりだ!この私は騎士団長のレンフォール伯爵様とも親交が有るのだぞ!ここに店を出すだと!今まで此処に出店した商会は全て二年以内に潰してやったわ!貴様も直ぐに後悔する事になるだろう!」
「喧しい奴だなぁ、唾飛ばすんじゃねぇよ汚ねぇ。何も知らない様だから教えてやる。騎士団長なら今は罪人として牢屋の中だ。副団長共々近い内に解任になる。これは決定事項だ。嘘だと思うなら騎士団長に面会依頼でも出してみるんだな」
「そ、そんな訳あるか!いい加減な事ばかり言いおって・・・ん?そっちの男はあの生意気なハンス商会とか言う所の者だな!懲りずにのこのこ現れおって今度こそ潰して王都から追い出してやる!」
「はぁ・・・三年も前の事を何時までも・・・・・うちの商会はこの方からの依頼で出店の手伝いをしているだけですから。うちに苦情を言うのは筋違いです」
「はん!貴様の言う事なんぞ信じるものか!何処で見つけて来たか知らんがそいつを使ってうちの邪魔をする気なのだろうがそうは行かんぞ!」
「なんだこいつ、被害妄想か?邪魔してんのはお前の方だ、とっとと巣に帰れ。五月蝿くてかなわん」
俺は建物を背に立つと、大仰に両手を広げながら騒ぎを聞きつけて集まってきた人達に声を掛けた。
「御集まりの皆様!お騒がせして申し訳ありません!お詫びと言ってはなんですが面白い物をお見せしましょう!」
そう言うと靄で建物を覆いつくし屋根から徐々に取り込んでいき収納の中で取り込んだ物を仕分けしつつ更地に置く5m四方の巨大な看板を二枚作り設置した。
[ ベルトラン王国公認 ][ 店員及び入植者募集 ]
[ 雑貨と軽食の店 ][ 経験者優遇 ]
[ パンドラの箱 ][ 面接場所 ]
[ 近 日 開 店 ][ 北地区ハンス商会 ]
突然消えた建物の跡地に巨大な立て看板が現れ周囲は騒然となり、その騒ぎを聞きつけた人が更に集まり中央通りを埋め尽くして行く。
俺は驚愕の表情で固まっている成金男に近づき耳元でそっと囁いた。
「・・・俺の店やハンス商会に手を出してみろ、お前も店ごと消してやんぞ・・・いいな、解ったか?」
しっかり釘を刺してから元の位置まで戻り、ホレス達に俺の腕に掴まる様に言って周囲に集まって来た人達に声を掛けた。
「御集まりの皆様!開店予定は二十日後となっております!また、店員の募集も行なっておりますのでご希望の方は北地区のハンス商会までお越し下さい!同時にハンス商会では新規開拓地の入植者も募集しておりますのでそちらも宜しくお願いします!」
俺の腕に三人がしっかり掴まっているのを確認した後、軽く頭を下げて転移魔法を使ってハンス商会前に転移した。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




