表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/164

36

砦から出て来たのは二十歳前後で黒目黒髪の身長180cm程の男だった。


「・・・やはり日本人か・・・・・」


俺の呟きが聞こえたのか、男は微笑み軽く頭を下げて此方に近づいて来た。


「収納持ちですか羨ましい・・・・・始めまして『玄田 武士』と言います。日本人・・・ですよね?」


「ああ・・・始めまして『パンドラ』だ。こっちの可愛いのが『ライラ』、でかいのが『アレス』、あそこでのびてるのが『タニア』だ」


「・・・・・あれって車なんですよね?ライトとか無いですけど・・・燃料とか大丈夫なんですか?」


「まぁ聞きたい事とかお互い有るだろうから座って話さないか。お茶も用意したしな」


「じゃぁ遠慮なく・・・・・獣人にオーガに・・・サキュバス・・・かな・・・・・かなりの実力者みたいですね」


「まぁな・・・実際魔王より強ぇーし。その気になりゃ、この周辺一体更地に出来るぜ・・・・・だから・・・つまらない真似はしない様に砦の連中に言っとけ」


「一応僕が死ぬまで手を出すなとは言ってますが・・・それ本気で言ってます?この砦には五百人の兵士が常駐しているんですよ。それに僕は使徒としても上位ですし・・・・・最近此方に来たばかりの貴方が僕より強いとは思えないですし・・・・・何より同じ日本人の僕を殺せますか?」


「言ったろ魔王より強いし、ここも更地に出来るって。それにだ・・・日本人とか関係ねぇ。敵対するなら容赦はしないぜ」


「そこまで言うなら手合わせでもしてみます?見た所武器を持って無い様ですけど。ああ、収納があるんでしたね」


「ふぅ・・・一応話し合いに来たんだがな・・・まぁ力関係ははっきりさせといた方が良いか・・・良いぜ、何時でも来な」


俺がそう言って軽く殺気を放つと、玄田は後ろに飛び退き盾と剣を構えた。


「・・・どうしました?・・・・・何故立たないのです?」


「必要が無いからに決まってんだろ。ほれ、魔法使えるんだろ?さっさと撃って来い」


「な、なんで・・・・・仕方ない・・・怪我しても知りませんからね!」


そう言うと玄田は頭上に魔法陣を展開したが、発動前に俺の魔力弾で打ち抜き不発させた。


「嘘だろ・・・・・何ですか今のは!無詠唱所か魔法陣も無いなんて!」


「どうした?それで終いか?遊びにも為らんな・・・アレス怪我しない程度に相手してやれ」


アレスは一言「御意!」と言って立ち上がり、背中の剣を抜き肩に担いで玄田に向かって歩いて行った。


「さて、玄田殿。一つ手合わせ願おうか。何、主の命だ怪我はさせん。さあ打ち込んで来るが良い」


「ちょ、ちょっと待て!せめてそっちのお嬢ちゃんにしてくれ!」


身長220cmの巨体が自分の身の丈近い大剣を担いで近寄って来るのはさぞかし恐ろしかったのだろう。


「む、我よりライラ殿の方が強いのだが良いのか?・・・おお、そうか!より強者に望む姿勢!玄田殿は素晴らしいお方であるな!」


斜め上の返事が返ってきて青褪めてライラとアレスを交互に見る玄田と腹を抱えて笑う俺。


「ぶはっ!・・・あはははは!・・・やべえ・・・超腹いてぇ・・・ククククク・・・あ~どうするよ玄田君。ライラとやるかい?・・・ククククク・・・・・」


「・・・すんません・・・・・もう勘弁して下さい・・・・・」


「すまんすまん。俺も大人気無かったよ。気を取り直して話の続きをしようか」



玄田の話によると使徒は八十年前から二年毎に召喚されていて、玄田は五年前に、その後二人召喚されているが所在は不明。使徒全体の数も不明で玄田君が会った事が有るのは十二人だそうだ。召喚はビブリエ教国にある大聖堂の地下の『神託の間』で行われるのだが、ここには教皇以外は入れず、事前の話も無く使徒を連れてくるらしい。教皇の任命は現教皇が次期教皇を任命するのだが、それも神託による物だとか。因みに神に名前は無く『創造神』と呼ばれている。


「ハッ・・・思った通り操り人形かよ・・・・・玄田君、君は日本に帰りたいか?」


「え?・・・日本にですか?う~ん・・・どうでしょう・・・・・もう五年も経ってますし、偶に戻るのは有りかもですけど・・・って帰れるんですか!」


「今すぐは無理だが出来る様になると思ってる。後、他の日本人とも話がしたいんだが集められないか?」


「・・・難しいですね。僕もですけど各自任務で散ってますし。僕が連絡を取れるのは四人しかいません。それに・・・多分反対されます。ヒロさん・・・あ、使徒のリーダやってる人なんですけど、聖堂騎士団の近衛師団長なんですよ。彼は教皇様の傍を離れる事が出来ませんから」


「ふ~ん・・・最悪そいつとは敵対する事に為るな・・・・・で、玄田君は何で戦争なんてやってんだ?」


「そりゃあ魔王から人族を守る為に決まってるじゃないですか!」


「何言ってんだ?侵略したのは人族の方からだろ?・・・聞かされてない・・・・・いや・・・隠してんのか・・・・・兎に角だ、魔王が本気ならとっくに世界征服出来てるぞ。寧ろ魔王が居るから他の魔族が大人しくしてんだ」


「えっ・・・いや、そんな・・・・・騙されてた・・・のか・・・・・僕を騙そうとしてるんですか!」


「おいおい、落ち着け。お前を騙して俺に何の利益があるんだよ。良いか?俺達は魔王城から真っ直ぐ此処まで来たが、魔王軍はおろか魔族の集落すらなかった。普通有りえねぇだろ・・・端から相手にされてねぇんだよ」


「・・・じゃ、じゃあ五十年前の大侵攻はどうなんです!?沢山の人族が殺されたって『侵攻して来たから追い返しただけだろ。戦争吹っかけたんだ死人が出るのは当たり前だ。魔族側にだって犠牲者は居るんだ、それでも国境は変わってないんだろ?』・・・あ・・・う・・・・・」


「大方召喚されて混乱してる所に『神の御使い様』とか『救世主様』とか煽てて上手い事洗脳してんだろうな・・・・・よく考えてみろ。お前『誘拐』された上に『人殺し』の片棒担がされてんだぜ。魔族だからとか言い訳にもならねぇよ。人族だって悪い奴は居る、だろ」


玄田は俯いたまま何も話せなくなってしまった。


「俺の事は別に信じ無くても良い。けどよ・・・聞いた事無いか『旨い話には裏がある』って。五年前って事は中学か高校か・・・大変だったろ今までの常識の通じない異世界だ・・・生きて行くのに精一杯で気が付く暇も無かったんだろう?」


玄田はぽろぽろと涙を流し「はい」と何度も頷いた。


「玄田君、良かったら俺達と『復讐』しないか?」


玄田は顔を上げ涙を流したままの目を見開いて、口を開けたまま呆けて固まってしまった。

ここまで読んでいただき有難う御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ