外伝 光と闇の双星11
三年振りに会った兄様は背が伸びていて身体も一回り大きくなって逞しくなっていたの。
「兄様・・・これからは一緒にパンドラさんの教えを受けませんか?」
「う~ん・・・僕はもっと段階を踏もうと思うんだ。白井さん・・・今教わっている人に勝てる様になったら次に進むよ」
兄様は自分で自分の道を見つけたみたいなの。
「よ~し、お前等、振り分けた地区に移動だ。今渡した紙に書いて有るところに行けば自分の家が有るからな。山の中腹に有る駅まで行って、そこから列車に乗れ。行き先間違えんじゃねぇぞ」
気が付くと沢山の人達が居て、パンドラさんの指示で移動を始めたの。
「うわぁ!階段が動いてるぞ!こ、これに乗って降りるのかよ・・・・・」
「パンドラさんが作ったんだから大丈夫だろうけど・・・ゴクリ・・・ちょっと怖いな・・・・・」
「話だけは聞いてたけど流石に・・・な・・・・・」
荷物を持ってぞろぞろと動く階段に乗って移動して行く人達を眺めていたらパンドラさんに呼ばれたの。
「おーい、ガーランド家はこっちに集まれ~。お前等何も持たずに来ちまったからな。服とか必要な物はディアナとミネルバに言え。小物位ならあいつ等でも作れるから。俺はお前らの家を用意しなくちゃならん。ジェームス、前に住んでた家の見取り図書けるか?大体で良いんだが」
「お任せ下さい。少々使い勝手の悪い所も御座いましたので、そちらの修正もお願いしても宜しいでしょうか?」
そうだったの!あたし達は何も持たずに来ちゃったからお洋服も食器もお家すらなかったの!兄様だけはお洋服を持ってたけど。
ディアナお姉様とミネルバお姉様に作って貰った物を皆で手分けしてパンドラさんに作って貰った新しいお家に運んだの。
「取り合えずこんなもんか。いいか、足りない物や欲しい物が有ったら何時でも言えよ。特に使用人連中はつまらない遠慮すんなよ!」
何だかどたばたと慌しい日々が過ぎて、皆が新しい生活に慣れ始めた頃、パンドラさんが沢山の魔導具を空に飛ばしたの。
その魔導具が新旧両方の大陸に広がった時、お空に数字が現れたの。
『5』『4』『3』『2』『1』『ミュージック!スタート!!』
ディアナお姉様とミネルバお姉様が読み上げる声と共にお空からオーケストラの奏でる音楽が降り注ぎ、この世界に住む全ての人々の目と耳をお空へと向けさせたの。この曲は・・・あの時、初めて一人でパンドラさんに会いに行った時に流れていた―――
「いよう!俺の事を知って居る奴等はお久しぶり。知らない奴等には初めましてだな。俺の名はパンドラだ」
そんな出だしで始まったパンドラさんの演説を僕は唯呆然と眺めていたんだ。
この新大陸や街を作ったと言うのも信じられなかったけど、空に自分の姿を映し出して全世界に送るなんてとんでもない人だと思った。
何者をも寄せ付けない神か悪魔の如き圧倒的な力を持つ者。
こんな人を倒そうだなんて、僕はなんて浅はかだったのだろうか。
ならば如何するのかと言えば、彼と共に在り続け、彼の力に成れる様に様々な〝力〟を得てこの新大陸を護って行く事こそが僕達ガーランド家のこれからの役目なんだと、素直にそう思えた。
壮大な音楽が鳴り止むと共にパンドラさんの演説も終わり、僕は新しい時代が幕を開けるのを感じたんだ―――
―――優しい緑を包む濃い青はお母様
―――揺らめく黒い炎を包む気高き金は父上
―――複雑に絡み合う眩い光と全てを飲み込む闇はパンドラさん
―――何時か僕も あたしも あの隣に―――
ここまで読んで頂き有難う御座います。