転生木箱の後日談33
「ええっ!ほ、本気ですか、パンドラさん・・・・・考え直す訳には行きませんか?」
「ああ・・・お前達には悪いと思うが、とっくに役割は終えたと思っている」
玄田が俺を説得しようとしてきたが、俺の決意は変わらなかった。
「まぁ心配すんな。ハンス商会にも話は通してあるし、路頭に迷う事は無いだろ。つーか、お前なんか働かなくても十分食っていけるだけ稼いだじゃねぇか」
ハンス達の引退した半年後にパンドラの箱の閉店を決めた。
全ての国の同盟が成った時点でこの店と言うか、この世界での俺の役割は終ったと思っている。
ベルトラン王国だけでなく『パンドラ』の名を使っている施設全ての名義や名称も変えるつもりだ。まぁ既に俺の手を離れていた様な物だし問題ないだろう。
「・・・・・それで・・・パンドラさんはこれから如何するつもりなんですか?」
「ん~・・・さぁなぁ・・・暫くは何もしないで大人しくしていようかね・・・・・」
身分や種族での差別が無くなりつつある現状において、この店の存続理由は無いだろう。有り余る売り上げは各施設とハンス商会に分配するつもりだ。この金で何か始めるも良し。使い潰すのも自由だ。
玄田は白井達の住むハンスの村に居を構えスローライフを楽しむらしい。そして店員達の殆んどはハンス商会に入る事が決まり、他の施設の名義変更等も恙無く終えたのだが、一人だけ最後までごねる奴がいた。タニアだ。
俺の役に立ちたいからと店員になり、ライオネル以下数名の求婚を断り働き続けた店が無くなるのだからごねる気持ちも解らなくはないけどな・・・・・
「ライラやアレスも自分の生き方を見つけて一人前に成ってんだ!いい加減自立しろ!!子供かお前は!!」
タニアの荷物を収納鞄に詰め込んで店から追い出し、目の前で店を吸収してやったら泣き叫んで崩れ落ちてから逆切れして手に噛み付いてきたので頭をどついてやった。依存し過ぎだ馬鹿が。
「はぁ・・・お前、一度里帰りしたら如何だ?今なら昔みたいに虐げられる事もないし、ケイオス・・・はあれだが、アイリーンの所なら悪いようにはされないだろ」
アイリーンならタニアの事を気に掛けていたし、二つ返事で了承するだろう。だがタニアはこの提案にも首を横に振り「他の誰にも仕えたくない」と言う。このまま放置したらハンス商会やガーランド家に、ひいてはライオネルにも迷惑をかけるに決まっている。かと言って記憶の操作をするのも流石に気が引けるしなぁ。
と、まぁ仕方ないので島へと連れて行き、畑仕事やハンス達の食事の用意をさせる事にして、隣に家を建ててやった。ハンス達はメイドとか雇ってないんだよなぁ・・・あいつ等自分で家事やるから料理以外は必要ないって言われたよ。ああ、フォルマは一切家事とか出来ない。雇い主に飯作って貰ってたって如何よ?まぁ給料貰ってる訳じゃないらしいけど。
因みにフォルマとハンスはお互い魅かれ合っているのだが、ハンスは結婚する気は無いし手を出してもいない。と言うかフォルマには自由で居て欲しいらしいのだが、出会いが遅過ぎたと言う事なのだろうと俺は思っている。
フォルマならハンスを襲っててもおかしくない気もしたが、俺も襲われなかったっけ。こいつ意外と純な所が有るんだよな。
まぁそんなこんなで俺は大陸での活動を全て休止して、島での引き篭もり生活を始めた訳だ。
まぁ飽きたら何か適当に始めりゃ良いしな。
なんて、その時はそんな事を考えていたんだ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。