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転生木箱の後日談25

リリーの演奏に聞き入っていたオルティナが一曲目が終わり二曲目に入った時、ふらふらと引き寄せられる様に舞台へと近寄って行く。

ベルトラン王国では暗黙の了解で演奏中は近寄らないし、演奏後も主催者以外は声を掛けないのだが、他国の者には通用しない。

熱に浮かされた様に頬を紅く染め、潤んだ瞳で進んで行くオルティナに護衛のアレスが何時でも飛び出せる様に軽く腰を落として身構えた。

ウォルタードも止めるべきかと困惑した表情で俺を見て来たが、軽く手を上げて制してギリギリまで見守る事にした。

アレスの行動に気が付いたのか、オルティナは舞台から少し離れた所で立ち止まり、演奏が終るまでアレスの方を向いたまま動く事は無かった。

会場に居た全員がほっと胸を撫で下ろし、ウォルタードの元へと戻って来るオルティナに注目した。


「一体如何したのだ?突然歩き出したので驚いたぞ」


「申し訳有りません、お父様・・・・・その・・・一つ我侭を言っても宜しいでしょうか?」


「普段我まま等言わぬお前の言う事ならば叶えてやりたいが・・・あの楽師はパンドラ殿の庇護下に・・・・・」


「いえ、違います。確かに素晴らしい演奏でしたが・・・私は・・・・・私はあの方の下へと嫁ぎたいと存じます」


「「「「「はぁ?!」」」」」


その場に居た誰もが「何言ってんだこいつ?」と言った表情でオルティナを見た。いや、実際俺もそう思ったし。

一国の王女が、天才とは言え唯の楽師、しかも孤児の護衛をやっている魔族の男と結婚とか有り得ねぇだろ。しかも普段は鶏の世話をしてるだけだぞ。

尤も鍛錬は欠かしていないからケイオスの所の将軍達と肩を並べる強さは有るし、眷属を辞めた今でも俺を主としているからベルトラン王国内での社会的地位は高いけど。


だが種族の壁は大きい。差別的な物はこの国では殆んど無いから問題は無いが、ゲオルグではまだ魔族に馴染みが無いし、何より寿命となると話が変わってくる。


アレスは上位魔族だ。その寿命は三百年を越える。


それに対してこの世界の人の平均寿命は六十歳前後だ。如何考えても上手く行く筈が無い。ウォルタードもその辺を理解しており、オルティナの説得を試みたが当人も理解した上での事だと言う。

後は王命しかないとウォルタードが最後の切り札を切ったが、オルティナは国も身分を捨ててでもと一歩も引かなかった。


こう為ると後は当人同士の話し合いしか無いと言う事になり、アレスを呼んで事情を話した。


「・・・・・と言う訳なんだが、お前は如何だ?アレス」


「如何と申されましても・・・・・我は婚姻など考えた事も有りませんが・・・この話を断る事で主殿の迷惑となるのであれば否は有りません。ですが、それも少し違う様な気も致しますし・・・・・」


「それでしたら私と御付き合い頂けませんか?私の事を良く知ってから御返事を頂ければ私も納得行くと思うのです」


「は、はぁ・・・ま、まぁそれでしたら・・・・・」


「だめえええぇぇぇ!!アレスさんはあたしが成人したら結婚するの!!他の誰にも渡しませんから!!」


渋るアレスに押し捲るオルティナ。アレスが女性に弱いのはライラの影響が大きいのかもしれない。

そしてここに来てリリーの参戦で一気に剣呑な雰囲気となった。


いや~まさかリリーがアレスの事を思っているとか考えもしなかったわ。こう為るとアレスがはっきりしないと収拾がつかないんだが、リリーに抱き付かれおろおろとするばかりで二人の言い合いに口を挟む事が出来ないヘタレ振りだ。

何かもう面倒だし、このままにしておく訳にもいかないよな。一応公式の場だし。


「二人共そこまでだ!アレス!はっきりしないお前が悪い!罰として二人共娶れ!!それから、そっちの二人はこの場を騒がせて皆に迷惑を掛けた罰として結婚するのはリリーの成人後だ!!それまでにお互い話し合って妥協点を探し出せ!!何か文句が有る奴は俺が相手になってやるから前に出ろ!!」


リリーを狙っていた貴族とウォルタードが何か言い掛けたが、一睨みで黙らせてこの場を無理やり収めたのだった。


あ、翌日の調印式は何事も無く無事に済みましたよ。

ここまで読んで頂き有り難う御座いました。

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