転生木箱の後日談20
「貴方達は何を騒いでいるのですか。お客様の前で失礼でしょう。部屋の外まで聞こえておりましたよ。失礼致しましたパンドラ様。ゲオルグ王国第二王女のオルティナと申します。陛下が席を外せない為に私が命を受けてまいりました」
「いや、俺もちょっと悪かったと思ってた所なんで気にしないでくれ」
「そう言って頂けると助かります。大臣、現状の把握をしたいので説明をお願いします」
第二王女がその場を治め、大臣の説明を受けるとその場で溜息を付いた。
「はぁ・・・・・大臣は少々勉強不足の様ですね。周辺諸国の情報の精査が出来ない様では外交を任せられません。パンドラ様の噂を聞いた事は無いのですか?」
「あの様な噂話など信じるに値しません」
「だから精査をしろと言っているのです。私達王家はこの十年のベルトラン王国の急成長の原因は彼に有ると確信しております。此度の申し出は我が国の好機。それを断るなど有り得ません」
「ですが帝国は今疲弊しきっております。この機会を逃せば・・・・・」
「お黙りなさい!貴方は何も解っていません。彼が庇護する帝国に刃を向ける事はこの国の滅亡に繋がると知りなさい!この件は陛下に報告します。貴方は下がりなさい」
項垂れて部屋を出て行く外務大臣を一瞥もせずにお茶お飲む第二王女と俺。ヴォルドは畏まってと言うか固まって動かなかった。
「ヴォルド卿、貴方の適切な判断のお陰でこの国は救われましょう。パンドラ様、大臣の無礼重ねてお詫び致します。あの者は近い内に解任致しますのでご容赦下さいませ」
「俺としては結果が同じなら如何でも良いんだわ。同盟国として友好条約を結んでくれるって事で良いんだな?」
「勿論です。本来ならば此方からお願いに行かなければ為らない所をご足労頂き感謝致します。ここだけの話、私か姉上が嫁ぎに行くという話も出ていたのですが、ライオネル陛下に続いてガーランド卿のご子息も御成婚されましたでしょう?他に歳の合う方も居りませんし、如何した物かと陛下も頭を悩ませておりました」
「そこは普通に申し込みに来たら良かったんじゃね?別にライオネルも何か寄越せとか言わんだろ」
「それはそうなのですが、より強い縁を結ぼうと思いましたら何かしらの利が無くてはなりません・・・・・その、我が国には特産品と言う物がありませんので」
「なるほどなぁ・・・・・まぁその変は気にしなくても良いぞ。この話もライオネルからじゃなくて俺個人が勝手に話を進めているだけだからな」
「はぁ?!パ、パンドラ殿!それは拙いのではありませんか?!」
「いや、ぜんぜん。あいつ等俺のやる事に文句とか言えねぇから大丈夫だ」
俺の言葉に唖然としていた第二王女が突然笑い出した。
「・・・・・プッ!アハハハハ・・・あら私とした事が失礼致しました。噂以上の〝力〟をお持ちで感服致しました。ベルトラン王国とユリシス帝国の二カ国との条約、ゲオルグ王国国王ウォルタード・ゲオルグの名においてお受け致しますとライオネル陛下とユリシス皇帝にお伝え下さい」
「おう、任せとけ。日程が決まったらまた来るから国王さんにも宜しく言っといて」
「はい、確かに。それで、その・・・パンドラ様は我が国に出店して頂けるのでしょうか?以前缶詰なる保存食を戴いた事が有るのですが、他にもその店でしか食する事の出来ぬ料理が有ると聞き及びまして」
「あ~悪いが俺はその予定は無い・・・が、贔屓にしている商会が支店を出す事になると思うからドラグーン特産の食材なら手に入る様になるぞ」
帝国にジェーン達の店を出すんだしゲオルグの方にも出しても良いかも知れない。
「そうですか・・・・・少々残念ですが未知の食材に期待しておきましょう。あ、調印式に付いて行くと言うのも良さそうですわね」
この世界の奴等は食に拘ると言うか執着する奴が多いが、まぁ戴した娯楽もないし、そんなもんかとその場を辞去し。ヴォルドを転移で砦へと送って島へと帰った。
ここまで読んで頂き有り難う御座いました。