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転生木箱の後日談18

アスタルが彼方此方に根回しをし、ハンス商会が支店の開設の為にどたばたしている頃、俺はゲオルグ王国へと向かった。

今回は何時もの様に直接王都に転移ででは無く、ベルトラン王国側の国境から正規のルートで行く事にした。

と言っても馬車や徒歩でなんてめんどくさい真似はしないし、一人なので四輪自転車でも無いが。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



「隊長!ベルトラン王国側より正体不明の物体が接近中!現在防衛体制を展開中です!」


「何だと!?数は!?」


「おそらくは一騎かと思われますが、物凄い速度です!」


「た、たった一騎でだと・・・・・ハッ!い、いかん!絶対に攻撃してはいかんぞ!急ぎ伝令を!!」


先日起こった帝都陥落の報はここの砦にも届いていた。

千人を超える兵士を薙ぎ倒し、城門を消し飛ばした上に大聖堂と帝城を消し去ったと言う。それを成したのがたった一人の男による物だと。

部下達の殆んどはこの話を与太話だと笑い飛ばしていたが、彼は十年前にビブリエ教国の聖都で起こった事件の事も聞いていてたのだ。そして、この十年で急成長を遂げたベルトラン王国の発展に関する噂話に必ずと言って良い程名前の挙がる人物は奇妙な乗り物で王都を走り回っていたと言う。


そして敵対する者には容赦をしないとも。


彼はベルトラン王国側から単騎で何者かが来た場合には、行き成り敵対する事だけは避けようと考えていたのだ。ビブリエ教国やユリシス帝国と同じ轍を踏む訳には行かぬと。


隊長は慌てて書いていた書類を片付け、大急ぎで城門へと駆け付けたのだった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



「ん~・・・偶にはのんびりツーリングってのも良いな。街道整備がされてないからアメリカンよりオフロードの方が良かったかもしれんが」


V4サウンドを響かせながら、国境近くの草原をゲオルグ王国の砦を目指して直走る。


「・・・・・あ~・・・何か北砦に行った時の事思い出したわ。あん時は弓と魔法を撃たれまくったっけな。ははは・・・・・やばいな・・・今回は穏便に話しを進めるつもりだったのに、こんなもんで乗り付けたら攻撃されて話し合い所じゃなくなるかもしれん・・・・・」


近づいて来た砦上部に走り回る人影が見えて来て、最早手遅れかと覚悟を決めて進んで行くが、攻撃してくる気配が無い。

門から少し離れた所にバイクを止めて、着けていたゴーグルを首に下げた所で門が開き、中から十人程の兵士が出て来たが腰に下げた剣に手すら掛けていなかった。

バイクから降りつつどう言う事だ?と首を傾げていると、門の両脇に並んだ兵士達の間から一人の男が進み出て来た。


「私はこの砦を任されているヴォルド・ワイズメルと言う。ベルトラン王国の方と御見受けするが、我が国への用向きをお聞かせ願いたい」


「ベルトラン王国王家相談役のパンドラだ。ゲオルグ国王陛下との会談が目的なんで通して貰いたい」


初見でまともな対応されるの初めてじゃね?と感動しつつも用件を伝えると、ヴォルドと名乗った男は見る間に青褪めて行き「やはり」と呟いた。


「ん?もしかして俺の事知ってんのか?それなら話が早いんだが」


「き・・・貴殿の高名は私の耳にも届いております。ようこそ御出で下さいましたパンドラ殿。直ぐに王都へ早馬を出しますので、こちらで今暫くお待ち戴けますか?」


「あ~そんなに畏まらなくて良いぜ。それに馬より速いんだわ、あれ。だから一筆書いて貰って、ここを通してくれりゃそれで良いから頼めるかい?」


「い、いえ、事前連絡無しでは国賓をお迎え出来ませんし、陛下にも予定が御座いますから・・・・・」


そう言われてユリシスの近衛に言われた事を思い出した。ベルトラン王国だとフリーパスだから慣れないし面倒だが、ここは待つしかないか?でものんびりしているのもなんだし・・・・・と、そこで思い付いた。こいつ連れて行けば良いんじゃね?と。


「悪いんだが長期滞在してる暇はねぇんだよ。そこでだ・・・あんた、あれに興味は無いか?」


「は?あの乗り物ですか?勿論興味深いですな。魔道具なのでしょうが、見た事も聞いた事も有りませんし」


「よし!じゃぁ特別に乗せてやるからこっちに来な」


タンデムステップを降ろして戸惑うヴォルドを半ば強引に後部座席に座らせエンジンを掛けた。


「おお・・・なんと言うか・・・わくわくして来ますな。作動音も腹に響きますし」


「ははは・・・じゃぁちょっとばかし飛ばすから確り掴まってな!」


「は?・・・・・うおおおぉぉぉおおぁああああぁぁぁぁ・・・・・!!」


「た、隊長おおおぉぉぉぉ・・・・・!!」


この件は『ゲオルグ王国北東砦防衛隊長拉致事件』として長く語り継がれる事となった。

そして、この世界で初めて300km/hオーバーを体験したヴォルドは砦に戻った時、心配して駆け寄って来た部下達に『神の領域を見た』と遠い目をして語ったと言う。

ここまで読んで頂き有り難うございます。

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