転生木箱の後日談17
「お~い、ハンスかホレスはいるか?」
「いらっしゃいませ、パンドラ様。会頭と副会頭でしたら執務室に居りますので、応接室の方へご案内いたします」
「俺相手に畏まる必要無いって何時も言ってんだろ?居るなら勝手に行くからあんた等は仕事してて良いぜ」
ハンス商会の会員は大商会に相応しい教育がされていて、俺的にはちょっと堅苦しくてやりにくくなったが、まぁそれも仕方が無い。
俺は勝手知ったる他人の家と言った感じで執務室へと向かった。
「よう、ハンスにホレス。漸く最後の約束を果たす時が来たぜ」
「相変わらず行き成り過ぎてさっぱり要領を掴めませんが・・・儲け話なんですよね?それもかなり大きな」
「ククク・・・なんだぁ?忘れちまったのかよ。初めて会った時に言ったじゃねぇか『世界一の商会も夢じゃねぇ』ってよ」
「・・・プッ!・・・ハハハハハ!私はこの国で一番に成った時点で叶えて貰えたと思っていたんですけどねぇ・・・ハハハハハ!まだ先が有ったなんて思いもしませんでしたよ」
俺は二人にラインモスの話から帝国やゲオルグとの条約の話まで全て話した。
「・・・・・いや、それって一商会が聞いて良い話じゃないですよね?国家機密ですし」
ホレスは聞くんじゃなかったと頭を抱えていた。
「細けぇこたぁ気にすんな。現状支店があんのはドラグーンとトランバルだけだろ?この同盟が成れば他の周辺国も同盟の打診に必ず来る。そうなりゃ周辺の全ての国に支店が出せるんだぜ。どうよ?」
「どうよって・・・それは願っても無い話ですけどね、資金は有っても人材の育成が追いつきませんって」
「それなら考えて有るぞ。現地の余り流行ってない中堅商会を会員含めて丸ごと買い取っちまえば良いんだよ。そうすりゃ教育係を一人送り込むだけで済むだろ」
「ブハッ!・・・ゴホッ!ゴホッ!・・・あんた何考えてんだ!?そんな事簡単に出来る訳無いしょう!無茶苦茶過ぎます!!」
俺の提案に飲んでいたお茶を噴出し咽返るホレス。
「おいおいホレス、その否定から入る考え方はいい加減直せよ。良いか、俺の考え通りに事が進めば、吐き出した金なんてあっと言う間に数倍になって返って来るぞ」
例によって胡散臭い事を言う俺に、訝しげな顔をするホレスと目を輝かせるハンス。この二人の対比が上手く噛み合ってこの商会を大きくしたのだ。
「例えばだ、ドラグーンの特産品はこことトランバル以外では輸送費や鮮度の問題で殆んど出回ってないだろ?でも帝国やゲオルグに支店を作って、トランバルの支店同様に転移陣で繋いだらどうなると思う?」
「「あ・・・・・」」
「気が付いたみたいだな。今回帝国で売りに出すシルクは、トランバルでは本来なら手に入れる事が出来たとしてもかなり高値になるだろ?だがハンス商会なら何処よりも安く売る事が出来る。俺が付いている限り、価格競争でお前達に太刀打ち出来る商会なんてありゃしねぇんだよ」
二人の顔が見る間にやる気に満ちて来る。
「それだけじゃないぞ。豊作だった国から安く大量に買って、不作だった国の相場で売るだけでもかなりの儲けになる。支店が増えれば増える程に情報も増えて行き、相場を支配する事が出来る様になるんだ。はっきり言っちまうと、何処の国よりも強大な力を手に入れる事が出来るって事だ」
二人がゴクリと喉を鳴らした。
「まぁお前達もいい歳だし十分金も稼いだしな。そろそろ引退して俺の島でのんびりしたいってんなら話は別だけど」
「「そんな訳ないでしょうが!!」」
「ホレス!直ぐに人員の手配と教育を!」
「帝国とゲオルグだけなら今直ぐにでも二、三人は送れます。それより買い取る商会は十人前後の小規模にしましょう。扱う商品は収納鞄に入れてここで一括管理すれば良いですから倉庫も要りませんし、その分の資金を次に回せます」
「ククククク・・・邪魔しちゃ悪いんで俺は帰るぜ。それじゃ一ヵ月後に」
立ち去る俺に気が付きもせずに意見を出し合う二人だった。
ここまで読んで頂き有り難うございました。