転生木箱の後日談16
ユリシス達と帝都の離宮へと帰って来た俺は、本来の目的である頼み事の話をした。
「取り敢えず一段落したし、俺の頼みを聞いて貰えるか?」
「ああ、それは勿論じゃが、城は直して貰えんのか?」
「図面が有るなら何時でもやってやるよ。それでだ、大聖堂が立ってた土地を売って貰えないか?」
「この国では土地を売ると言う事はした事が無いのじゃが・・・・・そなたになら良かろう。国ごとくれてやると言ってしまったしな」
「おお、助かったぜ。それでだ・・・・・ベルトラン王国と相互不可侵条約を結んだろ?俺が口利いてやるから同盟条約を結んで友好国としてやり直さないか?今なら解るだろ、戦争なんて仕掛けたって碌な事にならないって」
「・・・それは・・・・・願っても無い申し出なのじゃろうな・・・・・じゃが・・・信じて貰えるのじゃろうか・・・・・」
「信じて貰う為にも全ての責任を負ってお前は退位しろ。次期皇帝と共にベルトラン王国へ頭を下げに行く覚悟が有るのなら、俺が二度と戦争をしなくて済む国にしてやる」
「・・・・・暫く時間が欲しい・・・息子とも良く話をしたいのでな」
「勿論だ。息子だけじゃねぇ、他の貴族達とも良く話し合って決めた方が良い。こいつは土地の代金だ、金貨五千枚有る。足りなきゃ言ってくれ。一ヵ月後にまた来るから、その時に返事を聞かせてくれ」
「・・・解った・・・じゃが・・・・・いや、何でもない・・・・・」
信じたいが信じきれないと言った表情を浮かべるユリシス。当然の事だ、この国を追い込んだ張本人からの申し出なのだから裏が有ると考えるのが普通だろう。
俺はそれ以上何も言わずに転移で島へと戻った。
「アスタル、ちょっと相談と言うか頼みが有るんだが良いか?」
「む、何じゃ?そなたの頼みなら可能な限り聞くつもりじゃぞ」
普段から恩を返したいとか言っているアスタルならそう言うと思ったが、俺としてはディアナとミネルバの相手をしてくれているだけで十分だと思っている。だからと言う訳では無いが、きっちり利益は提供する。
「今日帝国へ行って来たんだが、かなりやばい事に為ってるんだよ。それで、俺が経済面で立て直すからユリシスの返答次第でベルトラン王国と同盟と友好条約を結んで欲しいんだが、可能か?」
「なぬ?つい先日相互不可侵条約を結んだばかりじゃぞ。わしとしては構わんが・・・おそらくは南の・・・ゲオルグ王国が黙っておらんぞ」
「ゲオルグ王国は俺が黙らせる。と言うか帝国とベルトラン王国とも同盟を結ばせる。そうすりゃ同盟を結んでいない他の国もベルトラン王国と同盟を結ぶだろ」
「ふむ・・・・・そうなれば大陸の約1/3が同盟国となる・・・か。しかしゲオルグがその話に乗るかのう」
「それなら大丈夫だ。近い内に帝国で今までに無い布が売りに出される。生産地はゲオルグとの国境近くだ。この話に乗らなきゃ直接取引は出来ねぇし、攻めて来るなら俺が潰す。その代わり同盟が決まればユリシスは退位させる」
「ほう・・・その布はそれ程の物か。その話にハンス商会を噛ませると言う訳か」
ハンス商会はベルトラン王国最大の商会になっているが、この話が決まれば間違いなく世界一の商会に伸し上がれるだろう。
「一応返事は一ヵ月後になってるが、先ず断れる状況じゃないから決まったもんだと思っておいてくれ。流石にライオネルにゃ荷が勝ち過ぎてると思うからそれと無く力に為って欲しい」
「うむ、解った。それで、あの二人の事はどうなったのじゃ?」
「ああ、帝都の大聖堂跡地を買い取ったから、そこに二人で出来る小さな店を用意してやるつもりだ。かなり広い土地だから噴水やベンチとかを置いて憩いの場にしようと思ってる」
ハンバーガーやホットドックとかファーストフード的な感じで行けば、昼間だけの営業でそれなりに売れると思う。
「まぁ、そなたのやる事じゃ、失敗はせんのだろう」
「ははは・・・失敗とか考えた事もねぇよ」
俺とアスタルは一ヵ月後に向けて動き出すのだった。
ここまで読んで頂き有り難うございます。