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転生木箱の後日談15

俺はタブレットを取り出し、上空からの映像をユリシスに見せた。


「こいつはこの国の南西部に有る国境近くの山なんだけど、ここって誰かの領地なのか?」


「・・・・・ああ、南の王国との戦で武勲を上げた騎士に爵位と共に与えた地じゃ」


「そいつのあんたに対する忠誠は?信用は出来るのか?まぁ裏切ったら消すだけだけど」


「その心配は要らん。騎士としてわしが最も信用しておった者じゃからな」


「ほう、そいつは良いな。それじゃ本題に入ろうか・・・ラインモスって蝶を知ってるか?」


俺の問いに首を横に振り「聞いた事が無い」と答えるユリシス。


「だろうな。おそらくは世界中で俺以外に知っている奴は居ないと思う。まぁそれは置いといてだ。この蝶なんだが幼虫から成虫に成る時に糸を吐いて繭を作るんだ。その繭を煮て糸を取って布を織ると良い。既存の麻や綿なんかよりずっと質の良い物が出来るぞ。勿論他の蝶が出す物より上質だ」


所謂シルクなのだが、この世界には存在していない。ベルトラン王国では気候の問題でこの蝶を飼育する事は出来ない為に、ハンス商会でも取り扱っていないのだ。


「はぁ・・・その蝶がその山に生息していると言う訳か・・・じゃが布を織る為の施設を作る事も出来んのじゃよ」


「助けてやるって言った以上は俺が用意してやるし、販路も確保してやるから心配すんな。それじゃその領主の所に行こうぜ、さっさと話し付けて取り掛かった方が良いだろ」


俺は有無をも言わさず転移で周囲に居た近衛とユリシスを連れて領主が居るであろう街へと飛んだ。






「南の要所だけ有って中々立派な城塞都市だな」


転移酔いでふら付くユリシス達を連れて城門へと近づくと、当然門番から誰何の声が掛かったが、流石にユリシスの顔は知っていたので用意された馬車に乗って領主の所まで案内された。


「パンドラ殿・・・せめて先触れは出しませんと、相手にも準備と言う物が有りますから」


「取り敢えず会いに行って相手の都合が悪けりゃ出直しゃ良いだろ」


「いや、普通は皇帝陛下が参られたらどの様な用件でも後回しにするしかないかと・・・・・」


「後回しに出来る程度の用件ならそれで良いじゃねぇか。こっちは国の存亡が掛かってんだし」


近衛の苦言に屁理屈を捏ねている内に領主館に到着して応接室に通された。


「ご無沙汰しております陛下。本日はどの様な御用向きでしょうか?」


「久しいな、クラインよ。急な話で悪いのじゃが、この国の為にそなたの力を貸して欲しいのじゃ」


「陛下の命ならば否は御座いません。何なりとお申し付け下さい」


クラインと呼ばれた四十代半ばの男はベルトラン王国で言えばガーランド家の様な立ち位置で、この地で二十年以上も南の王国から国境を守り続けているのだそうだ。

俺はクラインに詳しい説明をして人員の手配を頼み、現地の視察をして土地を均し、工房や宿泊施設を設置して行った。


「・・・・・何と言うか・・・凄まじい能力じゃな・・・・・」


山の麓の森があっと言う間に切り開かれ、次々と建物が建つ様を見てユリシスが溜息混じりに呟き、近衛達は目を見開いて固まっていた。


「これで後は人員さえ揃えば工房は動かせるだろ。生活に必要なもんは一緒に運べば良いし。食料は森や川で採取するとか、近くに農村を作るのも有りだろ」


「う、うむ。その辺りはクラインの判断に任せるとしよう」


山から流れるそこそこ大きな川が近くに有るので水路も引けるし魚も捕れる、森や山にも特に強い魔物や獣は居ないので問題ないだろう。


俺達はクラインの所に戻って地図で施設を建てた場所を教え、取り敢えず第一陣は一ヵ月後にと決めて帝都へと帰る事にした。

クラインは展開の早さに困惑し懐疑的な目を俺に向けていたが、ユリシスの「頼んだぞ」の一言で粛々と事を進めて行くのだった。

ここまで読んで頂き有り難う御座います。

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