転生木箱の後日談13
ケントとケイオスの最強決定戦から数日が経った。
ケントの性格からして、俺を殴った事で余所余所しくなるかと思ったがそんな事は無く、以前と同じ様に接してくれるのは有り難い。
そして更に数日後アスタルが島に建てる住居の図面を持って来たので、うちから200m程西に行った所に建てる事にした。
「・・・・・なんか変な造りだな・・・夫婦と使用人で住むにしちゃ広い部屋が多い気もするし・・・客間か?いや、違うなこの部屋だけ広いとか変だし」
「ん?・・・ああ、それはジェラルドの部屋じゃよ。あ奴は妻に先立たれて独り身なのでな。わしもミランダも幼馴染じゃし、あ奴と住めばあの料理人・・・エリクと言ったか、彼の料理を食する事が出来るであろう」
「ああ、なるほど。毎食うちに集りに来たらぶん殴ってやろうと思ってたが、それなら安心だな・・・ははははは」
「流石にそんな真似はせんわ!」
地下に魔力発電機を設置し、様々な家電を完備した家を建てた数日後にはアスタル夫妻が引っ越して来て、更に数日後にジェラルドもやって来た。
使用人達が家電を怖がって使おうとしなかったが、壊れたら直ぐに直してやるからと言って、兎に角使う事で慣れさせた。
アスタル夫妻は暫くの間は島の散策や釣り等をして過ごしていたのだが、ディアナとミネルバを孫の様に可愛がり始め、家に入り浸る様になった。
ジェラルドは何故かアレスの所に入り浸り鶏の世話をしていた。
そんな平穏な日々が続いた或る日の事。転移陣の建物からマークスが二人の女性を連れて出てきた。
「む、マークス殿ではありませんか。こちらにいらっしゃるのは珍しい・・・・・しかし綺麗所を二人も連れて居るとは隅に置けませんな。アイリス殿には黙っておきますのでご心配なく」
「ははははは・・・アレス殿がその様な冗談を言うとは思わなかった。これからお出掛けですかな?・・・・・ああ、もしかしてリリー殿の護衛でしょうか?」
「ははははは・・・いや、失礼した。今日は何とかと言う子爵家の御茶会の席での公演でしてな。して、そちらの女性は?」
「・・・・・まぁ・・・ライオネル陛下の命でパンドラ殿の所へと連れて行く事になってね・・・・・」
「む・・・何か事情がお有りの様ですな・・・これ以上は聞かぬ方が良さそうだ。では、失礼します」
アレスと別れたマークスは二人を連れてパンドラの家へと向かった。
「「いらっしゃいませ~。パンドラ邸へようこそ~」」
マークスが玄関を開けると水色と桜色のワンピースを着たディアナとミネルバがカテーシーで出迎えた。
「アスタルお爺ちゃん、上手に出来たかな?」「上手に出来たぁ~?」
「うむ、とても可愛らしく上手であったぞ」
「「やった~!!」」
「・・・・・・・何を仕込んでいるんですかアスタル様・・・・・」
「む、どうせなら可愛い女の子に迎えられた方が良いであろう?」
「同意を求めないで戴けますか?それで、パンドラ殿はご在宅でしょうか?」
「うむ、リビングに居るぞ・・・後ろの二人、何時までそうしておるつもりじゃ。わしはもう隠居した身じゃ、その様に畏まる必要は無い」
マークスに付いて来た女性二人はアスタルを見てから膝を付いて頭を下げていた。
そしてマークス達がリビングへと入ると、女性二人はパンドラに謝罪を始めた。
「申し訳有りません、パンドラ様。私達が不甲斐ないばかりに戴いた機会を生かす事も出来ずにご迷惑をお掛けしてしまい・・・本当に申し訳有りませんでした!」
「・・・え?・・・・・何これ?・・・訳解かんねぇんだけど、誰か説明してくれる?」
見覚えの無い女性二人に行き成り謝罪されて戸惑うパンドラに、マークスが説明をした。
「パンドラ殿、この二人はミゲイルの妻と娘なのだ。本来ならミゲイルと共に処刑されている筈なのだが、アスタル様が秘密裏に匿い、ライオネル様にその後を任せたのです」
パンドラはマークス、と言うかガーランド家とレンフォール家の確執については詳しくは聞いていないが、その因縁はレイルの養父にまで遡ると言う事だけは聞いていた。そのせいで二人に対するマークスの態度は冷たい。
「ふ~ん・・・それで事の発端と為る俺の所に謝罪しに来た・・・だけじゃねぇんだろ?」
「はい・・・ライオネル様も処遇を決め兼ねておりまして、出来ればこちらで使って頂けないかと」
「おいおい、貴族の女性が下働きみたいな真似出来ると思えねぇんだけど。それとも俺が女宛がわれて喜ぶと思ってるとか?まさかと思うけどライオネルの奴、俺に喧嘩売ってんのか?あの野郎、ケントがケイオスに勝ったからって調子に乗ってんじゃねぇだろうなぁ」
一気に剣呑な雰囲気へと変わったパンドラに慌ててマークスが否定した。
「いや、違う!それだけは無いから落ち着いて下さい!この二人は国内では顔が知られ過ぎているのです。名前を変えて他国へ送れば不和の種にも為りかねません。その点この島でなら外部との接触も防げるのではと」
「・・・・・なるほどな。この件に関しては俺が原因みたいなもんだから引き受けるが、あまり当てにする様なら相談役を返上するって言っとけ。この程度の事も処理出来ないようじゃ、お前を降ろしてもう一度アスタルに国王やらせるぞ、ともな」
「・・・わし、もうやりたくないんじゃが・・・・・」
「そこはお前の教育不足だから諦めて責任取れって事で。マークスもあいつの事甘やかすなよ。命令だからって聞かなきゃいけない訳じゃないんだからな」
「あ・・・ああ、解った。ライオネル様の為なのだし、少しきつめに言っておこう」
マークスが帰った後、二人をアスタルに押し付けようと思ったが、使用人達から漏れる恐れが有る為に諦め、如何した物かと頭を悩ませるのだった。
ここまで読んで頂き有り難う御座います。