外伝 遺志を継ぐ者7
ケントが王都と西砦の中間地点に転移した頃、パンドラは自宅でタブレットを操作し、西砦と帝国内を衛星のカメラで捜索していた。
「ん~・・・西砦は千人前後か・・・これならケントだけで十分だな・・・・・え~っと・・・・・いたいた・・・移動中のは五百人で四ヶ所か・・・ベルトラン王国も舐められたもんだな。ガーランド家の噂位は聞いた事有るだろうに・・・・・俺の事は置いといてもドラグーン王国は如何するつもりなのかね?まさかケイオスに勝てるとか思ってんのか?知らないって事は罪だねぇ・・・さて、俺も行くとしますか」
パンドラは転移で西砦から一番近い帝国兵へと向かった。
ベルトラン王国に兵を向けると言う事がどう言う事なのかを思い知らせる為に素手のみで一方的に蹂躙し、その脅威を知らしめる為に逃げる者は追わずに帝都へと向かって行くのだった。
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「さて、先ずはサーチっと・・・・・・・ん?北側の街道を離れた所に五十人程の部隊が・・・チッ・・・ハンスの村を押さえる気か。確かにあそこは王都に一番近い食糧庫だ、それにパンドラさんに恨みを晴らすにも最適と言う訳か」
転移を使い部隊正面に出ると私は名乗りを挙げた。
「王家特務兵のケント・ガーランドだ!この国の兵士で有りながら王家に仇名す貴様等を誅伐する!!」
問答無用で魔法を放ち、混乱する兵士達を次々と倒して行き、身分証となる物を幾つか拾い集め死体を消滅させた。次に王都から西に一日程行った所へ転移し、自転車を出してサーチ魔法を使いながら探査漏れの無い様に西へと向かった。
砦迄に在る町や村を全て見て回ったせいもあり、西砦に着いたのは四日後となった。
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ケントの動きに合わせてか、パンドラが帝都に着いたのも四日後だった。
「お~いるいる。まぁ態となんだけどな・・・ククク・・・ハハハハハ!・・・楽しませてくれよ~帝都守備隊の諸君・・・ククククク・・・・・」
パンドラが態と逃がした兵士の報告により、集められた騎士及び守備兵三千名以上が帝都の東門前に集結していた。
「止まれ!今帝都は立ち入り禁止だ!急用で有るならば用向きを聞くが、そうで無いなら立ち去るが良い!」
「ククク・・・急用さ・・・・・俺の名はパンドラ!!ベルトラン王国永世名誉貴族にして王家相談役だ!!此度の侵略について皇帝陛下に謝罪と賠償を求めに来た!!そこを退けえぇい!邪魔する奴は命の保障はせんぞ!!」
「き、貴様が報告に有った化け物か!撃て!撃てぇ!!如何に強かろうと敵は一人だ!囲んでしまえば如何にでもなる!!」
指揮官の号令の元、帝国軍魔法兵士達の頭上に魔法陣が展開され、パンドラに向けて炎弾が放たれ着弾するが、パンドラに効く筈もなかった。
「ハハハハハ!!そんなしょぼい魔法が効く訳ねぇだろうが!本物の魔法って奴を見せてやるぜ!!」
パンドラが正面に翳した右掌へと光が収束して行き直径3cm程の玉が作り上げられた。
「死にたくなかったら正面の奴は今直ぐ退けな!!」
パンドラの掌から放たれた光の玉は音速を越え、斜線上に有る物全てを吹き飛ばし、焼き払いながら真っ直ぐに飛んで行き、城門に着弾すると大爆発を起こした。
目も眩む程の閃光と全てを焼き尽くし吹き飛ばす暴風が収まった時、二重の城壁はおろか、地面までもが直径20m近い球形に抉り取られていた。
「・・・ククククク・・・ハハハハハ!!まだまだこんなもんじゃ済まさねぇぞ!ごらぁ!!」
この時点で殆んどの兵は戦意を無くしていて、パンドラが進み始めると周囲を取り囲む様に付いて行き、時折散発的に攻撃を加えるだけになったのだった。
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一方西砦ででは、パンドラに倒された残りの兵の一部から齎された情報により援軍が絶望的だと知ったミゲイルが、帝国兵との混成部隊を率いて王都を目指して出発しようと城門前に集結していた。
「まだだ・・・先発隊が要所を押さえている筈だ。其方と合流すればこの国は我が物となる筈だ・・・・・」
「ミゲイル様!正面から何者かが接近しております!」
王家の者さえ押さえればと、出発の号令を掛けようとした瞬間、希望を断つかの様に一人の男が立ちはだかった。
「貴様・・・ケント・ガーランドだな・・・・・貴様の噂は聞いておるが、一人で如何にかなると思ったら大間違いだ!ガーランド家の者は一人も生かしておかぬ!覚悟せよ!」
「ミゲイル・レンフォール!建国に携わりし一族の者が何故牙を剥いた!陛下の命によりそなたを捕縛する!申し開きは陛下にするが良い!他の者には処刑命令が出ている!一人として生きて帰れると思うな!」
私はこの時、初めて自分の中に沸き上がる激情に我を忘れ、襲い来る敵兵の中へと身を投じたのだった。
ここまで読んで頂き有り難う御座いました。