表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/164

転生木箱の後日談10

少々時は遡ってケントとライラの新婚旅行の時の話になる。


地球に付いた俺達が本屋にガイドブックを買いに行った時の事だ。

特設コーナーが有って、そこに並んでいたのは半年程前に出来た『迷宮』のガイドブックだった。

最初はそう言うアトラクションかと思ったがどうやら違っていて、異界(天界と魔界)の神による人界の争奪戦が行われていたらしく、その最終戦が地球の日本で行われていたのだ。

詳しい事は省くが、俺はライラが楽しみにしていたこの旅行を邪魔した奴等の本拠地に乗り込んで、異界の自称神とやらに罰を与えたのだ。


二人は今の俺と似た様な存在、所謂魔力精神生命体だった為、二人から魔力と記憶の大部分、そして奴等が使っていた〝システム〟を奪い、三歳相当の身体にして名前を付けて奴等の使っていた異空間に放置したのだ。

その際、一般常識と魔法の基礎を勉強して置く様にとシステムの一部から作った水晶を渡して、全部覚えたらここから出してやると、暫くしたら迎に来るから仲良くする様にと言って地球に帰って・・・・・今まですっかり忘れていた訳だ。


まぁそう言う訳で迎に行ったのだが・・・・・俺が来るのが遅かった為に泣き叫んで暴れられて大変だった。子供特有の癇癪には本当に参る。いや、自業自得かもしれんがギャーギャー五月蝿いので取り敢えず口の中に飴玉を放り込んで、吃驚している間に二人を抱えて異空間を取り込み、転移して戻って来たのだが、今度は大はしゃぎだ。


部屋中を走り回って窓は叩くわソファーの上で跳ね回って床に転がるわで落ち着かせるのに一苦労だった。最終的に甘い物食わせとけば大人しく為る事は解ったが、甘やかすのも良くないし、何とか躾ないとと為った訳だ。


四、五歳児相当の女児と言えば、リリーと初めて会った時を思い出すが、あれはあれで問題が有ったし、これが普通なんだと思う事にした。


しかし何だな・・・見た目二十代後半の独身男性の家に幼女が二人・・・これって事案じゃね?アレスやライラは良いとしても、他の人にばれた時の事を考えると隠して置いた方が良いかもしれん。


何故この時俺は自分の経営する孤児院に預けると言う選択を取らなかったのだろう。もしかしたらライラが居なくなって寂しかったのかもしれない・・・いや、違う・・・・・一人で居ると試験場に居た時の・・・あのどす黒い感情が湧いてきて自分が自分で無くなってしまう事の方が怖かったのだ。


どんなに強大な力を得ても人の精神はそれ程強くはならない。それ故に時を越えて生きると言うのは耐えがたい苦痛だろう。自称神がたった一人の女性を思い続け、蘇らせる為に取った行動は許せるものではないが、その気持ちの一部は今なら理解出来る気がした。


天神や邪神も一人で居る事に耐え切れず精神が変調をきたし、その強大な力を振るい続け自らを神と偽り、お互いが出会ってからはあの白と黒の何も無い部屋で生きてきたのだ。


だから俺はこの子達を真っ当に育てなければならない。お互いを監視し合い間違った行動を取るならばそれを正せる存在に。それが俺の為でも有りこの子達の為でも有るのだから。


その時ふと頭を過ぎった。


神と言う・・・〝大いなる意思〟と言う者が存在するならば、俺がこの世界に召還された事が全てこの為だったのではないのかと。


強力無比な力を持ち、道を誤った者を正す為に神によって使わされた存在・・・・・


そんな事を考え込んでいると二人が俺の顔を覗き込んで来た。


「お兄ちゃんどうしたの~?」「どこかいたいの?だいじょぶ?」


はっと我に返り頭を振った、その考えが拙いのだと。


「ああ、大丈夫だぞ。二人共優しいな、ありがとう」


そう言って二人の頭を撫でてやると、二人は俺の横に座り抱き付いて来た。

俺は二人の頭を撫でながら安堵の息を漏らした。大丈夫だ、ライラの時の様にこの子達を守りながら育てて行けば、俺は俺のままで居られるのだと。

ここまで読んで頂き有り難う御座います。

ライラとケントの新婚旅行で何が有ったのか詳しく知りたい方は、別作品の「魔王城603号室」をお読み下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ