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転生木箱の後日談9

リリーの話をしようと思う。


リリーは俺が教会と孤児院を買い取った時の最年少で、絶対音感を持った美少女だ。孤児達や元神官の教師達の運命を決める事になった一言を発した彼女は、孤児院のムードメーカーでもある。

彼女はピアノの曲を好んでおり、俺が彼女の成長に合わせて身体に合ったピアノを与える事によりその才能を開花させて行った訳だが、そんな彼女の人生を変える出来事が先日起こった。


ケントとライラの結婚式である。


二人の結婚式をパレード等で出来るだけ派手にやろうとしていた俺は、二人の反対により断念。せめて華々しくと思い、祝宴の席でリリーに演奏を依頼したのである。


リリーは孤児院と俺の家以外で演奏する事自体が初めてで、しかも王侯貴族の前と言う事もあり緊張していたが、二人に恩を返したいと言う思いからプレッシャーを跳ね除けて素晴らしい演奏を披露し、見事にやりきったのだ。


そして、その時の演奏が気に入られて結婚式に参加した貴族達の御茶会や晩餐会等に呼ばれる様になって行き、更に噂が噂を呼んで引っ張りダコと成ったのである。

普通に考えれば宮廷楽師とか、貴族お抱えの音楽家とかが居るもので、平民の、しかも孤児なんて早々呼ばれる筈が無いのだが・・・・・


まぁ要するにまた俺がやらかしたのである。


先ず音楽や絵画等の芸術と言った文化が未発達だった事。

そして楽器の種類自体が少なく、ピアノなんて存在していなかった事が一番大きな原因だ。


この世界でたった一つのピアノに、たった一人の演奏者。


これに飛び付かない貴族が居ない訳がない。


後見人の俺がケントとライラを新婚旅行に連れて行っている間に彼女を囲い込もうと水面下で激しい攻防が続き、連日孤児院に貢物が届き、帰って来た俺が混乱するリリーと教師達を落ち着かせ、アスタルに助力を頼んで貴族達に御触れを出して諦めさせた。『彼女はこの国の宝であり、彼女の自由を奪う事はその才を潰す行為であると同時に、彼女の後見人である王家相談役のパンドラ殿の不興を買う事と知れ』と。


これで騒ぎは収まったが貴族達の不満が減る訳でもなく、仕方なく月に一度王城で演奏会を開き、高位の貴族から順に週一でと制限を付けて向かわせた。護衛にアレスを付けてだ。


この頃ガーランド家にはトールとリックが門番として雇われていて、マークスに頼んで二人を返して貰おうとしたのだが、本人達に拒否された。

なんでもマークスも二人を騎士に取り立てるつもりだったのだが『ケント兄さんとライラ姉さんに恩返しをする為に門番になったのであって、他で働く位なら孤児院の警備員に戻る』と断られたんだとか。義理堅い話である。


それはさて置き当のリリーは空いた時間を学校で音楽の教師として使い、孤児院の運営に携わる事になった。当然の様に国中の貴族がお抱えの音楽家を送り込んだが、リリー程の才能を持った者は居らず、彼等の思惑通りには中々行かなかった。


そして殆んどの貴族達はピアノを求めてパンドラの箱へ来るか、ハンス商会へ俺に取り次ぐ様に言って来たのだが、弾く事はおろか調律も出来ないのに買って如何するんだ?と聞くと、先ず持っている事が大事なんだそうで、家の店の土地代と同じ金貨千枚を吹っ掛けてやったのに、高位所か中位の貴族まで買って行きやがったのだ。どいつもこいつも見栄っ張りである。


そんなこんなで慌しくしている間にライラが妊娠して、ケイオスとケントの勝負は出産後にライラの経過を見てからとなった。勿論ケントにはまだ内緒だ。


そしてライラに生まれた子供達の名前を付けてくれと頼まれたのだが・・・・・


「二人の子供の名前かぁ~・・・・・そうだな、男の子は『ヘリオス』、女の子の方は『セレネ』でどうだ?」


「有り難う主様。あ、私とアレスさんの時と同じで地球関係の名前?」


「ああ、地球の神話に出てくる神の名前なんだ・・・が・・・・・あぁっ!!・・・やべぇ・・・・・忙し過ぎてすっかり忘れてた・・・・・」


「えっ!?なに?何か問題あるの?何なら別の名前でも・・・・・・・」


「いや、名前の方は問題ないぞ、うん。まぁあれだ、俺が個人的に忘れていた事を思い出しただけだから心配するな」


ライラを適当に誤魔化した俺は、一年以上忘れていた者達を迎えに行く事にしたのだった。

ここまで読んで頂き有り難う御座います。

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