転生木箱の後日談8
ライラが帰ってこない。
当初予定していた半年と言う期限を越えてもライラはドラグーン王国から帰ろうとしなかった。
衛星で監視をしているので居場所は常に把握しているのだが、城の中で何をしているのかまでは解らないので、訓練で外に出ている時以外は殆んど何をしているのかは解らない。
まさかこのまま帰って来ない何て事は無いよな・・・・・
なんて心配をしていたが、一年程でドラグーン王国を出発し、ベルトラン王国へと入国。そのまま王都へ向かうかと思いきや、今度は王国の東側から南へと町や村を回って更に西側を回ってから王都に入った。壮大な寄り道である。
結局島へ戻って来たのは出発から約二年後だった。
「ただいま!主様!遅くなってごめんなさい」
元気良く挨拶をして部屋へと飛び込んで来たライラの見た目は、大人の女性と然程変わらない位に成長していた。
「あのね・・・遅くなった理由なんだけど・・・・・」
ちょっと申し訳なさそうな顔をしながらも、話し始めれば楽しかった事を全身で表す様に、身振り手振りで話すその様は以前と何も変わらなかった。
遅くなった理由なんだが、先ずケイオスから一本取る迄帰らないと決めていたんだそうだ。
そしてベルトラン王国を回って来たのは北方交易都市でケントの噂を聞いたからだそうだ。
北方交易都市を出た後に寄った町や村でも同様にケントの噂を耳にして、ケントがどれ程の事をしたのかを知りたくてベルトラン王国を回ったのだと言う。
「ケント君凄いよね・・・・・私が自分の事だけやってる間に国中の人達を助けて回ってたなんて・・・・・・私・・・師匠なんて呼ばれてるけど全然敵わないや・・・・・確かに自称神を倒した時に私も手伝ったけど・・・主様に付いて行って言われた通りに動いただけだし・・・・・・・」
「まぁそう腐るな。あいつが・・・ケントが強く成りたい、強く成ろうとしている理由知ってるか?」
「えっ?・・・・・聞いた事無いけど・・・ガーランド家の跡取りとして国や国民を守りたいからじゃないの?」
「まぁ知らないよな・・・・・お前だよライラ。お前に追いつきたい、隣に並ぶのに相応しく成りたい。唯それだけの為に俺に師事したんだ。ずっとお前の事を見てきたんだぜ、あいつは」
「・・・・・それって・・・その・・・私の事が好きって事?」
「ああ、そうだ。そのうち告白してくるだろうけど、その時お前は如何する?俺はあいつにならお前を渡しても良いと思ってる。と言うかあいつ以外には絶対に渡さん。例えお前に好きな奴が出来たとしても俺は認めねぇ。ケント以上にお前に相応しい奴なんか居る筈が無いからな」
実際問題恋愛感情と言う物に疎いライラにアタックしても、殆どの奴は気が付かれないか挿げなく断られるだろう。既に今回の一人旅の間に何人か撃沈していてもおかしくない気もする。
「・・・・・わ、私もケント君となら・・・良いかも・・・・・・・」
「まぁ今直ぐどうこうって話じゃないけど、お前が良いならあいつの気持ちに答えてやると良い。ああ、お前学校に『作法』習いに行ったらどうだ?貴族の付き合いとかで必要になるだろ。平民同士なら問題ないけど貴族相手なら上級まで習っておいた方が良いと思うぞ」
それからライラは学校に週一で通い、宮廷作法を身に付けて何時でも来いと身構えていたが、ケントが告白するまで三年掛かったと言う。
「主様ぁ・・・ケント君何時になったら言って来るのかな・・・・・」
「・・・今日もお前に負けてたしなぁ・・・・・魔法使えばお前に勝てるけど、それじゃ納得出来ないんじゃねぇか?まぁ気長に待つしかねぇだろ」
ケントの強化作戦は順調だが、最終目標であるケイオスはまだまだ遠い。二人と言うか、ライラにゃ悪いが、もう暫くは越えられない壁として存在して貰うとしよう。
俺はケントがケイオスを越えた時に、裏から手を回して告白せざるを得ない状況を整える事にしたのだった。
ここまで読んで頂き有り難う御座います。