転生木箱の後日談4
パンドラ島の屋敷の前に着くと正面の砂浜でケントが素振りをしていた。
「お、やってるやってる。お前達、彼は俺の弟子でガーランド家の跡取りのケント君だ仲良くやる様に」
子供達は突然変わった景色に戸惑いながらも「はい」と返事をした。
俺と子供達が近づいて行くと、ケントは素振りを止めてこちらにやって来た。
「パンドラさん、お帰りなさい。その子達は如何したんです?ここの見学とかですか?」
「まぁ縁あって暫く預かる事になったんだが、ちょっと訳有りでな。元教会併設の孤児院の子なんだが・・・・・まぁ普通じゃ無いと言うか、子供らしさが無いんで家で色々体験させようと思ってさ。それで、ライラは?」
「ライラ師匠なら夕食の材料を捕りに沖に泳いで行きましたよ」
「ああ・・・それでお前はライラの水着姿にクラッと来てしまい、雑念を晴らす為に素振りをして自分を誤魔化していたと。若いから仕方ないかもしれんが、いい加減慣れろよ」
「ち、違いますよ!止めて下さい、人前でそう言う事言うのは!」
「じゃあ何で魔力操作の訓練してねぇんだよ。俺は素振りしろなんて言ってねぇぞ」
「そ、それは・・・その~・・・・・」
「正直に言ったらライラの等身大抱き枕をくれてやるんだがな~」
「な、何ですかその怪しげな物は!そんな物持って帰ったら家の者達に白い目で見られるじゃないですか!」
「いや、寧ろ生暖かい目で見られると思うぞ。ジェシカ辺りは自分も欲しいとか言いそうだけど」
「・・・ほんともう止めて下さい・・・後ろの子供達の冷たい視線が心に刺さるんで・・・・・」
「ああ、この子達はこれが普通なんだ。言ったろ子供らしくないって」
等とケントをからかっていると、沖の方から真っ直ぐにこちらへ向かって来る魚の背びれ?が見えてきた。
おそらくはライラが仕留めたのであろう体長3mを超える巨大な魚・・・と言うか多分魔物に子供達は脅え、身を寄せ合い固まった。
物凄い勢いで浜辺に向かって来る巨大魚が水から上がると、その巨体の下には下半身以外殆んど隠れたライラがいた。ノシノシと砂浜を歩くその様は巨大な魚の形をした頭の怪物だ。
「あ、主様お帰りなさい。見た事無い奴が居たんで捕ってきたけど、食べられるかな?」
「おう・・・・・アラって魚に近いから大丈夫だ。今夜は刺身と鍋に決まりだな」
「むふふ・・・どんな味か楽しみ~。それで後ろの子達は如何したの?」
見た目が結構アレな魚なんだが・・・・・相変わらず食に対してチャレンジャーなライラだった。
「ああ、この子等は暫く家で預かる事になった。それでお前にも世話を頼みたいんだ。俺はまだ行く所があるから、帰って来るまで相手してやってくれ」
「は~い、解りました」
俺はライラに脅える子供達と、脅えられて落ち込むライラを宥め、双方のフォローをケントに任せてアスタルの所へと向かった。
王城へと入りアスタルに取次ぎを頼んで待つ事十数分、執務室へと通され事の経緯を話した。
「ふむ、守備隊からの報告通りじゃな。あの土地を売る事に問題は無いし、孤児院を経営してくれると言うのも有り難い話じゃが・・・そなたには借りばかりが増えてしまうのう・・・・・」
「そんなの気にすんなって。教会が撤退したのは俺のせいみたいなもんだし、その後始末なんだからさ。寧ろ今まで気が付かなかったせいで孤児達や元神官達に辛い思いをさせちまった訳だしな」
「ならばせめて土地代の方を安くさせて貰おうかのう。ジェラルド、あそこは金貨三千枚程であったな」
「元教会と孤児院と言う事で借り手も居らぬでしょうし、二千五百枚でどうでしょうか」
「ふむ、それで良いかな?パンドラ殿。他にも何か有れば遠慮無く言ってくれて良いぞ」
「まぁ金の事はどうでも良いんだが・・・・・そうだな、子供達の事なんだが、なんて言うか子供らしい感情が無いんだよ。教会の教えに基づいた教育をされてたせいでさ。それで今は元神官達と離して俺の島に連れて行ったんだけど、何か良い案は無いか?」
「子供らしさか・・・・・わし等は良く城を抜け出して街の散策に出たものじゃが・・・・・」
「そうですな・・・何とも懐かしい話ですが・・・・・見るもの全てが新鮮で感動し興奮したのものです」
「おお!そう言えば最近はパンドラ殿の生み出す物がそれに当たるのぉ。そなたの家で聞かせてもらった・・・〝クラシック〟と言ったか?あれには感動し心が震えたぞ!」
「ああ・・・確かにあれは素晴らしかったですなあ・・・・・」
「ふむ・・・・・先ずは音楽で攻めてみるか・・・その後は個々の適正を見て其々の道を選ばせると言う方向で行って見るとするかな。有難う参考になったよ」
子供達への教育方針を決めアスタルの元を辞去した俺は、俺の物となった元教会へと向かった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。