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外伝 遺志を継ぐ者6

王城の廊下をコツコツと足音を響かせて陛下の執務室へと向かって行く。


私がライラと結婚して二年が経った。

半年前には双子が生まれ、ライラの希望でパンドラさんに『ヘリオス』と『セレネ』と言う名前を付けて貰った。

どちらもパンドラさんの居た世界、地球の神話に出てくる神の名前から取ったと言う。


地球と言えば新婚旅行を思い出す・・・・・巨大な建物や人々の群れに奇妙な乗り物・・・全てが新鮮で興味深く、多彩な文化に圧倒された。


何故か世界の命運を賭けた戦いに巻き込まれた(と言うかパンドラさんが嬉々として首を突っ込んだ)のだが、それも今では良い思い出だ。


それはさて置き、ベルトラン王国は発展の一途を辿り、大陸一の大国と呼ばれる様になると共に世界一安全な国とも呼ばれる様になった。


だが、他国では今だビブリエ旧教派の教えが根強く、特に西のユリシス帝国では皇帝が敬謙な信徒と言うのもあり、ドラグーン王国の独立を未だに認めていない。

更にはドラグーン王国と同盟国である我が国に対して不穏な動きも有ると聞く。

今日の陛下からの呼び出しもおそらくその件に関してなのだろう。




「王家特務兵ケント・ガーランド只今参りました」


「うむ、ご苦労。急な話じゃが、そなたには西方防衛砦に向かって貰いたいのじゃ」


「ユリシス帝国で何か動きが?」


「ユリシス帝国も、じゃ。昨日ジェラルドの放った間者から報告が来た。レンフォール卿が帝国と手を組み、我が国を攻める手筈を整えておるそうじゃ」


「畏まりました。では、一人残らず消して参りましょう」


レンフォール卿が謀反を起こせば情けは掛けるなと、騎士団長の父上からも言われている。


「レンフォール一族と奴に与する者は消して構わん。じゃがミゲイルは生かしたまま捕らえよ。パンドラ殿の温情を無碍にした奴だけはこの手で始末せねば気が済まん」


「陛下・・・・・」


「明朝守備兵を百名先発隊として送る手筈になっておるが、到着まで十日は掛かるであろう。そなたを一人で送る事になるのは心苦しいが、そなたに付いて行ける者は居らんし、一刻の猶予も無いのじゃ。パンドラ殿の助力が必要であるならわしが直接交渉しよう」


「いえ、それには及びません。パンドラさんには話はしておきますが、西砦の方は私一人で十分ですので」


「そうか・・・では、そなたに西方防衛砦における謀反の鎮圧、並びに首謀者の捕縛を命ず」


「ハッ!」


私は陛下の命を受け執務室を後にしてパンドラ島へと向かい、パンドラさんに事の説明をした。




「あ~・・・はいはい、そんな奴も居たっけなぁ・・・・・もう十年も前の事だし、あんな小者の事なんてすっかり忘れてたわ」


その十年もの間、逆恨みを拗らせて謀反まで起こしたと言うのに、この人にとっては些細な事だったらしい。

少しレンフォール卿に同情してしまった。


「ん~・・・・・そうだな、マークスに城の守り・・・と言うか陛下達の守りの強化をする様に言っとけ。守備隊とか騎士団に元レンフォール派の奴が残ってた筈だし、そいつ等の監視もしといた方が良いかもしれんな」


「え?そこまでする必要が有りますか?彼等の普段の職務を見た限りでは、そうは見えませんでしたけど」


「忘れてた俺が言うのもなんだけど、お前こそ十年前の事忘れたのか?あいつは私怨だけでガーランド家にも兵を向けたんだぞ」


「あ・・・・・」


「ガーランド家の方は門番のトールとリックに任せとけば大丈夫だが、いざと為ったらここに逃げ込む様に言っとけ。この家なら早々侵入出来ないし、直ぐにアレスが気が付いてくれる。それとライラには城に向かう様にともな」


トールとリックとはパンドラさんの教えを受けた私にとっては弟弟子の様な存在で、二年前から家で雇っている門番だ。


「解りました・・・・・アレスさんがって事は、パンドラさんは何処かに行くんですか?」


「ククク・・・・・決まってんだろ・・・敵の本丸を叩くんだよ・・・ククククク・・・ビブリエ教国の聖都に行った時の事を思い出すぜ・・・・・今回は犠牲を出さない様に気を付ける必要も無ぇし、久しぶりに暴れさせて貰うぜ!ハハハハハ!!」


ユリシス帝国の皆さんご愁傷様です。恨むならミゲイル・レンフォールに唆されて派兵した皇帝を恨んでください。


「て、帝都を更地にする様な真似はしないで下さいね」


「ははは、幾らなんでもそこまではしねぇよ。流石に一般人に直接危害は加えないって。まぁ教会と城は潰してくるけどな。で、お前は明日にでも出発するのか?」


「ええ、明日の早朝に王都と西砦の中程に転移するつもりです。斥候や先発隊が居ないとも限りませんから」


「そうか、じゃぁ俺は砦から西側、帝都までの道を綺麗に掃除しておいてやるよ。その後帝都で一暴れして、皇帝攫った後にミゲイルを引き取りに行ってやる」


「それは助かりますけど、パンドラさんは西側に行った事ありませんよね?転移出来るんですか?」


「ああ、以前打ち上げた衛星のGPSからの位置情報とカメラからの映像で転移出来るから問題ねぇよ」


パンドラさんは『タブレット端末』を取り出して私の目の前でひらひらと振った。


「はぁ・・・それ便利そうで良いですよね。私も欲しいですけど『オーバーテクノロジー』過ぎるからダメなんですよね?」


「まぁな。お前なら大丈夫だとは思うけど、俺以外の奴には使わせらんねぇよ」


パンドラさんの家を出た後に城へと戻ると、陛下と父上にパンドラさんと話した内容を報告。

そして自宅へと戻ると屋敷の皆に注意を促し、万が一の場合の行動を指示した。


そして翌早朝。パンドラさんから戴いた収納鞄を背に、屋敷の皆に見送られ転移で西へと向かった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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