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外伝 遺志を継ぐ者5

二十歳になった僕は最近二つの事に頭を悩ませている。


十五歳から国内を廻り問題を解決して、十八歳の頃にはベルトラン王国は世界一安全な国と言われる様になっていたが、周辺国、特にビブリエ教国は宗派が分裂し、旧教義派が他国で権力者と組んで攻め込んで来る等、教会の発言権の大きな国は荒れ、その煽りを受けて難民が多発し、ベルトラン王国へと流れて来た。


そうなると当然の様に治安は悪化し、陛下の命を受け僕が出動する訳である。


勿論パンドラさんに相談した事も有る。でも彼に『そいつはアスタルとお前達の仕事だろ』と言われてしまい、確かにその通りだと思った。


そしてもう一つは、ここ二年程王都に居るとやたらと『夜会』や『晩餐会』の声が掛かり、忙しいと逃げ続けていたら直接『見合い』の話が次々と舞い込み、父上と母上にも『そろそろ身を固めろ』と言われてしまった事だ。


多分ジェシカが昨年ハーグス家の三男に嫁いで行った事で母上が暇になった事も関係しているのだろう。


尤も『ガーランド家』や『パンドラさん』との縁を結びたいが為の縁談で、僕個人で有る必要は無いのだから全て断っているが正直限界だろう。


「多少の不安は有るが・・・・・覚悟を決めるか・・・・・・・」


僕は意を決してパンドラ島へと向かい、パンドラ邸でパンドラさんとライラ師匠と向かい合って座った。


「で、俺達に話が有るって何だ?何か重要な案件か?」


「はい・・・僕個人にとってですが・・・・・その・・・ライラ師しょ・・・いえ、ライラさん!僕と結婚して下さい!!」


言った・・・遂に言ってしまった・・・ライラさんのパンドラさんへの気持ちは知っているし、パンドラさんがライラさんを娘の様に可愛がっている事もだ。だがもう後戻りは出来ない『私と戦って勝てたら』とか『俺に一発殴らせろ』とか言われるだろう事も想定済みだ。


「うん、良いよ。って言うかケント君、もっと早く言ってくると思ってたから待ちくたびれちゃったよ」


「だよなぁ。追い詰められてやっととか意外とへタレだよな」


「・・・・・・・えっ?・・・あれ?それだけ・・・ですか?・・・・・・・えええぇぇぇ!!い、良いんですか!あ、いや、そんな簡単に?!え、僕騙されてる?!」


「何だお前、失礼な奴だな。お前騙してどうすんだよ。それとも何か、ライラに何か不満でもあんのか?」


「いえいえ、滅相も無いですよ!てっきり僕じゃ相応しくないとか言われると思ってたから・・・その・・・最悪力ずくで奪う位の気持ちだったもので・・・その・・・拍子抜けしたって言うか何と言うか・・・・・」


「・・・力ずくって・・・主様相手に?勝てる訳無いのに・・・・・ありがとう・・・凄く嬉しい・・・・・」


俯き頬を染める彼女はとても可愛らしくて、つい見蕩れてしまった。


「今更顔合わせとかも必要ないし、結婚式の準備とかも有るから今日からライラはガーランド家に住んじまえ。荷物は収納鞄に入るしな」


「は~い。それじゃ準備してくるからケント君はちょっと待っててね」


「えっ?!あの、ちょっと!行き成り展開が早過ぎますって!僕にも心の準備がですね・・・って、ライラさ~ん!ちょっと待って~!!」


忘れていた・・・この人達に一般的な常識が通じ無い事を・・・・・


こうして僕は生まれて初めて心の底から欲しい者を手に入れる事が出来たのだった。






「だ、か、ら!パレードなんて出来ないって言ってるでしょう!!家より上位の貴族でもやらないのに出来る訳ありません!!」


「馬鹿野郎!そんな常識に捕らわれてんじゃねぇ!ライラの晴れの舞台なんだ、目一杯派手にやんぞ!そうだ!ゴンドラに乗って飛行船で王都一周なんてのも良いな!」


「ダメですって!ライオネル様の時より派手にとか無理ですから!普通に自宅でやるんです!!」


「何言ってんだ!『救国の英雄の子孫』で国中回ってアスタルより顔を知られてるお前が普通とか有り得ねぇだろ!大体王家を含めた貴族連中だって俺とガーランド家に文句言う奴なんざ居やしねぇから大丈夫だって!」


誰かこの人の無茶振りを止めて下さい・・・・・・・・・・


僕の言う事は聞きそうに無いのでライラさんに説得を頼み、普通に自宅でする事になり胸を撫で下ろした。

何だかんだ言ってもライラさんには甘いのが功を相したのだが・・・・・


「ライラが嫌なら仕方ないか・・・・・じゃぁ新婚旅行は何処にする?」


「は?・・・・・何ですそれ?聞いた事が有りませんけど」


「ああ、こっちにゃそう言う風習無かったな。まぁ結婚記念に観光とかして二人の思いで作るんだよ」


「観光ですか・・・・・でも、今はベルトラン王国とドラグーン王国以外の何処の国も荒れてますし、見て回る所なんて有ったかなぁ・・・・・・・」


式の事も有り、僕も少し譲歩しようと考え込んで居たのがいけなかった。


「あっ!私、主様の生まれた世界を見てみたいかも!」


この世界に神など居ない事は知っていたが、パンドラさんを止められる唯一の存在が言い出した事を止められるとすれば、それは神だけだと天を仰いだ。


「おお、そりゃ良い考えだ!向こうはこっちと違って色んな物が有るし、見て回る所も多いから楽しめるしな!早速世界中の観光地を廻るプランを考えねぇと!」


もしかしたら僕は早まってしまったのだろうか。

この二人の組み合わせは危険だ。ライラさんの願い事ならばパンドラさんは何が何でも叶えるだろう。

事実、彼にはそれだけの力が有るのだから・・・・・・・


「あの・・・そんなに長い間仕事を休む訳には行きませんから・・・・・・・」


それが僕に出来る精一杯の抵抗だった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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