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転生木箱の後日談1

この星、奴が『箱庭』と呼んでいたこの世界は案外狭く歴史も浅い。


『システム』に残った記録によると創られてから一億年程で、奴の有り余る魔力を注ぎ込む事で様々な生命体を生み出し、進化させる事で『人』を創り出した。

最初に生まれたのはトカゲから進化した竜種で次に獣種。更に時が進み獣種からの派生でエルフやドワーフを含めた魔族種が生まれ、最後に人種が生まれた。

ここで魔力による進化の促進が止まる。過剰な魔力によるDNAの異常体が生まれ始め、それは人とも魔物とも言えない唯生きているだけの肉の塊でしかなかったからだ。胸糞悪い話である。


そして緩やかに時は流れて固体として弱い人種は集い村を作り、やがて町から国へと発展して行った。


人種の歴史は千五百年程で、最も古い歴史を持つ国がビブリエ教国の八百年程だ。この事から解る様に、短い期間で発展して来た経緯に度々奴が介入しては魔法や錬金術の手解きをして来た事が挙げられる。


冒頭でこの世界は狭いと言ったが、星自体の大きさは地球の1/5程で大陸も一つしか無く、その形は日本の本州に近い。それ以外は幾つかの島が有る位で全て海と、本当に狭いが一周した者は居ない。そもそもこの世界が球形をしていると認識している者が居ないからだ。奴の介入によって様々な過程をすっ飛ばして発展してしまった弊害で、天動説や地動説と言った概念すら無い。

更に科学と言うか物理学も無い。奴の介入した魔術や錬金術はそこそこ発展していて冷蔵庫や電燈の様な魔道具は有るのにポンプどころか水車すら無く、粉を挽くのも石臼を使って手で挽いている有様だ。

ガーランド家の調理場で胡椒を擂鉢で挽いているのを見た時は本当に驚いた物だ。


長々と説明をして来たが何を言いたいかと言うとだ。


パンドラの箱で売っている調理器具(手動のミキサーやミートチョッパー等)や三輪自転車ですらこの世界ではオーバーテクノロジーで、既にかなりやらかしていたって事なんだが、既に歪な進化をした世界だし、これから更に歪な進化を遂げるのもこの世界なら有りかなと思い、このまま放置する事にした。まぁいざと為ったら俺が介入して関係者の記憶消去をすれば済む事だしな。


因みに俺の失った記憶は見付からなかったが、俺が転生した理由はシステムのログに残されていた。奴の新しい試みの『魂の召還プログラム』の誤作動で死亡直後の俺の魂が召還されたんだが、そもそも未完成で起動させるつもりも無く、誤って起動させてしまった為に制御が出来ずに試験場の木箱に転生してしまったと言うのが真相だ。奴の言っていた『予想外で予定外』とはこの事らしい。全く持って迷惑な話だが、そのせいで力を奪われ封印されたのだから自業自得である。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



俺が奴を倒し封印してから半年が経った。


俺は南の島改めパンドラ島でのんびりしつつ、ケント君の面倒を見たりパンドラの箱やハンスの村へ様子を見に行くと言った日々を過ごしていた。

ライラは造り替えた家で家事をしつつアレスや島の畑仕事を手伝ったり、海へ魚(結構やばげな魔物を含む)を取りに行ったりケントの稽古に付き合ったりと精力的に動いている。

アレスは当初魔族と言う事も有り、島民から避けられていたが、俺の助言により肩や頭にヒヨコを乗せて散歩している所を目撃されてから島民に受け入れられる様になった。


新しい家には星の記憶に有った魔力発電装置を設置し、照明や冷暖房は勿論、給湯器やコンロにオーブン、オーディオ等の思いつく限りの家電を取り揃え、日本に居た頃より充実した生活を送っている。


そうそう、日本と言えば使徒で日本へ帰ったのは玄田以降に召還された二人だけだった。勿論帰す時にスキルや記憶等はシステムを使って消させて貰ったが、これが帰りたくない者達の一番の理由で、他の主な理由は最終学歴が中卒になり就職は厳しいし、今更勉強したくないと言った物だった。

まぁ、こっちに残れば俺やハンスの所で働けるし、玄田でさえ五年も居て慣れたと言うのも有るのだろう。


ベルトラン王国内では北方防衛砦改め北部交易都市の周辺で廃村になった所から再建が始まり、力を貸して欲しいと言われたが断った。俺がやったら手伝いじゃなくなるしな。

この時ジェラルドが俺の家に来たのだが、魔力発電装置を売って欲しいと言って来たがこれも断った。オーバーテクノロジー過ぎて理解は出来ないだろうが万が一にも悪用されないとも限らないからだ。アスタルが退位したらここに住みたいと言ったので自分で家を建てるなら良いぞ、と許可は出したが空調目当てなのが丸解りだったので多分来る事は無いだろう。


ハンス商会は塩の独占で業績を伸ばし、村を作った時に使った資産を軽く取り戻した。最近では周辺国からも買い付けに来ていると言う。兎に角人手が足りないとホレスに泣きが入っていたが、未曾有の好景気に人が集まり始めているので近い内に何とかなるだろう。


魔族への差別や迫害は中々無くならないが、少なくとも王都ベルトラでは殆んど無くなって来ている。これは王家が率先して使用人を採用した事もあるが、ハンスや俺が雇い入れた事で街中を魔族が歩き回る様になった事が大きいと思う。タニアが意外と人気が有って驚かされたが、それが庇護欲から来ているのかドジッ娘萌なのかは知らん。


この島へのアクセスはハンス商会とガーランド家の裏庭に転移陣を用意し、出入りは基本自由にして在るのだが・・・・・一度だけ馬鹿王女が来た以外は特に問題は起こっていない。勿論馬鹿王女は俺が転移で城に送り届け、島への出入り禁止にした。ガーランド家の方はアイリスが止めてくれるが、ハンス商会の方は身分的に止められないので魔力認証システムを導入し、特定の魔力を持つ者(馬鹿王女だけだが)が転移陣の有る建物に近づくと転移陣が起動しないようにした。


ある日商品の補充を兼ねて店の様子を見に行くと、玄田に相談を持ちかけられた。


「ここ数ヶ月前からうちで働きたいって言う人が増えきたんですけど、うちは間に合ってるんでハンスさんの所に行く様に言って断ってるんですよ。向こうは人手不足だって言ってましたし」


「まぁ即戦力になるならホレスが喜ぶだろうし、その対応で良いと思うぞ」


「ええ、実際使える人も結構居たんですけど・・・・・例の元大商会傘下の商会の三男坊とか元商会員とか扱いに困る人も居るみたいなんですよね」


「何だ、あの豚野郎まだ懲りてねぇのかよ。今は西地区に移転したんだっけか?特に実害無いならほっといて良いけど、いざと為ったら消しちまうか」


奴の商会はパンドラの箱が開店して三ヶ月後に隣の食堂が閉店し、例の捜査騒ぎで客足が減った本店も同時に西地区へと移転。商会規模は1/3以下になっている。


「取り敢えず宰相様に相談したんで暫くは様子見ですかね」


「そうだな、出来るだけ合法的にやりたいしな・・・・・って、じゃぁ何で相談したんだ?」


「いやぁ隣も正面も開いたままになってるでしょ?パンドラさんはここ以外に何かやらないのかなと思って」


「何かって・・・お前なぁ簡単に言うなよ。何やるにしても人手が足りないだろ。人材育成にしたってこれ以上ホレスの仕事増やしたらあいつ倒れるぞ」


「あ~確かに・・・・・じゃあ、うちの食堂と雑貨屋を別にするとかはどうですかね?隣が潰れてうちにお客が結構流れて来てるんですよ」


「で、隣の規模でうちの食堂独立させたら近隣の食堂が次々と潰れました~となる訳だ。うちの席は足りない位で良いんだよ、その分缶詰が売れるんだから」


現状商品は俺の魔力で作っている為、金は貯まる一方なので使うのは構わないのだが、敵対している訳でもないのに潰れたら後味が悪過ぎる。


玄田からの報告を終え、店の窓から周囲を見渡す。

確かに正面と隣が空いたままで、うちの店を相手にする商会も居ないだろうし、お金も余っているので何か考えておく事にしてハンス商会へと向かった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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