夢
---ふと眼が覚めると、シングルベットがいつもより広く感じた。カーテンの隙間から射す光に目を凝らし、両腕をピンと伸ばしてうんっと一呼吸する。窓とは反対側を見てみると、私の寝相の悪さに床へと落とされた愛しい彼が見えた。
「ごめんなさい」と小さく呟いて笑った。いつも寝相が悪い私を危惧して、彼は必ず窓際に寝るのだが、昨日は彼の帰りが遅く先に眠ってしまったのだ。
彼のそばに座って彼の肩をつんつんっと突いてみる。眉間にしわを寄せて呻く彼。私が一番好きな寝顔。
さらに突いていると彼が苦しそうに悶え始めた。
ひどく心配になって体を揺り起こすと、薄く目を開けて私の寝癖のついた姿をその瞳に映し出す。
「げほっ、げほっ」
「え、ど、どうしたの?大丈夫っ?」
そのまま彼は咳き込み続け、最後には口から何かを吐き出した。
それはカーテンから零れ出る太陽の光を浴びてひどくキラキラと輝きを放っている、大きな大きなダイヤの指輪。
彼はにやりと笑っているが、その訳のわからない状況に眉間に皺がよったのは言うまでもない。
そうしてその光は私の目をチカっと照らして---
そこで目が覚めた。なんだ、夢か。そうして体を起こすとシングルベットは相変わらず狭いままで、隣には私の顔を覗き見る彼がいた。
変な夢でも見た?なんて聞くから、今朝見た夢の話をして、笑っちゃうでしょなんて寝起きの彼の頬を軽くつまんだ。
今日はお休みの日。きっとまだもう少し二人でごろごろ眠りにつくのかもしれない。そうしてこんな話に耳を傾け聞いてくれる彼。
「でもそれさ」
「ん?」
「ほら」
「え、」
「正夢になっちゃったね」
夢の中で出てきた大きすぎる不恰好なダイヤのついたものとは違ったけど、夢で見たものより遥かにキラキラしていて、なんだか暖かくて心が満たされてしまった。
「結婚しよっか」
夢の中で見たにやりと笑った彼がそこにいた。