Adventure rforumbox ~ギルドなぜなに目安箱・第一回~
「ありえない……正統派RPGとしてありえない…… 」
【黒木勇斗語録・シャドゥハーツ2 ウル】
>>『第一回・冒険者ギルドってなんなの?』<<
「ギルドなぜなに目安箱コーナー~!」
「どんどんぱふぱふ~♪」
「というわけで、どういうことなのかこういうことなのか。
いきなり始まりました冒険者ギルド迷宮支部の学習コーナー。
パーソナリティーは迷宮支部の受付嬢、クラテルがお送りするっす」
「あっ、アシスタントの、迷……じゃなくて、裏酒場の看板娘ミルです」
「あ、あのー、なんで冒険者の僕らまでこの謎コーナーに?」
「勉強よ勉強。リップル姉から語学のためにゲスト参加してこいって。
こういう場でも設けないと分からないことってたくさんあるのよ。
そんなわけでゲストで参りました若手代表のサラとマウスです」
「冒険に関するナゾに答えるため冒険者ギルドに設置された目安箱。
投函されたご質問にはどんどん自分たちが答えていくっすよ~。
それでは栄えある第一回の投書をミルちゃんおねがいするっす」
「えっと、目安箱に投函された一般冒険者さんの最初のご質問は……
『冒険者という謎の秘密結社の正体って?』……という内容です」
「うわぁ、冒険者ギルドを秘密結社ときた」
「いきなり本質を突くブッこんだのがきたわね」
「でも実際、冒険者ギルドってかなりそれに近いかんじなんすよね。
影響力規模は大陸全土に及んでいるのに実態は妙に謎が多い団体。
なのにヘタな国よりも歴史あり。これは秘密結社扱いもやむなしっす」
「確認されているだけでも千年前から冒険者ギルドは存在しますから」
「そんなに!?」
「グローリア建国以前からある組織とは知ってたけど歴史深いわ」
「冒険者という概念が誕生したのは古代帝国崩壊後の群雄割拠の時代。
戦場を渡り歩く傭兵や知識奴隷あがりの魔法使いたちを筆頭に、
暴力や知力を売り物にする専門の技術者たちが当時の権力者たちに
自分を雇わないかと売り込みをはじめたのが起点とされているっす」
「この頃はまだクラスという概念も希薄だった時代だったそうですね。
千年前にデューダーが転職の秘法を発見するまでは職は自称でした。
武器使いは総じて戦士で魔法の種を問わず魔法使いは魔法使いで統一。
いまでは探検家とか考古学者とか細分化されている職も盗賊で一括。
彼らは権力者のもとで魔物の退治や帝国の遺跡の発掘に尽力したり、
異種族間の勢力争いにも加担して次第に存在を強めていったそうです」
「そこは訓練所でも習ったな。オーニンの乱の後は共同体の編成を進めて
冒険者間で情報や活動を共有する組合や連合を築き始めたとか何とか」
「それが現代で言うところの冒険者ギルドの誕生につながるわけね」
「そうっす。といっても当時はまだ漠然と情報を交換し合うサークルで、
本格的に冒険者の共同体が組織化されるのはもうちょっと先のこと。
組織として初の冒険者ギルドが大陸で設立されたのが今から千年前、
これが奇しくも自分らが担当してるダンジョンに関わるものなんすよ」
「それって俗に第一次ダンジョンブームって文献に記されてる……」
「そっ、マウスの大好きな迷宮王のダンジョンが切っ掛けらしいわ」
「おじ……じゃなくて、魔界の大公『迷宮王ミノス』の大陸南方での活動、
それはこれまであった魔王の侵略活動とは完全に異なる知恵比べでした。
自身の拠点に数多くの迷宮を設置し、あえて腕に自身のあるものは挑戦し
見事攻略してみせよと誘い込み、魔王と人間が盤上遊戯の如く競い合う。
この一件は産まれて間もない冒険者の可能性を一気に引き上げるもので、
迷宮王のダンジョンで沢山の新規クラスやスキルが誕生したと聞きます」
「記録では当時は四種類しかなかった冒険者クラスが五倍になってたっす。
迷宮王が勇者テーセウスに敗れて魔界に戻るまでの半世紀に渡る戦いは
冒険者ギルドに現在の基本システムを確立させるに十分な期間でした。
ギルドに併設された酒場兼業宿屋、クエストの受注や冒険者カードの存在、
そういった現代でも使われている伝統はすでに千年前に完成されたんすね」
「冒険者さんたちが迷宮王のダンジョンから持ち帰ってきた戦利品の多くも
冒険者ギルドに多大な影響を及ぼしたんですよ。なにしろ魔界は帝国にも
ひけをとらない魔法世界。ダンジョンで発掘されたマジックアイテムは、
ギルドに持ち帰られて研究され、のちの通信技術の進化に役立ちました。
実は冒険者カードのシステムも魔界の魔道具から生まれたものなんです」
「すごいね迷宮王のダンジョン。こういう大陸文化の急速な発展の原因って、
異邦人が異世界から持ち込んだ知識や技術のおかげってだけじゃないんだ」
「えへへ、それほどでも」
「なんでアシスタントのあなたが嬉しがるの?」
「え? あっ、いえ、なんでもありません!」
「……あやしい……」
「冒険者ギルドの要は迷宮王ミノスのダンジョンからはじまったといっても
過言じゃないっすね。転職の秘法を探し出したデューダーと共に冒険者の
基本を作り出した三賢の一人、初代ギルドマスターのアドベンの功績っす。
彼が冒険者の拠点を迷宮王のダンジョンの近くに置いて、当時の大手国家の
六央からやってくる冒険者たちを纏め上げ、仲介で働きかけてきたおかげで
各国も効率よく潤い、ギルドは中立組織としての立場を確立できたんす」
「そうそう。魔王対策で百年の冷戦時代が続いた六央期でも有名な逸話よね。
定期的にやってくる魔王の対処で人間同士の戦争なんてやってられなくて、
それでも敵国の牽制や国威発揚でなんらかの国家ステータスが欲しくて、
それで産まれたのが自国おかかえの冒険者を活躍させての功績自慢大会。
どれだけ多くの優秀な冒険者を手元に置けるかで六国が競い合ってたとか」
「そう考えると冒険者を効率よく鍛え上げてくれて、高難度のダンジョンを
クリアすれば報酬ももらえる迷宮王のダンジョンってすごかったんだな。
そこで自国が派遣した勇者が魔王を倒そうものなら国家最大の自慢だし。
そんな王命でやってくる連中を掌握してた冒険者ギルドってやっぱこわい」
「だから冒険者ギルドって、ときに王権をも凌駕する組織っていわれるんす。
初代ギルドマスターの遺言で永遠の中立を守る独立機関でありつづけては
いるっすけど、その気になれば国を作れるポテンシャルがあるんすよね~。
その懸念は六百年前に聖王ベリアが権威のまとめ上げで解消したっすけど」
「国家・冒険者ギルド・聖女で大陸を管理する三権分立のはじまりね」
「現在の冒険者ギルドは独立機関ではあるけど国営企業の一面も強いっす。
そのおかげでかつてできなかった福祉サービスや行政サービスを冒険者に
提供することが可能になり、各支部の情報の共有も一段と迅速に便利に。
漠然とした冒険者共同体だった頃はそういうの大変だったらしいっすから」
「国の後ろ盾があるなしでえらい違うものね。便利になるのはいいことだわ。
ところでギルドが提供する福祉サービスや行政サービスってなんなの?」
「国家と提携して行う冒険者の保険や年金っすね。そんところは次回にでも」
「えっと、ちっこいのさん。投書への答えはどうしましょう?」
「そうっすね。冒険者ギルドってのはつまるところ冒険者の共同体っすから、
冒険者同士で助け合う寄り合い所から生まれたサービス機関ってとこっす」
「そのまんますぎる」
「規模はともかく実際そうなんだからしょうがないわ」
「昔は腕自慢の専門技術層や荒くれの集まりだった傭兵集団に冒険者という
称号を与えて職業として確立させたのが初代ギルドマスターのアドベン。
彼は迷宮王のダンジョンに拠点を置いて冒険者たちを纏め上げて管理して、
クエスト斡旋事業者として活躍。簡単に言えば冒険者ギルドという存在は
口入れ屋と基本は同じで冒険専門の人材派遣センターみたいなものっすね。
現在はいろいろな事業にも手を出して幅広くやってるけど基本はそれっす。
全国の諸君、もし冒険者になりたいなら、まず冒険者ギルドに登録を!
魔物やヒャッハーにお困りのかたはすぐに冒険者ギルドにご連絡を!」
「隠しもしないダイレクトマーケティングだ……」
「受付嬢だけあって商魂たくましいわね」
「それでは、次の投書は冒険者カードについてのご質問ですが……」
「尺も足りなくなってきたので、サービスの話も含めて続きは次回」