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たわだん!~タワーディフェンスとダンジョントラベルの懲りない日常~  作者: 大竹雅樹
第4階層 ヒロインディフェンスはつらいよ
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What a glutton you are! ~魔のモノは聖戦を見ていた6~

 "Reading made Don Quixote a gentleman.

  Believing what he read made him mad."


 ドン・キホーテは読書家になることで紳士となった。

 そして読んだ本の内容を信じたがために狂人となってしまった。


  【アイルランドの劇作家 バーナード・ジョー】


 ガッサーは走馬灯の中で思い出していた。

 自分が地竜神の試練を乗り越え、晴れて神竜騎士に昇格した日のことを。

 クラス変更のさい、彼は神竜騎士として四つの道の選択を迫られた。


 ひとつめは勇者として最も一般的なバランス型ルート。

 ふたつめは守護者や盾役の特性を持つ防御特化型ルート。

 みっつめは荒ぶる竜神の一面を宿す攻撃特化型ルート。


 そして──

 よっつめが殺したドラゴンの力を我が物にできる竜殺しの特質ルートだ。


 コテコテの勇者である光竜騎士ディーンはひとつめを選んだという。

 暗黒面に心を奪われた闇竜騎士アハトスはみっつめに身を落とした。


 少しばかり悩みはしたが、地脈を使った回復系魔法や防御系魔法、防御力増加やダメージ軽減のスキルに秀でている地属性の特性を十分に吟味した末、自分は地竜騎士の特色を最大限に生かせるふたつめを選択した。


 少なくとも異質を極めるよっつめの選択はなかった。

 なぜなら竜殺しルートは神竜に仕える身としては異端中の異端のルート。

 他の三つの道に比べて初期値があまりにも低く、成長性は四つの道の中で一番といわれているが、場合によっては最弱のままで終わる外道の選択だからだ。


 殺したドラゴン族の能力を奪う特質系神竜騎士。

 火竜を喰らえば火属性の力を、水竜を喰らえば水属性の力を。

 屠ったドラゴンの種類や属性に応じた力を我が身に取り込む竜殺しの特質能力は、ステータス強化やスキル獲得など様々な強化に反映され、下位種・中位種・上位種のランクごとに設定された強化限界こそあるが、ルール上、彼らはドラゴンを喰えば喰うほど強くなる。


 もとは神話の時代、慢心をこじらせて妹の闇竜神を除く他の七大竜に喧嘩を売った邪竜神の派閥に対抗するために、神々が対竜特化型として勇者に用意したクラス特性なのだが、このルートを選んだキワモノの神竜騎士は過去に一人だけ。


 およそ千数百年前に現れた竜族の魔王『魔竜王ファフニール』を退治した屠竜の英雄ジークフリートのみ。


 光竜神に認められた人類史上初のドラゴンスレイヤーとして名高く、ドラゴンを殺し、ドラゴンの血を浴び、ドラゴンの力を得ることに成功した彼の偉業は人々に讃えられ後進を得るに十分なもののはずだったが、以降千数百年に渡って、彼の称号を受け継ぐ神竜騎士は一人も現れなかった。


 なぜならその偉大なる英雄を待っていたのは、およそ神竜騎士らしからぬ不名誉な非業の死であったからだ。


 純粋に力を追い求め、光竜神の警告も聴かずに力に溺れ続けたジークフリートは、暴力の快感に魅入られた英雄の御他聞に漏れず、喰らった魔竜たちの血肉の影響で次第に心を闇に落とし、最終的に神竜たちを殺戮せんと天に挑む【魔王】となったという。


 魔王化したあとの彼の経歴はほとんど歴史書に記されていないが、最終的にジークフリートだったモノは、闇竜神が選定した勇者ハーゲンの闇討ちによって弱点を射抜かれて滅ぼされたと言われている。

 

 そのため竜殺しのルートは破滅をもたらす危険な道とされ敬遠されてきた。

 対竜族特化型というタイプであるせいか、魔族側に竜属性の魔王がいないと話にならないというのも理由のひとつだろう。


 八年前の大戦でコレが選ばれたのは、たまたま聖竜騎士を呼んだ【天空の聖女】が邪竜族の親玉である邪竜王グラスタークに攫われ、ユートの冒険の固定ラスボスとなった経緯が大きい。


 邪竜軍を相手取り、悪竜百体斬りを果たしたとウワサされる聖竜騎士。

 もし本当に竜殺しルートの彼がドラゴンを百体も屠り喰らったとすれば──

 彼が獲得した竜族スキルおよび竜気の熟練度はとてつもない量になる。


 そしてもうひとつ。

 彼が邪竜神に最も近い存在である邪竜王の血を浴びたとするなら──

 この男は聖竜神の加護を受けた聖竜騎士でありながら、邪竜神の力の一部を備える邪竜騎士の特性も持ち合わせていることになる。


 光と闇があわさり最強でうんたらとか。

 火属性呪文と氷属性呪文を掛け合わせて極大消滅呪文がどーたらとか。

 相反する属性同士の融和が生み出す相乗効果は計り知れない。   


 聖竜騎士ユート──

 コイツは……この竜殺しは──

 神々が造ったクラス特性の設計ミスが生んだ──

 神竜騎士ジークフリートさえ超越する災厄の存在に成り得……


「おおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーッ!」


 ついに腐滅の剣圧が地竜の大顎を灰燼に還し、その衝撃波を地竜騎士に届かせた。

 土も木も岩もなにもかも木っ端微塵に粉砕する恐るべき腐食毒の剣圧であった。

 なみの冒険者なら一瞬にして瘴気に浸食されて塵芥になっていただろう。

 しかし……


「この衣笠巌きぬがさ・いわおを嘗めるなぁぁぁぁぁっ!」


 木属性以外に強い防御力を持つ地属性との相性によるものか。

 耐えている。彼が纏う地竜騎士の鎧が瘴気の腐食効果を封じている。

 崩れるのは髪の毛の末端だけ。腐り堕ちるのは肌の薄皮一枚のみ。

 地竜神の加護が生身の腐滅を最小限に食い止めてくれている。


 貴金属以外を腐らせる邪竜のブレスと同じ能力をもつこの必殺剣。

 逆を言ってしまえば、この技は貴金属に対して効果が薄いということ。

 地竜神の鎧は木属性以外のあらゆる属性防御を備え装着者を守護する。

 邪属性も例外ではなく、鎧が無事である限り効果は生身全体にも及ぶ。

 中身に腐滅の力が及ばぬなら、残るダメージ源は剣圧の衝撃波のみ。

 それだけなら耐え切れる。防御特化の盾役タンクならば耐え切れる。


 もてる防御力増加スキルを全開にして累積ダメージを最小限に抑える。

 四方八方に散らされる衝撃波。ひび割れる鎧。軋みを上げる生身。


「っっっっ……ぐはぁっ!」


 耐え切った! きわどいところだったが邪竜の剣を耐え切った!

 鎧は半壊したがガッサーへのダメージは致命傷に及んでいない。

 鉱物を司る地竜騎士を屠る決め手になるには、あと一歩足りなかったか。


「……あーんど♪」


 ガッサーが反撃の態勢に移行しようとしたそのとき──

 彼の懐めがけて土煙の中から飛び出してくる影がひとつ。

 足りなかった【あと一歩】が、間髪いれずにヤッテキタ。


「なッッッ!?」


 この男ッッッッッ!

 最初から衝撃波と直接攻撃の二段構えのつもりだったのか!?


聖竜迅竜斬せいりゅうじんりゅうざん!!!」


 邪属性の真一文字斬りに続いて放たれる聖属性の横一文字の一閃。

 それは聖属性と邪属性による十文字斬り!

 防御力自慢の地竜神の鎧といえども、一撃目で装甲の耐久値を削られていた状態からの追撃を喰らってはひとたまりもなかった。


「ぐはあああああっ!」

 

 聖竜剣のフルスイングをまともに受け、鎧の砕片を撒き散らしながら宙を舞い、やがて巨大な一本杉に叩き付けられる地竜騎士の姿は、まさしくスコアボードめがけてのホームランを喰らった野球ボールそのままだった。


「九回裏の逆転サヨナラ満塁ホームランは男のロマンってな」


 流し斬りの衝撃が装甲を突き抜けて内蔵を貫通した確かな手ごたえ。

 幹からズルズルと剥がれるように崩れ落ちるガッサー。

 再び立ち上がる気配はなかった。完全に戦意を挫かれている。

 勝負ありだ。


「こりゃ明日は筋肉痛だな」


 目の前で起こった事態を把握しきれずポカーンとする少女を尻目に、聖竜騎士は悪戯っぽい笑みを浮かべながらひとりごちた。


 彼には気取ったセリフよりも、こういう軽口のほうが良く似合う。 

ついにタワーディフェンスも50話目に到達です。

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